なあ~んだ、朝青龍は、結局、モンゴルに帰ってしまうのかっ!?
じゃ、横綱返上していけよっ!
こんな精神力の弱い奴が日本の国技のトップを張っているなんて、ふざけるなっ!
横綱審議委員会と協会は、全員坊主になれっ!
という過激な気分ですよ、今日は! いやはや、失礼致しました。
でも、なぁ……。復帰したら、弱虫横綱~、辞めちまえ~!
とかヤジが飛ぶだろうなぁ、それはそれで楽しみですよ、もう……。
ということで、本日はこれを――
■Grand Encounter:2 Degrees East-3 Degrees West / John Lewis (Pacific Jazz)
ジャズ界恒例の対決盤のひとつですが、丁々発止のバトル物ではありません。タイトルどうり、東から2人、西から3人の優れたミュージシャンが参加し、素敵な出会いから見事な協調を聞かせた名盤が、これです。
メンバーは東からジョン・ルイス(p) とパーシー・ヒース(b) というMJQ組、そして西からはビル・パーキンス(ts)、ジム・ホール(g)、チコ・ハミルトン(ds) という名手が参加しています。
ちなみに録音は1956年2月10日という当時、MJQ=モダンジャズカルテットは人気を確立していましたし、チコ・ハミルトンが率いていたクインテットはMJQと同じくクラシックの室内楽的演奏をジャズに取り入れて人気急上昇中でした。そこにはジム・ホールも加わっていたわけですし、つまり東西人気グループの共演という趣向が確かにあります。
もちろん東が「ハードバップ」という黒人ジャズ、西が「ウエストコーストジャズ」という白人ジャズの対決と融合が、いったいどうなっているのか? という魅力もあるのです――
A-1 Love Me Or Leave Me
小粋なメロディが魅力のスタンダードですから、まさにこのセッションにはピッタリの選曲だと思います。しかもイントロからテーマにかけての、若干クラシック調の響きが感じられるジョン・ルイスのピアノが実に良い雰囲気です。寄り添うパーシー・ヒースのベースと控えめなチコ・ハミルトンのドラムスも趣味が良いですねぇ~♪
しかしビル・パーキンスが入ってくるアドリブパートになると、流麗なテナーサックスの背後では、けっこう黒いグルーヴが感じられたりします。それはリズム隊が黒人の所為かもしれませんが、ビル・パーキンスが手本としたテナーサックスのスタイルは、レスター・ヤングという黒人だったというルーツの確認も意味深じゃないでしょうか?
またジム・ホールのギターが大名演! 素晴らしいピッキングとコード選びの妙、歌心と深みのあるアドリブメロディの展開には、驚嘆して感動するしかありません!
もちろんジョン・ルイスは、MJQの時と同様にクラシック色のフレーズや絶妙という「間」の芸術を聞かせてくれるのでした。
スバリ、淡々とした中にジャズの本質が垣間見えるような気分になるのは、私だけでしょうか……。
A-2 I Can't Get Started
これもジャズの世界では有名なスタンダード曲で、その「泣き」のメロディがこよなく愛されていますから、このメンバーによる演奏には大いに期待して、見事に感動させられてしまう仕上がりです。ゆったり感が絶妙なんですねぇ~~~♪
まずジョン・ルイスの隙間だらけのピアノが、たまりません。それを埋めていくようなパーシー・ヒースのベースも、説得力があります。そして実はピアノトリオだけの演奏という仕掛けが、最後にわかるという展開が、ニクイところです。いけねぇ、ネタバレ書いてしまいました。
まあ、それが分かっていても感動出来る名演ということで、ご理解願います。実際、何度聴いても、飽きませんよ♪
A-3 Easy Living
これも和み系の有名スタンダード曲で、初っ端からビル・パーキンスのテナーサックスがスカスカと歌ってくれるという、これまた決定的な名演になっています。
もちろん全篇がゆったりと展開され、タメと「間」の妙技、さらに歌心の追求に全員が没頭している様が、濃密です。あぁ、こういう演奏を洒落たホテルのラウンジで聴いていたら、美女が隣に寄添っていたという夢に浸れそうです♪
B-1 2 Degrees East-3 Degrees West
アルバムタイトル曲はジョン・ルイスが書いたブルースですから、一筋縄ではいかない奥深さがあります。
まず淡々としたテーマが進むうちに、パーシー・ヒースのベースが蠢きながらアドリブソロに変化していくあたりで、悶絶です。さらに正統派4ビートに移ってからは、ジム・ホールが虚心坦懐のブルースを聞かせてくれます。
またビル・ピーキンスの流麗で味のあるテナーサックスも最高♪ 2人とも全然、黒っぽくないんですが、立派なブルースになっているんですねぇ~。いやはや吃驚です。
そしてジョン・ルイスが十八番という隙間だらけのブルースを演じてくれますから、たまりません。全く深夜の雰囲気が漂うという、不思議なグルーヴに満ちた仕上がりだと思います。
B-2 Skylark
これまた愛らしいメロディが人気のスタンダード曲で、それをジム・ホールが自然体で弾いてくれるんですから、聴いている私は気分がウルウルして、妙にせつなくなってしまうほどです。アドリブでのメロディ展開の妙も素晴らしすぎ♪
控えめなサポートで独特のグルーヴィな雰囲気を醸し出すリズム隊も、名人芸としか言えません。
B-3 Almost Like Being In Love
オーラスは小粋なメロディのスタンダード曲を軽妙にスイングさせた、このアルバムの中では一番、普通のモダンジャズになっています。
もちろんリズム隊はグルーヴィなところも打ち出していますし、ビル・パーキンスのテナーサックスもドライブ感が強くて、楽しさは倍増♪ 全てが「歌」というアドリブは、もはや即興とは思えないほどです。
さらにグイノリのベースに撤するパーシー・ヒース、シンプルなサポートで自己主張するチコ・ハミルトンのドラムスが最高のコンビネーションを発揮していますから、ジム・ホールもアタックの強いフレーズを繰り出しています。あぁ、この人も本物の名人ですねぇ~。
もちろんジョン・ルイスは、例によってシンプルなフレーズの積み重ねで分かり易いアドリブを聞かせるのです。
クライマックスでは、チコ・ハミルトンのブラシの芸術が存分に楽しめるソロチェンジまでもが用意されているという、周到さが憎めません。
ということで、これは元祖ソフト&メローなジャズの名盤だと思いス。ひとり深夜に聴くも良し、下心に満ちた場面の演出にも最適♪ もちろん気分はロンリーな時にも心に滲みる名演ばかりという、全く出来すぎたアルバムだと思います。
所謂「美女ジャケット」としても必ず引き合いに出される1枚ですから、まさに生涯の友となる作品でしょう。これほどクールで温か味のある演奏集は、めったに無い! と今日は断言させて下さい。