「善人長屋」シリーズ第三作
「泥つき大根」
千七長屋の差配で表の商売は質屋 裏の稼業は故買品扱いの千鳥屋の儀兵衛とお俊夫婦には今も家に居るお縫の上に姉と兄がいる
わけあって姉娘とは疎遠になっているが お縫の兄の倫之助は養子に行って主人におさまっており時々顔を見せる
家付き娘の嫁もできた人だ
嫁の母のお杉も家付き娘で養子をとりーその夫が亡くなり 後家なのだが
自分よりも随分と年下の いっそ母子ほども年の離れた男と一緒になりたいー
そう言い出しているのだと 倫之助が相談にやってきた
相手の若い男がどんな錦絵から抜け出したかのようないい男かと思えば これは泥つき大根のような男
お杉は男の子をなくしたことがあり その男の子も泥つき大根のようであったと
他人と思えず お杉はその男にできるだけのことをしてあげたかったのかー
「弥生鳶」
弥生鳶という引退したスリがいる
亡くなったはずが 弥生鳶と名乗るスリが現れ仕事をしているという
いささか縁のあった千七長屋こと善人長屋の住人の安太郎は気にかかり
幼い頃 安太郎に可愛がられ「金魚」と呼ばれていた娘も現れて
「兎にも角にも」
加助の困っている人間を放っておけない性分で長屋に連れ込んだ男はとんでもない奴で
またまた長屋に迷惑がかかる
それでも加助の親切は 一人の男の生き方を変えていたのだ
「子供質」
このままではこの子が殺されてしまいます!と言い置いて消えた女
子供の体には酷い傷がたんとあり
調べれば それは親のいいじめではなく 殆どが子供自らがつけたもの
痛みを感じられない子供の育て方に苦悩する父親に
子供は「生きているじゃないか」
それ以上に大切なことなんかーとお竹の言葉が響く
お竹は 自分の子供に死なれているから
「雁金貸し」
お縫の姉が 後家のお重から借りた金が増えていた
魔法のように証文の字が化けたのだと
やたらともてる新九郎が解き明かして見せたからくりはー
「侘梅」
夜になると出かけていく兄の唐吉
それが心配な文吉はこっそり後をつけた
すると会っていたのは侍姿の人物
もしや男同士で?!案じる文吉だが
これには世間知らずの姫と
子供の頃 好きな相手の注意をひきたくてのイタズラから嫌われた許嫁の
姫を大切に思う許嫁の為に唐吉はある品を捜してー
「鴛鴦の櫛」「大川契り」
加助の人助けから ある盗賊一味の誤解を受けて人質にされたお俊とお縫
お俊はこれまでお縫に話していなかった身に起きた忌まわしい事と 儀兵衛との馴れ初めを語る