今年の文化祭にお招きした芸人さんは「ザブングル」「ひげ男爵」「かもめんたる」の3組。
個人的に注目していた「かもめんたる」さんのネタを見たが、期待通り質の高いコントだった。
あのだだっ広い体育館の、常時人が出入りし続ける空間で、長めのコントをきっちりやりきるだけでも実力者だということがわかる。
昔、文化祭の芸人さん係を担当していた。
自分がえらいわけではないが、爆笑問題さんやタカアンドトシさんをブレークする前によべたのは今でもちょっとほこらしい。
仕事上、控え室やら舞台袖での彼らのたたずまいや、先輩後輩のふるまい方など、ちょっと身近に垣間見ることができたが、まあ、大変そうでした。ネタづくりももちろん大変なのだろうが、芸人としてふるまうこと、その世界で生きていくこと自体、よほどの覚悟と忍耐強さがないとやっていけないだろうと思えた。
というか、そんな大変さなど何でもないと思えるくらい「お笑い」が好きな人だけが続けていけるのだろう。
「好き」、ではないかな、そうせずにはいられない感覚。
お笑いにかぎらなくても、その仕事をしなければいられない、その仕事をやってない自分は自分ではないという感覚。
伊集院静氏が「週刊文春」のQAコーナーで、「1億貯めて仕事やめたい~」的な読者に、「そんなんでやめれる程度の仕事なら、すぐやめてしまえ」と回答していたけど、その通りだと思う。
かりに芸人として生き残れたとしても、残り方は千差万別だ。
テレビ番組で活躍し日本中どこに行ってもその存在が知られるレベルから、お笑いの仕事だけでは食べていけないレベルまで、ものすごいピラミッド構造になっている。
そうしなければ自分じゃなくなるほどの仕事に出会えても、それで一流になれるかというと、必ずしもそういうわけではない。これも多くの仕事に言えることだろうが。
「自分はあそこまではなれない」という反ユイちゃん的思考をせねばならないこともあるだろう。
~ 漫才で賞を獲りたい、自分達が中心になれるネタ見せ番組をやりたい、そんな夢や希望はなくなった。無理だと分かっている。 … 俺達は南部芸能や他の事務所のライブに出て、たまにクイズ番組やトーク番組に出て、グルメ番組や旅番組のロケに出る。そうしていけば生活はできる。問題を起こさなければ、バイトしないとといけないほどに落ちることもない。子供の頃に憧れた芸人と仕事できることはあっても、彼らのようにはなれない。 (畑野智美『南部芸能事務所』講談社) ~
自分はあのステージには立てないという事実をつくつけられる瞬間というのは、きっと芸人さんなら折々にあるだろう。お芝居や、音楽の方も同じだろうか。
実は自分たちのような仕事でも、そういうのはあるんだけどね。
ああ、おれはこの分野であの先生には絶対にかなわないなとか。
この一点ならなんとかならないか的な健全な野心はいまだに失ってはいないが、実際にはその野心は形にならないまま終わっていくもので、それでも毎月決まったお給料がいただけるというのは、われわれの商売のなんと楽なことだろう。