(娘を背負って川に行きヤマメを狙う若き父スベルべです)
鰍酒(その3終わり)
あの頃は、今のように乱獲と言うことも無く、コップの縁から尻尾がはみ出るような大物もいたものだった。
ほんの少しの間待つと、コップからは香ばしいような何とも言えない香りが立ち上る。
口を火傷しないように慎重に口元に運び啜ると口中に甘さに満ちた特有の味、そう魚野川の香りが満ちる。
皆が待ち焦がれた至福の時だったなー。
時は過ぎ、人並みに家庭を持ち水上から長岡に転勤したころ、幼い子供の子守を両親に頼み、
妻と二人で厳寒の魚野川にも行った。
浦佐でたくさん獲ったような訳には行かなかったけれど、それでも家族で十分に鰍酒は楽しめた。
ある年の正月妻の実家に年始に出かけ、義母に鰍がいるという話を聞いて、
義母の実家の近くの羽根川に出かけた。
魚野川に比べたらずいぶん小さな川で川に入ることも怖くは無かった。
しかし、そこで獲れた鰍は身の丈はともかくとしてずいぶんスマートであり、
味も脂が乗っていない感じでとても魚野川の鰍の味とは比ぶべくもない味だった。
(終わり)