今日も暑かったですねぇ……。何が冷夏だっ!
あまりの暑さに本サイトの更新も手がつけられず、なにしろPCが過熱気味でしたから……。
まあ、一丁前にお盆休みを取れただけでも、幸せというところでしょうか、そこで――
■The Dave Brubeck Quartet In Europe (Columbia)
モダンジャズ黄金期で最高の人気バンドだったデイブ・ブルーペックのカルテットは、もちろんアメリカ本国だけでなく、世界中で巡業を行っていました。
そして凄いのは、各地でのライブレコーディングに加えて、訪れた各国の印象を纏めたアルバムまでも発表していた事です。
さて、このアルバムは1958年の欧州巡業からコペンハーゲンでのライブを収めた1枚ですが、そのサービス精神旺盛で充実した演奏が存分に楽しめる名演集になっています。
録音は1958年5月1~3日、メンバーはポール・デスモンド(as)、デイブ・ブルーベック(p)、ジーン・ライト(b)、ジョー・モレロ(ds) というバンド全盛期の4人組! しかも資料的には、この4人の顔合わせによる最も初期の演奏だと思われます――
A-1 Wonderful Copenhagen
盛大な拍手で迎えられたカルテットが演じるのは、ご当地ソングというサービス満点ですから、たまりません♪
曲は確かダニー・ケイがヒットさせたものだと思いますが、ここではワルツテンポで爽やかにスイングした好演で、いきなりフワフワ~とテーマを吹いてくれるポール・デスモンドが最高に気持ち良いです。
もちろんアドリブも冴えわたり♪ リズム隊のサポートも控えめながら、ジョー・モレロの強靭なビート感が流石ですし、ディブ・ブルーベックは自己のアドリブパートになると、得意のはぐらかしたようなノリを聞かせて、スリルを作り出します。
A-2 My One Bad Habet Is Falling In Love
ディブ・ブルーベックのオリジナルで、なかなかスタンダードっぽい小粋なメロディが素敵です。ジーン・ライトのアルコ弾きとジョー・モレロの抑えた伴奏で、硬めにスイングしていく演奏は、ディブ・ブルーベックならではの魅力が感じられます。
というか、曲そのものの良さが全てでしょうか……。
A-3 Tangerine
前曲では休んでいたポール・デスモンドが、スタンダードを素材に大活躍した演奏です。あぁ、この快適なスイング感と神憑り的な歌心♪ スカスカの音色も最高ですねぇ~~~♪
それを一緒に作り出しているリズム隊では、ジョー・モレロのブラシが驚異的に素晴らしく、またジーン・ライトが基本に忠実ながら実に黒っぽいウォーキングベースを聞かせています。
そしてディブ・ブルーベックは、後年に比べれば控えめな伴奏なんですが、アドリブパートでは若干わざとらしい「間」の取り方が、結果オーライでしょうか? それゆえにベースとドラムスが生み出すグルーヴが一層強烈に感じられます。
もちろんクライマックスはポール・デスモンド対ジョー・モレロの丁々発止が、腹の探り合いという雰囲気になっていますから、ラストテーマに繋げていくあたりでは、万来の拍手が沸き起こるのでした。
B-1 The Wright Groove
タイトルどおり、ジーン・ライトのベースを中心にした演奏です。従来、一部からスイングしないと決め付けられていたデイブ・ブルーベックのバンドは、黒人のジーン・ライトを入れたことによって粘り強いグループを獲得し、加えて天才ドラマーのジョー・モレロによる正確で奔放なドラミングがあって、ここに黄金期を迎えたという、その証のような演奏だと思います。
中盤から登場するポール・デスモンドも、何時もよりハードバップっぽいフレーズとノリを聞かせてくれるのも、珍しいところでしょうか、実に良い感じです。
さらにデイブ・ブルーベックも快適な4ビートの中で、独特のクラシック風の展開を模索して、見事に結果を出しています。
B-2 Like Someone In Love
これまた有名スタンダードですから、バンドは和みを追及して、さらにモダンジャズの楽しさ存分に披露してくれます。
まずポール・デスモンドによるテーマの変奏からアドリブが、もう最高♪ 浮遊感のあるフレーズとノリが、ジョー・モレロの粘っこいブラシでしっかりと支えられ、それがジーン・ライトのベースによって増幅されるという、このパンドの持ち味が完璧に出た演奏だと思います。
それとデイブ・ブルーペックが、ちょっと意味不明なフレーズの連続からテーマメロディを引き出していくあたりも、面白いですねぇ。こういうインテリ志向が、白人の客層にはウケたのかもしれません。
B-3 Watusi Drums
ディブ・ブルーベックが一座の花形ドラマーを大活躍させるために書いたオリジナル曲で、期待に応えたジョー・モレロが熱演を聞かせます。
と言っても、闇雲に敲きまくるわけではありません。安定したジーン・ライトのベースワークを基本に、ポール・デスモンドとデイブ・ブルーベックがしっかりと脇を固め、その中で大技・小技を出し惜しみしないジョー・モレロの神業に驚愕するという仕掛けです。う~ん、緊張感溢れる構成が凄いですねぇ。
ということで、これはスリルと和みが両立した楽しいアルバムです。ジャケットのトボケたイラストもニクイところでしょう。人気盤が多いこのバンドの中では地味な作品かもしれませんが、上昇期の勢いが感じられて、私は気に入っています。