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装丁 多田和博 装画 黒川雅子
写真家と思うほど 皺の一つ一つ 頭髪の一本一本 眉毛 睫毛 肌の質感 表情 余りに写実的で まるで生きている そこに存在しているように迫力持って迫ってくる表紙の絵は 著者の奥様にして日本画家の黒川雅子さんの作品です
後妻業 この聞き慣れない言葉は 財産家の老人の妻として入り込み遺産を掠め取る稼業のこと
ターゲットの老人の死期を人為的に早め その一生を終わらせたりもします
私が独身の頃に 「どこかに金持ちのくたばりそうなじじいがいぃへんかな」なんて言う(これは冗談だったと思いたいですが)熟年の後家さんがおられました
ちょっとそんなことを思い出しました
小夜子という若作りのーしかしお婆ちゃんといっておかしくない年齢の女性が内縁の夫を殺そうとするところから物語は始まります
病院へ運ばれた相手の老人は中々死んでくれず 小夜子は点滴を外してみたり あれこれー早く死ねじじぃとばかりに そうしてある方法でとうとう殺すことに成功します
小夜子は結婚相談所の経営者で柏木が紹介する有望な(お金持ちのご老人)をたらしこんでは あの世へ行かせて遺産奪いを繰り返してきました
今回殺した老人の妹娘は同級生の弁護士の守屋に相談します
守屋は 興信所へ小夜子の調査を依頼します 興信所の調査員で元刑事の本多は 小夜子と柏木の結び付きに金の匂いを嗅ぎ付け 調査費より大金狙いで 刑事時代の相棒の橋口の力も借りて 小夜子と柏木の過去を調べます
出所してからは姉の小夜子の家に居座る黒澤を責めあげ 柏木と小夜子らの犯罪の数々を知ります
小夜子と関わり死んだ多くの男達
小夜子が福原(女性が身を売る場所 )にいたことがあることも突き止めます 男と寝ることを何とも思わない女
たとえババアになっても人を殺して奪った金でホストクラブに通ったり 高齢ながら まだ肉体関係持って男をたぶらかす女
柏木は懇意の司法書士を使い公正証書を作らせて死んだ老人の遺産を盗んできた
しかし悪運も尽きてきたか
小夜子へ新しい獲物として紹介した男は堅気ではなく 女性をセックスで落として金を巻き上げる詐欺師で トラブルとなる
金にえげつない小夜子は 弟の黒澤に殺された
小夜子の死体を廃棄しようとした柏木は 警察の不審尋問に遭い 逮捕される
小夜子は裏表激しい性悪女 昔の場末の水商売の女性には こういうタイプは現実にいた
転がり込んだ男が留守にした間に家財道具を売り払い姿を消すような
柏木も彼にたかろうとする水商売の女性も実にリアル
登場人物が生きた人間として感じられます
ちょっとこすっからい小悪党を描かせたら 著者の独壇場かもしれません