夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「内緒の恋」

2008-05-30 02:31:13 | 自作の小説

父親が死んで葬儀が終わり妻が倒れた

過労からとかで全体に弱っているとかで入院になった

こうなると男はどうしようもないもので バタバタしていると手際よく必要な荷物をまとめ 無いものは買って病室へ運んでくれたのは 葬儀の手伝いに来てくれてた親戚の女性だった

「入院退院繰り返す家族がいたから こういうのは慣れてるの」

高齢の父親が参列できないから代理で出席してくれたのだ

はるか昔 高校を卒業した春休みに一度だけ 会ったことがある

あちらは伯母の昭子さんの家へ両親と来ていて 俺は昭子さんの妹になる静子さんに連れられて 彼女達が来ていると知らずに・・・会った

静子さんは俺の伯父の奥さん 血の繋がらない伯母さんになる

クリーム地に花柄のワンピースがよく似合っていた

その日はみんな一緒にあちこち観光して回って 路面電車 渡し舟

食事

ひどく楽しい一日だった 夢のような

それ以来だ

一度病院から戻ってくると「倫子さんが気にしていたから」と台所や冷蔵庫の中の物を整理してくれている

手際が良い

サランラップや耐熱容器にあれこれ詰めていく

俺が跡継ぎでなかったら もっと近くに住んでいたら

諦めた様々なことが 浮かぶ

倫子はいい妻だ そうだ

しかし今台所に立って後姿を見せているのは・・・・・・

「さあ こっち来て 説明しておくわ」

どれに何が入っているのか 話している

「聞いてます?」

「うん・・・好きだったんだ」

彼女は少しだけ眉を吊り上げ笑う「学校出てすぐ結婚したくせに」

「どうせ相手にはしてもらえないからさ」

「じゃ何故今頃?」

「この機会を逃したら 一生後悔する気がした 思い出がほしい」

「馬鹿言ってるわ 私はこの後まだ倫子さんの病室へ寄ってから帰るんですからね 

男と女ってね やることやれば それまでよ」

話しながらも手は休めない

「だからね」と彼女は言葉を切る そして「一生 忘れず思ってなさい 」

意地悪そうに微笑んだ

「・・・」そうなんだ 妻のために帰宅を延ばしてくれてるだけだ

何てことを言っちまったんだか 俺はー

「顔色悪いし 大丈夫か? それでも言っておきたかった ずっと好きだった」

「気にしないで」

そうして笑って手を振って 車を呼んで 倫子の病室へ 

それから彼女は遠い自分の家へ帰るために列車に乗った

それだけの 過ぎてしまえば夢のような短い・・・・・

好きだった その気持ちは嘘じゃない 俺には継ぐ家があり 

彼女には彼女の・・・・・・

ー一生 忘れず 思ってなさいー

その言葉が遺言のように思える

次に彼女の消息を聞いたのは 倒れてそのまま・・・・入院しまもなく死んだと

死んでしまったと

あちこち悪いのに随分我慢していたらしい

ー一生 忘れず 思ってなさいー

人の道に外れようと せめてあの時 どんなにひどい男と思われようと せめて抱きしめておきたかったと 悔やまれてならない

妻には決して言えない 秘密の恋だ

俺は 人生でたった二度しか会わなかった 会えなかった彼女が好きだった

もし人生をやり直せるなら 妻には悪いが

俺は


若林美樹作「純情のススメ」2 講談社

2008-05-30 01:00:56 | 本と雑誌

若林美樹作「純情のススメ」2 講談社
若林美樹作「純情のススメ」2 講談社
29歳 雑誌編集者 バージンですけど それが何か?

異動で移ってきた男は 水樹りんこの誕生日に 彼女の友人との会話をたまたま聞いて 彼女がバージンだと知っている

その男 不破は りんこの隣りの部屋に越してきた

ある時 片思いを自覚しちまったりんこだが
不破はバージンは重い・・・と かつて言った

でも遂に りんこさん「好きよ」って言っちまいました

さて急展開の予感?!

気になる続きは8月発売予定です

若林先生の描く話は本当に好きです

昨日から他の作品も ずっと読み返してました