Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

虹の女神

2008-03-30 | 日本映画(な行)
★★★ 2006年/日本 監督/熊澤尚人
「切ないだけの映画はいらない」


元々岩井作品が苦手なんだけれども、出演俳優に惹かれて鑑賞。が、しかし、何とも言えないもやもやばかりが残る作品であった。確かに切なさを描くテクニックはうまい。水平の虹、なんて目の付け所もいい。それでもね、主人公智也の常識を遙かに超えた鈍感ぶりは切ないというよりも、いい加減にしてくれ、という感じ。

「失って初めてわかる大切なもの」がテーマなんでしょうか?しかし、智也にとって、あおいが大切な存在であることを気づく場面は、彼女がアメリカに行く前から散々ありました。結局、彼が己のストレートな感情を表現したのは、あおいが死んでから妹の前で号泣するシーンであります。そこまで行き着かないと、自分の気持ちが出せないのですか、この男は?もちろん、なかなか恋愛に発展しない男と女のすれ違いを描いているのはわかります。誰にだって、そういう経験はあります。でも、それを通じて監督が伝えたいことは何なのでしょう?ただただ、切なけりゃいいんでしょうか?そういう映画は私は御免です。

ダメ男が主人公の映画って、私は大好きです。けど、それは情けなさの中に人間的なものがあり、喜怒哀楽があり、愛おしさがあるからなんです。だって、胸に携帯電話をしこんでピカピカ光らせてるような10も年上の女に体よく騙されるなんて、正直この男かなりイタい。なんかね、同情の余地なしって感じなの、アタシの目から見ると。そこを「そうか、そうか、つらかったね」とポンポンと肩を叩いてやるようなムードを40歳の熊澤監督、及び44歳の岩井監督が作り上げていることに、私は違和感を覚えてしょうがない。

上野樹里、蒼井優、市原隼人。この3人は、とてもいい。3人ともこんなぽわーんとした作風の中でしっかり存在感を出しているところに役者としての底力を感じる。特に市原隼人の自然体の演技が光る。ストーカーで鈍感でイタイという、最悪のキャラクターが美しい物語に何とか溶け込んでいるのも彼の演技のおかげかな、と思うほど。つまらんテレビドラマには出ないで、頑張って映画俳優の道を突き進んで欲しいな。見直しました。

印象的な絵がありましたか?と聞かれると、たくさん答えられる。だけど、美しさにごまかされた物語は嫌いだ。岩井監督、いい加減「切ない」は卒業して大人の愛を描いたらどうでしょうか?って、大きなお世話ですな。