Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

日本以外全部沈没

2008-03-31 | 日本映画(な行)
★★★☆ 2006年/日本 監督/河崎実
「筒井の毒を映像化するってのは難しいんだなあ」


人にオススメするとか、しないとか、そういう基準で語ることは全くできません(笑)。私の興味は、あの毒がてんこ盛りの原作をどれくらい再現できているのか、ということ。結果としては、筒井康隆らしいシュールさは表現しきれなかったなあという感じ。

「世の中が日本だけになったら」という仮定から想起される様々な出来事は、日本人のプライドや島国根性、そして、それに相反するように持ち合わせている自虐意識を浮き彫りにする。その発想に気づいた筒井康隆は実に頭がいいと思う。文体は下品で過激だけれども、突きつけられるのは日本人としてのアイデンティティー。そこにスポットを当てて観れば、各国の首相のパロディは、よくぞここまでできたな、と思う。中国の首相に「虐殺の歴史は中国大陸と共に海に流した」と言わせてますからね。よく映倫通りましたよ。また、日本人音頭に始まり、外国人を一掃するGATなど、文字通り「日本人がいちばん!」という描写の列挙に対して、観る側がどれほど居心地の悪さを感じるかは、一種の踏み絵とも呼べるのかも知れない。日本の首相にヨイショしまくる中国や韓国の首相の姿を見て、痛快、と思える人はいないでしょうからね。

が、いかんせん、「対白人」における描写に関しては、かなりツライ。そして、ここを許せるかどうかが、本作を楽しめる分かれ目でしょう。日本人が持つ白人への憧れや引け目。それが、ハリウッドスターが日本で転落していく様子を通じて顕わになる。しかし、ハリウッドからなだれ込んでくる有名人がみんなソックリさんですからね。これでは、原作が持ち合わせているメッセージを表現するのはかなり難しい。だが、映画はハナから低予算、チープだと宣言しているのですから、そこを突っ込むのは筋違いかも知れません。良くも悪くも筒井風味を河崎流に全編アレンジされちゃったということです。

このネタで98分ですか。いっそのこと75分くらいの映画にしてしまえば、ガハハと笑って終われたような気がします。で、その後に、意外と自分の日本人観を試されたのかも知れない、と余韻を味わえたんじゃないかな。