Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

UDON

2007-12-21 | 日本映画(あ行)
★★★★ 2006年/日本 監督/本広克行

「いい意味で裏切られた」


フジテレビ製作、しかも宣伝の割には人が入らなかったなど、ネガティブな印象が強く見始めたのですが、これが思ったよりも真摯な作りで期待以上。やっぱり映画って前評判と関係なく見るべきなんだなあ。

物語は前半と後半に分かれていると漏れ聞いていたのですが、私はそうは感じなかった。むしろ、この物語は「讃岐うどん」そのものが主役だと考えると、実に一貫したストーリーとして捉えることができる。しかも、この言いたいこと=テーマが押しつけがましくなく、丁寧に作られていることに実に好感が持てる。

香助たち、麺通団の活動によってブームになってしまったうどんは、地元の人の手から離れて流行の産物となってしまいます。しかし、ブームはやがて過ぎ去りうどんは落ちぶれる。後半は一転して父と息子の物語に、と言う人がいますけど、私が感じたのはそうじゃない。つまり物語はうどんを再び地元の人の手に返すということに転じていくのです。

物語上は父親の死がきっかけにはなっていますが、香助が自分で麺を打ったのは、流行の産物に仕立ててしまった責任を取り、けじめをつけるためとも考えられます。そして、香助が店を継ぐのか、と思わせておいて、そうしないのも粋な展開です。だって「うどんを地元の人に返さないと」意味がないわけですから。そして、続くオチも蛇足なんかではない。つまり、香助はかの地でもうどんの伝道師を続けているというわけです。

結局、物語を動かすのは香助ですが、地域に根付くソウルフードは、なぜソウルフード足りうるのか、というお話。地元の小中学生が、早く松井のうどんが食べたいと書き込むシーンなど実に心温まるエピソードに感じられましたし、地元住民の松本明子が行列の人々が落としていった空き缶を拾う後ろ姿も良かった。作り手がどれほど「うどん」をよく知り、愛しているかが伝わってきました。

麺通団のいきさつも、私は同業者なので思うことがいろいろ。やっぱり、自分の足を使って、自分で食べて、自分で感じたことを記事にすることって大切!こんなにちゃんと取材して回る編集部って、そうそうないもんです、ここだけの話(笑)。なぜ、うどんがブームになったか。それは麺通団がうどんに感動したから。そこんところも数々のうどんビジュアルを通じて共有できました。

もちろん、難を言い出すといろいろあるのは間違いない。小西真奈美のナレーションはくどいし、尺は長いし。でも、私はいい意味で裏切られ、楽しめました。これはもしかしたら「踊る大捜査線シリーズの本広克行監督が」という触れ込みで見る人がターゲットじゃないかも知れないなあ。いやはや映画の宣伝の仕方ってホント難しい。見て欲しいターゲットを逃していたんじゃないだろうか。