Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ラヴェンダーの咲く庭で

2008-03-01 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2004年/イギリス 監督/チャールズ・ダンス
「恋心を表現するさじ加減」


時は1936年。初老のジャネットとアーシュラ姉妹は、ある夏の朝、海岸に打ち上げられた若い男を見つける。姉妹の看病により次第に回復したアンドレア。しかし、妹のアーシュラが彼に恋心を抱き始め…

冒頭、浜辺を散歩する老女二人の後ろ姿がシルエットのように浮かび上がる。ベテラン二大女優マギー・スミスとジュディ・デンチの競演ともちろん知っての鑑賞なのに、どっちがどっちなのかわからない。なぜなら、一人の老女の後ろ姿がとても小さくて儚げに見えるからだ。背の高さから言ってジュディ・デンチなのだろうが、雰囲気が彼女のイメージとはあまりに違う。果たして、やっぱり先のかわいらしい後ろ姿は彼女であった。

本作は恋する乙女を演ずるジュディ・デンチが見どころ。先日見た「あるスキャンダルの覚え書き」のイメージが残っていたせいもあろうが、あまりの豹変ぶりに驚いたの、なんの。もちろん、年を取っても恋することはすばらしい。だけども、嫌味を出さずに表現するのは難しい。時代設定もあるし、年甲斐もなくと言う世間体もあるけど、高ぶる気持ちを抑えつつ、恋する乙女の浮き足立つ様子をジュディ・デンチは巧みに演じていた。いそいそとおめかししたり、うるんだ瞳で見つめたり。彼がいなくなった時の落胆と嗚咽。叶わないのは承知の上でも、誰かに恋をすることでしか味わえない心の高ぶりを私も今ひとたび経験してみたい!と思わせてもらった。

まあ、実のところ、もうちょっと恋の行方が二転三転して、ドラマチックな展開になる方が好みなんだけど、この年の差だとリアリティがなくなっちゃうんだろうな。私が印象的だったのは、姉のジャネットが何かにつけて妹の名を呼ぶ「アーシュラ…」という響き。恋に走る妹を諌めたり、慰めたり、励ましたり。長年共に暮らしてきた姉妹だから、多くを語らずとも伝わるいろんな「アーシュラ…」と言うひと言にふたりの深い結びつきを感じた。話の中心は老女の恋だけれども、年老いた姉妹が互いに思いやりあう姿もとても素敵な作品。