(春水、雪解け水の魚野川)
鰍酒(その1)
そうだ、群馬県の水上保線区に勤めていたころだから昭和40年代の後半、50年に近い頃のことだ。
冬期間はラッセル乗務のために浦佐ラッセル分駐班と言う勤務個所に転勤し、それを四年間繰り返した。
普段は5~6人の浦佐検査班も、近くに私たちのラッセル分駐班と、
作業員の冬季分駐班が加わり賑やかな職場になったものだった。
そして、厳しい冬も終わりを迎えるころ、浦佐の三月三日裸押し合いが近づくころになると、
春の到来を感じ気持ちも軽くなってきたものだ。
現場の総親方とも言うべき立場の検査長がやおらみんなが待ちかねたイベントを提案するのもこの頃だった。
「おい、半日手間をやるから行って来い」なんて、除雪組合長に言う。
命を受けて除雪臨時雇用員が、この日に備えあらかじめ準備していた網と鰍落とし板と言う道具を取り出して、
魚野川へと向かう。
鰍落とし板は幅が1メートルほどで高さが50センチほどで縦に二本の杉の棒がついている。
(続く)
※鰍(かじか)は数センチの大きさで、頭の大きな愛嬌顔の淡水魚です。