此の世は闇だ そして全ては幻だ
死ねば それで消える おしまいだ
けれど中には此の世にしがみつく魂も稀にある
それを幽霊とも悪霊とも もしくは祟りとも・・・・・
それもまた幻なのか
ここに勝てない相手を恨み呪いぼやき謗り続ける男が居る
ー俺の方がアイツより優れているのに なんでアイツが選ばれる
いつもいつも俺を出し抜きやがって
あんな奴 死ねばいい 滅べばいい
できれば呪ってやりたいー
ちびちびビールを呑みながらぶつぶつ ブツブツ・・・・・
酒が回り どんどん目つきが悪くなっていく
店を出て夜道をふらふらよろめきながら歩き まだ恨む相手への呪いの言葉を吐き続ける
「そんなに憎い相手なのか」揶揄うような声が掛かる
「なにをっ!」細い目を吊り上げて男は声の方へ振り向く
相手の姿は闇に紛れよく見えない
細身らしい影が夜に同化している
「ならばー」と影は続ける
「その願い叶えてやろうか 」
「お おう」と男は応〈こた〉えた
「ふふふ・・・しかし人を呪わば穴二つ それで良いのだな」
「望むところだ」深く考えずに言う男
「心得た」夜の中の影は応じた
酔っている男は 朝起きるとこのやりとりを忘れた
男がその成功を妬んだ人間は 抜擢され出向した会社が潰れて退職
「ざまあみろ」祝杯あげる男のもとへ あの影が訪れる
「代償を頂戴にきた」
男は怯える その影が醸し出す禍々しさに
「他人を羨み己は何の努力もせず恨み呪う その魂のひねくれ加減 よき漬かり方をしそうだ」
影は指を鳴らす
その背後から煙のようなものがたちのぼった
それに向かい影は告げる「これを連れていけ」
煙のようなモノは嬉々として男の口の中に入り込み・・・・・
そして何かを連れて消えた
影は薄く笑う「半端者だが漬けておくと程よい悪霊に育ちそうだ」
ある種の魂を集め悪霊に仕上げるこの影は・・・漬物屋と呼ばれる悪霊使い
時に彼は言う「その魂 漬けてやろうか」
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ごめんなさい