Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

不都合な真実

2008-03-04 | 外国映画(は行)
★★★ 2006年/アメリカ 監督/デイヴィス・グッゲンハイム
「伝える方法を間違ったんじゃないだろうか」



確かに知っておいて損はない情報がてんこ盛りである。だが、見終わって少々がっかりしている。だって、果たしてこれは映画なんだろうか?本作を構成するのは延々と続くプレゼンテーションと時折挿入されるゴア氏のモノローグ。それらは確かに引きつけられる内容だし、多くの発見もあるけど、上手な発表会を見たというだけで、映画を見たという満足感は実に乏しい。

しかも、本作は地球の恐るべき未来予想図よりも、遙かに決定的で悲痛な事実を突きつける。それは、「とどのつまり、地球の未来はアメリカ次第」というやりきれない現実。世界各国の中でも飛び抜けたCO2量を排出しているアメリカ。その総量はアジアの国々が出しているCO2の量を全部合算してもなお上回ると言う。車の燃費の悪さに、止むことのない消費文化と兵器の生産、そして京都議定書への不参加表明。

でね、これらの現実を咀嚼していると、「ブッシュじゃなくてゴアが大統領になってたらなあ」なんて考え始めちゃう。あらあら、いつのまにやら巧妙なブッシュ批判ムービーに変身。これは、ゴア流のプロパガンダかいな、なんて思い始めてしまうもんだから、肝心要の「地球を何とかしなければ」という思いが遙か彼方へ去ってしまうのだ。

結局これらの思いが邪魔して、「地球のためにこうしよう!」というあふれんばかりの決意でエンディングを迎えられないのだ。もちろん、車のエンジンは止めよう、とか、買い物袋は持ち歩こうとか思いますよ。だけど、その程度で終わってしまうようじゃ、97分間も使って映画にする意味がない。例えば、風力発電に取り組む人とか、地球を自然破壊から守るために体を張って活動する人とか、いくらでも取材してデータを裏付けることはできるはず。それなのに、プレゼンテーションの合間に挿入されるのは、いかにゴアが真摯な研究者かって言う映像。映画というメディアだからこそできるメッセージの伝え方ができていないように思う。こんなにいいネタあるのに宝の持ち腐れだなあ。

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でね、何でこの作品がアカデミー賞「最優秀歌曲賞」なの?的外れも甚だしいでしょう。且つ「最優秀ドキュメンタリー賞」受賞。確かに内容は優秀だけど、これをドキュメンタリーと呼ぶのはどうだろう。だって、ほとんどプレゼンシーンだもの。ケチをつける気は全然ないけど、どうもゴアへのおべんちゃらという気がしてしょうがないのだ。