区役所で生活支援課相談・保護係の窓口担当の小日向巧(こひなた たくみ)のひそかな趣味は廃駅巡り
彼は自分の趣味を「ひょっとしたら僕は死体愛好家なのかもしれない」などと思ったりもする
使われなくなった駅 打ち棄てられた場所
夏草や兵ものどもが夢の跡
この句が好きな小日向
ー廃墟とかって、要は死体と一緒なんですよー
廃墟をめぐる人の言葉に 小日向もひどく腑に落ちるものを感じる
ー使用されなくなり無残な骸を晒す建造物も、静物となった死体も本質的には似たようなものだ。そしてもの言わなくなった残骸の哀しみに共感を覚えるー
幻のホーム見学ツアーに参加
しかし同じ職場の人間には このオタクな趣味を話せずにいる
引かれるーと 思っているからだ
生活保護を願い出て 様々な重箱のスミをつつかれ 却下される はねられる人間は余りに多い
小日向はできることなら 救いたいーと願い
そこを上司に叱られる
窓口は救うためではなく限られた予算を考えなくてはいけないーと
それは小日向の願い 考えに反しすぎ
彼は廃駅へのひとり冒険を試みる
勿論非合法なもの
そこで小日向は 廃駅の住民たちと遭遇
彼らは国策の犠牲者でもあった
住民たちに潜入していた公安の人間が殺される
その死体をここで死んだものでないように 死んだ場所変更移動の案内を頼まれる小日向
廃駅の住民たちの中に殺人者がいるかもしれない
そして潜入中の公安の人間が殺されたことで 公安も警察も別々に動き出し
小日向も公安と警察から事情聴取される
廃駅の住民たちをまもりたい 理不尽な仕打ちから救いたいーと持てる知識をフル稼働
同じ趣味の人々や 思わぬ漢気を見せてくれた職場の人間の言葉
それらに力を得て動く小日向だが 公安の動きは思ったより早くー
残り頁が少なくなっても危機感は高まるばかり
この話 どう決着をつけるーと思っていたら さすがは中山七里さん 綺麗にまとめてくれたのでした
色々ネタバレになってしまうので触れませんが
オタクの人脈 おそるべし
けれど美しい解決でよかった
人間捨てたもんじゃない
安心しました
小役人の頑張り
普通の警察?!さん 有難う
解説はフリーライターの友清 哲(ともきよ さとし)さん