Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

僕のピアノコンチェルト

2008-09-27 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 2006年/スイス 監督/フレディ・M・ムーラー
「どんな人にもお勧めできる秀作」



こんなに良心的な佳作に出会ったのは久しぶりな気がします。視点が実に客観的。全くべったりしていないのです。それがとても見ていて心地いい。子育ての佳作でちょっと突き放した見せ方、韓国映画の「マラソン」を思い浮かべました。

わざと転落して事故に見せかけるその後の展開がとてもユーモラスで軽やかなのがいいのです。苦悩の末の決断と言う重苦しさはほとんどなく、まるで親を困らせたいためのイタズラのようにすら感じられます。本当は事態は深刻なんですけどね。おじいちゃんちの山小屋で伸び伸びと過ごすヴィトス。でも持って生まれた才能を封じ込めておくのもいかがなものか?と言う思いが頭をよぎります。また「普通で元気な子ども」と言われて、肩を落とす母親。このシーンも同じ。親の存在、子育ての在り方を観客に問うています。しかし、そのどれもがさりげないやり方なのがいいのです。

ずば抜けたIQを利用して株式市場で一攫千金。確かに、現実離れした展開かもしれません。でも、いいじゃないですか、これくらいのファンタジー。あまりにヴィトスとおじいちゃんが楽しそうなので、見ているこちらもウキウキさせられました。ヴィトスを演じたテオ・ゲオルギューくん。9歳にして天才ピアニストと言わしめた実力とのこと。いわば、本物が演じているわけですから、説得力があります。そして、ブルーノ・ガンツがいいですね。大金が転がり込んでも、雨漏りは自分で直す。男はそうですとも。「決心がつかなければ、大事な物を手放してみることだ」いいセリフです。ピアノと飛行機という意外性のある対比も素敵です。見終わって、本当に温かい気持ちになりました。じわーんと来ますよ、大プッシュします。