「めんどうくさいユイちゃん、おかえり!」
「ただいま!」
ああ … 。夕べは泣いた。
北三陸を訪れたGMTのメンバー。
純喫茶リアスを訪れ、あの自己紹介をし、あきちゃんも巻き込んでカラオケで「地元に帰ろう」を歌う。
町の人たちみんな大盛り上がりの中で、一人だけ醒めた視線で見つめるユイちゃん。
彼女たちが帰ったあと、ユイちゃんが爆発寸前のたたずまいでお皿をごしごし洗う。
「あんなんで、テレビにでれるんだ、たいしてかわいくないし、歌もたいしたことないし」
アイドルになる夢を決してあきらめていたわけではなかったユイの気持ちが、あきや、ストーブさんにたきつけられて決壊する
「やるよ!」「あたしもやる、潮騒のメモリーズ復活!」
腹黒いユイちゃんが、めんどくさいユイちゃんがもどってきた、と差し出したあきの手を、ユイが不敵な笑顔をつくってにぎりかえす。その二人を見守る大人たちの笑顔。
数々の名場面をいくつもあげることができるけど、昨日のは自分的に白眉だった。
「あたしだって、やれる。あたしは、あんな人たちより、もっとやれるにちがいない」
これは「腹黒い」のではなく、健全な野心だ。
健全な野心に満ちあふれた状態とは、人として強く生きていこうとしている状態だ。
薄幸の美少女ユイちゃん(この言い方何回目だろ。ま、美少女であるという要素の重要性は厳然としてあるんだけどね)、何度となく東京行きを断念し、はては大震災で人生のすべてを諦めていたかに見えたユイちゃんが、生きていこうと一歩足を踏み出す。これほど心うたれることはない。
やはり人は、前を向いて歩いている人のことが好きなんじゃないだろうか。