水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

ペタルダンス

2013年04月23日 | 演奏会・映画など

 「あまちゃんオーシャンズ5」の押し出しのよさもすごいが、こっちの「若手オーシャンズ4」の芸達者ぶりには何度も息をのまされた(「オーシャン」を海の意味にすると、どちらもぴったりだ)。
 宮崎あおい(ジンコ)、安藤サクラ(素子)、忽那汐里(原木)、吹石一恵(ミキ)、というラインナップ。すごくね?
 約90分というそんなに長尺ではない作品で、台本は、けっこうすかすかなんじゃないかと思う。
 台詞量は少ない。おまかせのアドリブぽい台詞かなと思えるシーンもあった。
 ミキが、故郷の海に身を投げたという噂を耳にしたジンコと素子は、何があったのか、何か自分達にできるのかとの思いで、数年ぶりにミキにあいにいくことにした。
 電車のホームで走り幅跳びのスタートのポーズをとっていた原木を、飛び込むと勘違いしたジンコが止めにはいり、そのいきおいで自分が怪我をし、その成り行きで原木が、ジンコ&素子を乗せた車を運転することになる。
 何がどうしてどうなった、と説明されるエピソードって、ひょっとしたらこれくらいだったかな。
 素子が離婚したいきさつも、ジンコと彼氏との間に何があったのかも、原木が働いていた洋品店がなぜつぶれたかも、そしてミキがなぜ海にとびこんだのかも、何も説明されない。
 ただ、そういう状況におかれた若いおねえちゃんたちの姿が、まことにリアルに感じられる。
 ミキと再会を果たしたあとのジンコと素子の車のなかのやりとりなんか、すごすぎて泣きそうだったから。
 ミキと、ジンコ&素子とがどの程度心が離れてて、会って、みんなで海を見に行って、少しずつ近づいていくことなんかが、ちょっとしたしぐさで示される。
 それを見ている原木は、言わば三人の部外者だが、原木自身にも急に自分の前から去って行った友のことがずっとひっかかっているので、観客視点とはまた別の視点も加わる。
 言葉に表された内容は少ないが、四人の内面は巧妙にサブテキストとしてたちあがってきて、一見さらっとした映像なのに、実に中身が濃く感じられた。
 なに、この吸い物、味なくね? って思って飲み込んだあとに、ものすごいだしの香りが漂ってくるみたいな。
 まあ、そういう表現を可能にする四人だったということだろう。
 今年の日本映画の一つの大きな収穫と言っていいのではないだろうか(やべ、評論家みたくなった)。

コメント
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