日本が実質的に支配している尖閣諸島を、中国が自国の防空識別圏(ADIZ)に設定したことは、通常なら戦争になり得る事を重々承知で、日本は衝突を避けるだろうとの見方に立った強硬手段だ。アメリカの出方も見ている。
北朝鮮の瀬戸際、ぎりぎり外交に似ている。やはり、北朝鮮の後ろに中国が厳然と存在し操っているという事か。
ケリー国務長官は、「地域の緊張を高め、衝突のリスクを高める」と非難する声明を発表、ヘーゲル国防長官も、尖閣諸島について、日米安保条約第5条に基づき、米国に防衛義務があることを改めて強調し、中国をけん制した。
中国にとっては想定内、次のステップでは、中国の飛行機を今回設定した防空識別圏に飛ばし、様子を見ながら尖閣諸島に近づける。自衛隊機がスクランブルするのを確かめる。そこで、中国の戦闘機を発進させるかどうか。
いつか中国の戦闘機もスクランブルをかけてくる可能性は高い。両方の戦闘機が尖閣諸島付近でにらみ合う形となる。しかし、中国側も即座に威嚇射撃まではしてこない。ダメ元で、危険な嫌がらせを拡大する。
中国の意図は、①日本が屈服して尖閣をめぐる領土問題を認める事、②両国の戦闘機がスクランブルをかけあう段階でアメリカがどう出てくくるかを探る事、③できれば日米の間にくさびを打ち込みたい・・であろう。
日本が屈服しなくて、アメリカが軍事行動を始めた場合は元に戻せばよいだけ。
中国のロシアンルーレットの原因はオバマ大統領の決然とした日本支持だろう。習近平が鳴り物入りでアメリカに乗り込んだ際、日本の悪口を並べ立てたが、オバマ大統領は発言を遮り、日本は同盟国で仲間だと伝えている。
安倍首相の中国包囲外交はそもそもアメリカとの共同歩調。アメリカの円安容認もアベノミクス支持の表れ。また、このたびアメリカの象徴ともいえるキャロライン・ケネディーが大使として着任した事も、中国や韓国はピリピリする。
これらの事を十分意識した上で、中国は危険な賭けに出つつあるのだ。ただ、中国がスクランブルまでやった場合は、流石のアメリカも基本的な方向を変えざるを得なくなる。アメリカへの挑発でもある。
世界経済に激震が走ることを承知の上で、投資環境を変更し中国の経済成長が急速に落ちることを助長させ、結果としての中国のバブル崩壊を容認するかもしれない。
中国としてはアメリカ国債の大量売りで対抗策する。その時は、日本をはじめ、アメリカ国債を買い支えなければならない。また、何らかの戦闘行為が有ってもおかしくはない。すぐそこにある深刻な危機だ。