風倒木の状況は様々で、一本たりとも同じ条件で作業は出来ないし、一本でも幾つかの危険要素を孕んでいることも多いのだ。今回の一本は谷を渡って三本の木に挟まれていた。横への反発力も位置で異なるし、その上、下に落ちきっていないから、切り離せば足元も危ない。
立ち木を盾にして切り詰め事無きを得たが、根返しした部分も急斜面だっただけに、木元で切断したら、更に動いてでんぐり返し寸前になった。その心配があったから木元を長めにしたお陰で支えになってくれた。安全策で木元を更に長くすると、根株が戻らなくなる。今回の根株は正中線を越えているから戻ることはもう無い。転落するだけだ。
挙動は常に予測しながら作業はするものの、チェーンソーを挟まれ手鋸や楔を使用せざるを得ない局面もあって、地上に落ちていない木の処理は神経が磨り減る。危険を排除するためには危険の渦中に入らないと処理不能だし、綺麗ごとでは済まない。原発の処理に当たっている作業者の葛藤が忍ばれるのである。