テレビでの可愛らしい豆まきは何度も見せられた。鬼さんに追われた子はしゃくりあげるほどの大泣き。それでも豆だけは手放さず、怖いながらも鬼を追い返そうと努力する。すると間違いなく鬼さんが逃げ出す構図である。ただ近ごろは、鬼=やっかい者 という単純な図式は必ずしも正解ではないようだ。
勧善懲悪世の習い、は少し古い考えなのだろうか。鬼の部分も招じ入れて福とのせめぎあいがある中で、幾分か福の方に分を持たせる。そういった完璧主義ではない、少しのあいまいさを残しながら、結局は福に助けて頂くという緩さが求められる、そんな世の中になっているのかも。参考にしたいと思う。
豆まきをした豆を年の数ほど食べると健康でいられるというなら、嫌いではない豆類であるしっかり食べたい。だがもう一つ食べるべきものが恵方巻である。商売人の口車に載せられた感のある巻きずしの丸かじりだが、巻きずし好きにとっては有難い日でもある。そんなわけでヤマノカミが朝から支度をして、孫たちの好みに合わせて「田舎巻き」と「サラダ巻き」更には牛肉とレタスだけをたっぷり巻いた孫三男坊用まで。
さて田舎巻きを丸かじりしようっと思ったところへ、隣りの次男さんが「いつもお世話になります、これを!」といって、駅前の老舗から太巻きずしのプレゼント。「いつもおふくろが世話になっとるから」という。確かにお隣はご主人が亡くなられて奥さんの一人住まい。何かにつけて声はかけている。そんな様子を、小さな鉄工所を経営している次男さんはちゃんと心得ているのだろうか。
我が家手製の丸かじりも悪くはないが、思いがけない心のこもった太巻きの味も格別。節分に、ご近所さんと思って頂いているいい気分、いい味を味合わせてもらった。