Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

コンセント

2008-03-20 | 日本映画(か行)
★★★★☆ 2001年/日本 監督/中原俊
「暗い原作を中原流に仕上げた逸品」


中原監督お見事、の1本。原作の雰囲気は残しつつ、原作ファン以外の人が見ても十分に楽しめる作品。オカルトとか心理学、というキーワードで引っかかる人には広くオススメできます。だってね、原作はすごくすごく暗いんですよ。ものすごく「内に向かう」物語だし、死臭とか幻覚とかシャーマンとか、かなりアチラの世界に足を突っ込んでいて、ダメな人はダメという拒否反応を引き起こしますもん。私は、好きなんですけどね(笑)。本は誰にでもオススメできないけど、映画はそれなりにオススメできる。これは、原作の映画化という観点で見れば、実にステキな展開ではないかしら。原作は原作としてあるんだけども、これはしっかり中原作品。

「心理学」ー「精神病」ー「超能力」というカテゴリーを行ったり来たりして、かなりうさんくさい展開だけど、映像やセリフ回しは全体的にあっけらかんとしたイメージにしている。そこが、いいんでしょう。この原作は、しようと思えばいくらでもマニアックなテイストにできますからね。また主演、市川美和子の魅力によるところも大きい。兄の死をきっかけに不思議な能力を身に付けていく役ですが、元々彼女自身が「フシギちゃん」みたいなムードを持っているので、非常にしっくり来ます。それに、かなり裸になるシーンが多い役どころなんですが、とても堂々としていて、いいの。すっぽんぽんで冷蔵庫を開けたり、SMまがいのアブナイお遊びに興じたり。この作品を見てわたしゃ断然美日子より美和子派になりましたよ。

でまた、脇を固める役者陣が面白いんだ。ユキの大学時代の教授であり愛人を演じる芥正彦。これが目玉ひん剥いた芝居がかった演技で突っ込みどころ満載。兄は木下ほうか。腐ったお兄ちゃんの死体って聞いて、その役は木下ほうかしかないだろ!?って思ってたら、いきなり遺影の映像がホントにそうだったのでひっくり返りそうになった(笑)。セックスフレンドのカメラマンが村上淳で、大学時代の友人がつみきみほ。また、これがとんがりおすまし娘でぴったり。そして、関西弁の精神科医、山岸を演じる小市慢太郎がむちゃくちゃいいのよぉー。光石研がメジャーになってしまったので、これからは小市慢太郎の隠れファンで行くぞ。

とまあ、若干脱線しましたが、本作、原作のラストをバッサリ切り捨ててます。その潔さがまたいい。ユキは、原作のラストでは、とある職業に就きます。活字で追うとまだすんなり落ちるかも知れませんけど、これがかなり飛躍的な展開。中原監督は、それを止めて生まれ変わったユキの未来を示唆するような清々しいエンディングに変更。引きこもり、家族崩壊、精神分裂、幽霊、セックスと飛び道具がてんこもりの物語を実に軽やかにしめくくった。これは、英断でした。