学年だより「夢のあきらめ方1」
公開中の映画「ボクたちの交換日記」は、お笑いコンビ「房総スイマーズ」が主人公の作品だ。
甲本(小出恵介)と田中(伊藤淳史)は、高3の時にコンビを組み、文化祭のステージで喝采を受けたのをきっかけにプロの芸人を志した。
事務所に属して活動しはじめた頃は多少なりとも注目されたが、その後は鳴かず飛ばずのまま10年以上が経っていた。
バイトなどで生計を立てながら、いつか売れてやるという夢を追いかける二人。
とはいえ、長くコンビを続けているせいか、お互いに面と向かって言いたいことを言いあう関係ではなくなっている。
それを打開するために、お互いの今の気持ちを伝えあおうと甲本が考えたのが、交換日記だった。
交換日記を書き「なんとかしよう」とは言うものの、恋人(長澤まさみ)のマンションに入り浸り、知り合いから借金を重ね、それでいて合コンに足繁く通ってしまうのが甲本だ。
TSUTAYAでバイトを続け、倹約した毎日を送りながら、ネタを書き続けるのは田中の方だった。
甲本は、よく言えば天真爛漫。高校時代は人気者で、恋人もいて、スナックのマスターにもかわいがられる。憎めないタイプだろう。
ただし、そういう人柄は、芸人として成功する必要条件ではないし、もちろん十分条件でもない。
監督であるウッチャンこと内村光良氏は、お笑いの世界を知り尽くし、幾多の芸人さんたちとふれあっている。
きまじめな生活をし、毎日ノートにネタを書き続ける田中の方がむしろ成功するタイプと描くのも、内村氏ゆえに描けるリアリティなのかと思えた。
みんなも知っているとおり、お笑い芸人さんを目指す若者は山ほどいる。
そしてメジャーになって活躍できるのは、そのうちのほんのわずかな人たちだ。
比率でいえば、目指した人のうち90数%は、夢をあきらめることを余儀なくされるのが現実の姿だろう。
年度当初から前向きでないような話で申し訳ないが、「夢をどう諦めるか」は人生設計を左右する。
「諦める」を前提にしなくてもいいかもしれない。「夢と自分との折り合いの付け方」と言った方がいいかもしれないが、それにはいくつかのパターンが考えられる。
a 最初から夢を追わない
b ちょっとやってみてから諦める
c 期限を決めてやってみる
d とにかくやるだけやってみる
e 何があっても諦めずに追い求め続ける