部活もなく、用事は夕方入っているだけの日曜の朝、のんびりとニュース解説風の番組を見てたら、エジプトでデモが起きるシステムが理解できた。
「とうひマネーって何?」うしろから娘が問う。とうひじゃなくて投機ね。
「投機」という単語を知らなくても、某有名私大には入れるのだなと思いながら、「投機」っていうのは、機会をつかんでお金を投じるって書く言葉で … 、と説明したが少し通じた。自分もよくわかっていることばではないが、漢字のおかげでそれっぽいことが言える。
娘を駅まで送ったいきおいで登校し、採点デーにすることにした。あさってから充実した部活ライフを送るためには日曜を大切に使わねば。
生徒さんが勉強している間も、けっして先生は遊んでいるわけではないことをアピールしておく。
現代文のテストで、市販の漢字練習帳から範囲を決めて毎回10点分出している。
ここで国語の力がけっこう現れる。他の科目の勉強に時間をとられて今回は漢字パスした的な子もいるが、それでも勉強の基本的なやり方を知っていると、それほど苦労する量ではないはずだ。
センター試験では本当の国語の力はわからないという学者先生もいらっしゃるが、丸付けしていると、逆にセンターどころか漢字10点分でだいたいの国語力が見えてくるんじゃないかと思う。
たとえば「カイコ趣味の柱時計」の「カイコ」を「回顧」でなく「懐古」と書けるのは、漢字というより語彙の問題だ。勉強するときに「古(いにしえ)を懐かしむ」と返り点で返して意味を覚えると、なお定着する。
「大学のコウギ」を「講議」と書く間違いはよく見かけるが、これも「義(意味)を講じる」と返して理解できるといい。
「故人のイシ」も「意志」ではなく「遺志」と書くには、語彙として知ってないといけないし、「遺失物」「遺産」でも使う「遺す(のこ)す」を知っているといい。
形やら画数ではなく、語彙的に漢字を覚えることが大事だが、これこそ国語力だ。
言葉は存在しながら、その定義を誰もできていない「国語力」なるものの最重要要素の一つであることは間違いない。
ちなみに東大の二次試験に出題される漢字は、画数や字形ではそんなに難しくないものの、文脈をつかめてないと、間違えやすいものがさりげなく出題されている。
理系の人は二字の国語80点満点のうち5点が漢字。
漢字以外の現代文35点のうち半分とれる受験生は理系にはそんなにいない。漢字をおろそかにさせてはいけないな。ちょっと気合い入れよう。
せっかくなので、ちょっとマニアックな資料だが、東大で出題された漢字問題二十数年分を載せておきます。
80年 a自己犠牲 b至難 c絶句
81年 a四散 b匹敵 c依然
82年 a苦肉 b効用 c捨象
83年 a奨励 b徒党 c事大
84年 a肥大 b発露 c拡散 d駆使
85年 a輪郭 b厳密 c試行錯誤
86年 a操作 b微細 c超越
87年 a熟達 b現前 c傑作 d滑稽
88年 a凝固 b顕現 c均衡 d謙虚
89年 a頑丈 b散策 c警鐘
90年 a鋭敏 b哀切 c抑圧 d絶妙
91年 a我慢 b凡庸 c代物 d妥協
92年 a意想外 b強要 c寸断 d粗放
93年 a体する b対極 c出自 d決断
94年 a講じる b浸透 c帰結 d劣化
95年 a輪郭 b判然 c交渉 d契機
96年 a未熟 b遺物 c逸脱 d曇る
97年 a勘案 b属性 c探索 d忘却 e念頭
98年 a厳密 b拘束 c拡張 d悲惨 e鍛える
99年 a染める b襲う c埋没 d自明
00年 a微妙 b局地 c脅かす d維持 e犠牲
01年 a激励 b排除 c普遍 d媒体 e崩壊
02年 a空疎 b錯覚 c模倣 d抱擁
03年 a未練 b停泊 c託宣 d墜落 e被災
04年 a侵害 b匿名 c抗争 d源泉 e促進
05年 a卓越 b飛躍 c顕著 d帽子 e魂
06年 a沈殿 b厳然 c要請 d従容 e克服
07年 a通念 b統御 c流布 d融和 e叫喝
08年 a散逸 b超越 c機会 d信仰 e矛盾
09年 a吟味 b器量 c真偽 d回避 e成就
10年 a防壁 b維持 c攻撃 d皮膚 e保護
11年 a跳 b断片 c抑圧 d阻害
12年 a枯渇 b効率 c秩序 d浸透 e交換
13年 a首尾 b逐語 c摩擦 d促す e示唆
ちなみに「維持」「浸透」「厳密」「犠牲」「超越」といった語が、過去に複数回出題されてるが、これって埼玉県公立高校入試問題にも出てもおかしくない言葉ではないだろうか。