実は脂肪細胞はタダのあぶらではない。体は脂肪分を脂肪細胞に蓄え、量が多くなると脂肪細胞はレプチンという物質(ホルモン)を放出する。レプチンは血管を通して脳に届き、脳のセンサー(受容体)がキャッチすると、「もう腹いっぱい」という信号を発信する。
ここで、食欲が衰え、食べるのを止めるから太り過ぎにならないという仕組みだ。メタボの人はレプチンが脳に届かなくなっているんだな。何でこんなことが起きるかというと、人間が腹いっぱい食べるようになったのはせいぜいここ数十年の事で、十分な防止システムが無い。
肥満になると、レプチンの感度が低下するとか、体中が炎症を起こしレプチンの信号を阻害するなどの症状で、食べ過ぎを知らせなくなる。かくして爆食が起こる。
自然動物はハングリーが当たり前だから、食べ過ぎなんて言う状況は無かった。ハングリーで健康なんだ。食べ過ぎると自然動物は病気になる。実験室で鯛を飼っていた事があるが、エサをやりすぎると、表面に黒のまだらが出たりする。
一方、脂肪が無い人は満腹感を脳に知らせないから、いくら食べても空腹で、食べ過ぎてしまう。30歳ぐらいまでしか生きられなかった。しかし、最近では、この状況が分かってきて、定期的にレプチン注射する事で解決できるようになった。
アメリカの分子生物学者であるジェフリー・フリードマン博士が1994年に、肥満マウスの研究からレプチンを発見したんだね。 フリードマン博士はレプチン発見の功績により、2009年に慶應義塾医学振興基金の第14回医学科学賞を受賞している。