Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

黒帯

2008-09-07 | 日本映画(か行)
★★★☆ 2006年/日本 監督/長崎俊一
「なぜこの時代背景にしたんだろう」




主演を演じるふたりの格闘家の存在感がすばらしい。義龍を演じる八木明人は国際明武館剛柔流空手連盟館長、大観を演じる中達也は日本空手協会総本部師範。共になかなかの男前で本作に限らずまた日本の映画で出て欲しいと思わせる逸材ではないでしょうか。小さい頃、千葉真一率いるJACが好きで彼らの体を張ったアクションにワクワクしたものです。しかし、最近はCGやワイヤーの発達もあって、生の体の動きそのものにワクワクするような日本人俳優にはめったにお目にかかれません。

本作で見られる空手の技は、派手さはありませんが、これぞ一撃必殺。ビュンッとかシュッとか、静寂の中に響く技の音がその切れ味のすごさを物語っています。ジャンルは全然違うんですけど、タイガースの金本選手のロッカールームでの素振りを思い出しました。毎試合終了後、他のメンバーも帰路につき、静けさに包まれたロッカールームで彼はバットを振る。びゅんっ、びゅんっと空気を切る音には金本の気合いが込められている。そう、「気」を感じる音なのです。動きもいたってシンプル。跳んだりはねたりなど、全くありません。ただひたすらに相手の動きをじっと見守り、一発でうち止める素早い動き。一流の空手家とは、このように闘うのかと正直目からウロコでした。

しかし、ひとつ苦言を言わせてください。この作品、話が暗い。暗すぎる。憲兵隊隊長が恥を理由に自害したり、日本帝国万歳時代の日本人のいやーなメンタリティが横行していて、見ていて良い気分ではありません。もちろん、それに空手家は立ち向かっていくわけですが、それにしても話が暗い。めったに見られぬ格闘家のスゴ技、もっとシンプルに悪いヤツをやっつけるような晴れの舞台で私は見たかった。何もド派手なアクション作品にして欲しかったと言っているわけではありません。また、空手における精神性の大切さというのは十分に理解しているつもりです。

空手をやっている息子と一緒に見たのですが、最初は興奮して技の名前を連呼したりしていました。しかし、残念ながら彼は途中でリタイア。暗いこともそうですし、何よりストーリーが陳腐です。崖から落ちたところを村人に助けられるって、一昔前の時代劇じゃないんだから。監督が長崎俊一で脚本が飯田譲治というクレジットに大きな期待をかけたのに残念。もっとエンターテイメントに作り込んで欲しかった。「真の空手映画を作りたい」と言う製作者の気合いは、びんびんに伝わってくるだけに、本当にもったいないと思いました。