Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

アヒルと鴨のコインロッカー

2008-09-04 | 日本映画(あ行)
★★★ 2006年/日本 監督/中村義洋
「期待しすぎて、失敗」



「神様を閉じこめるのさ」とか「悲劇は裏口から起きる」に代表されるような、カッコつけたセリフがちっともカッコよく決まっていません。むしろ、こっぱずかしくて、椅子から立ち上がりたいほど。お尻がこそばゆいです。伊坂作品は「ゴールデンスランバー」「死神の精度」「重力ピエロ」と読みました。重大な物事や事件を敢えてスカして見せるとでもいいましょうか。つらく悲しいことをサラリと淡々と描く。その行間に流れるもの悲しげなムードこそ、伊坂作品の特徴なのですが、この作品はそのムード作りに失敗しています。

冒頭のバグダッド・カフェばりの本屋の看板。このカットがあまりに思わせぶりで、後は下降していくのみです。何せネタふりの前半1時間がたるい。隣の隣のブータン人がブータン人ではないことくらい、すぐにわかってしまうので、早く教えてくれよとイライラしました。後半、解き明かされる真相も、なるほど!と膝を打つようなものではなく、こんなに待たせてそれかよ…と拍子抜け。原作が悪いのではなく、見せ方が下手なんだろうと思います。まさにボブ・ディランの「風に吹かれて」の雰囲気を全編に漂わせようとしたのでしょうが、あまりにもテンポが悪くてだれてしまいました。

後半部のキモは何と言っても、ブータン人の悲哀が出せるかどうか。これにのみ、かかっています。しかし、残念ながら、ブータン人を演じる役者の器量がまだまだ足りなかったようです。例えば、オダギリジョーなら、このもの悲しさはもっと出たように思いますね。例のセリフも、もっと決まってたでしょう。でも、役者の責任というより、もっと監督が彼の心情に寄り添った演出をしないとダメでしょう。すごく悲しい真相なのに、ちっとも悲しく思えない。その時点で、ダメだあ~と思ってしまったのでした。期待していたので、余計に残念。