OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

イケイケ3管編成

2007-08-03 18:23:55 | Weblog

昨夜から家族や親戚が来ています。もちろん夏休みの遊びなんですねぇ。鮎釣に出かけた伯父なんか、ゴキゲンでウキウキしていますよ。よく疲れないねぇ……、なんてイヤミが出そうです。

ということで、本日は――

Buhaina's Delight / Art Blakey & The Jazz Messengers (Blue Note)

所謂「3管編成」時代のジャズメッセンジャーズでは、代表作となるアルバムです。もちろん音楽監督はウェイン・ショーターであり、メンバーも若手の精鋭を集めて最先端のモダンジャズを追求していたわけですが、それを許していたアート・ブレイキーの度量の大きさは流石の大親分というところでしょう。

と言うよりも、まあ、実際のライブの場では「Moanin'」とか「Blues March」という往年のヒット曲を演奏していたんでしょうし、闇雲な最先端主義は興行主やレコード会社にとっては困り者ですから、その配慮が上手くないと煮詰まった演奏しか生まれないと思われます。

で、この作品は、そういうバランス感覚が実に秀逸な仕上がりになっています。

録音は1961年11&12月、メンバーはフレディ・ハバード(tp)、カーティス・フラー(tb)、ウェイン・ショーター(ts)、シダー・ウォルトン(p)、ジミー・メリット(b)、アート・ブレイキー(ds) という最強の顔ぶれです――

A-1 Backstage Sally (1961年12月18日)
 ウェイン・ショーターが書いた、ちょっとこの時期にしては珍しいほどのファンキー・ハードバップです。強烈なバックビートで煽るアート・ブレイキーも流石の貫禄で、こういうミディアムテンポでグルーヴィなノリこそ、確実にジャズ者を浮かれさせるものだと思います。テーマメロディを吹奏する3管の迫力も最高!
 アドリブパートでは、まずウェイン・ショーターが屈折しまくったファンクネスを披露すれば、背後では実にグッとくるホーンのリフが付いています。このあたりは、当に3管編成の魅力でしょうねぇ♪
 続くカーティス・フラーとフレディ・ハバードも好調ですし、シダー・ウォルトンはフィンキーな中にも新鮮な響きを感じさせるモード系のアドリブで、若手の意地を聞かせています。

A-2 Contemplation (1961年11月28日)
 これは如何にもウェイン・ショーターという名曲・名演です。
 スローで抽象的ながら、実に美しいテーマメロディとハーモニー感覚の新しさ! これが当時の最先端でしょうが、今日でも全く古びていないと感じます。
 アドリブパートではウェイン・ショーターがジョン・コルトレーンの影響下にある音符過多のスタイルに加えて、独自のメロディ感覚を存分に発揮した素晴らしさです。あえて申し述べれば、スタン・ゲッツの味わいまでも含んでいるような気がしているほどです。しかし、これはウェイン・ショーターでしかありえません!
 またシダー・ウォルトンが最高です。幻想的なタッチも加えながら、メロディアスにところも凄いです。寄り添うジミー・メリットの上手さも聞き逃せないところでしょう。
 個人的にはアルバムのハイライト演奏だと思っています。

A-3 Bu's Delight (1961年12月18日)
 カーティス・フラーが書いた強烈なハードバップで、タイトルどおり、アート・ブレイキーのドラムスを中心にして聴くと、一層強烈です。もちろん全体はモード味という新鮮さ!
 そしてアドリブでは、先発のウェイン・ショーターが凄まじいばかりです! アップテンポで煽るリズム隊を尻目に、突撃しては自爆寸前の過激フレーズを連発しています。
 そして溌剌としたフレディ・ハバード、爆裂するカーティス・フラー、疾走するシダー・ウォルトンが実に爽快です。もちろん、その背後ではホーン陣のバックリフがカッコ良く入りますから、たまりません♪
 肝心の親分=アート・ブレイキーのドラムソロは、十八番のアフリカ色とポリリズム、さらに全体の流れを殺さないスピード感を加えた猛烈なスタイルで炸裂しています。う~ん、こういうイケイケの姿勢こそ、リーダーの条件のひとつかもしれません。

B-1 Reincarnation Blues (1961年12月18日)
 これもウェイン・ショーターが書いた、如何にもというアップテンポのブルース曲なんですが、一筋縄では行かない虚無感が……。
 ですから、アドリブ先発のウェイン・ショーターが作者としての見本を示したというか、無機質にドライブしまくっています。
 しかしカーティス・フラーは唯我独尊! 自らの持ち味であるハートウォームな魅力を全開させ、ハスキーな音色でハードバップの王道を聞かせるという、こういうバンド全体のバランス感覚の良さが、早くも証明されています。したがって続くフレディ・ハバードも新感覚のアドリブを披露していますが、アート・ブレイキーの煽りなんか、もうハードバッブそのまんまですから、最高です♪
 それとシダー・ウォルトンの何時もながらの上手さ! 黒っぽいくせにキザっぽいような部分もあって、一聴覚、地味に聞こえますが、充分に個性的だと思います。
 ちょっと混濁したラストテーマの吹奏も魅力的です。

B-2 Shaky Jake (1961年12月18日)
 シダー・ウォルトンが書いたゴスペル調のハードバップなんですが、モードとしても解釈可能という雰囲気が新しいところでしょうか。
 アドリブパートでは、初っ端からフレディ・ハバードが大進撃! クールな音色に熱いエモーションを込めたカッコ良いフレーズを連発してくれます。そして続くウェイン・ショーターが本領発揮の屈折節に加えて、不思議に黒いフィンキー感覚も表出させた熱演なんですねぇ~♪ これには流石の親分も大喜びらしく、刺激的なドラミングでオカズを入れていますし、カーティス・フラーも負けじと得意技でラッシュ攻勢です。
 しかし、この曲の主役は作者のシダー・ウォルトン! その黒いフィーリングと小粋なピアノタッチは、大いに魅力です。背後から襲い掛かってくるホーン陣のリフも良い感じ♪

B-3 Moon River (1961年11月28日)
 さて、アルバムの締めはヘンリー・マンシーニが書いた大名曲をハードバップにアレンジした名演です。
 もちろん強烈なアップテンポとハードエッジなアレンジが冴え渡り、アドリブ先発のウェイン・ショーターの過激な突進にはゾクゾクしてきます。もちろんアート・ブレイキーも大ハッスル!
 ですからフレディ・ハバードも遺憾なく本領発揮のバリバリスタイルですし、カーティス・フラーは大らかなノリと小刻みなフレーズの対比で烈しく場を盛り上げていくのです。
 さらにシダー・ウォルトンが、ここでも実に良いですねぇ~~♪
 そしてラストテーマの潔さ! 爆裂するアート・ブレイキーのドラムスとメリハリの効いたテーマのアレンジ! 最後まで間然することの無い大名演だと、あらためて思います。

ということで、メンバーと演奏の充実度、演目のバランス感覚、さらに時代に対する先鋭性が非常に素晴らしくミックスされた、これはジャズメッセンジャーズの代表作だと思います。

同時期には歴史的名盤と認定される「モザイク(Blue Note)
」というアルバムも残されていますが、個人的には、このアルバムも捨て難いところ! というよりも、実は過小評価に納得していない1枚でもあります。

ちなみに現行CDには、「Backstage Sally」「Bu's Delight」「Reincarnation Blues」「Moon River」の別テイクがオマケとして入っています。これらは、いずれも1961年11月28日に録音されたものですが、マスターテイクに比べてもアドリブや演奏自体に遜色はありません。

ただし「Backstage Sally」「Bu's Delight」には、本テイクでアドリブの背後に付いていたホーン陣のリフが無く、「Reincarnation Blues」は、あっさりとした短めの演奏になっています。また「Bu's Delight」もアート・ブレイキーのドラムソロが短くて物足りないような気がしますが、個人的には、こちらでも良かったと思っています。しかし「Moon River」は、明らかにテンションが低め……。まあ、このあたりは十人十色の感想でしょう。

いずれにしても、わざわざ録音し直したということは、バンドメンバーもプロデューサーも気に入っていなかったはずですから、ボーナストラックが勿体無いというのは、マニアの贅沢というものでしょうか……。

コメント
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