OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

お盆にハードバップを

2007-08-12 19:46:46 | Weblog

今日は墓参りやら、友人への見舞いやら、駆けずり回って疲れ切りました。

そこで、痛快なハードバップで気力回復を狙いました――

Lou Donaldson Sextet (Blue Note)

ハードバップからファンキー、ボサノバ~ラテン、コテコテのオルガンファンク、そして4ピートリバイバルまで、常に時代の先端を駆け抜けていたのが、ルー・ドナルドソンという黒人アルトサックス奏者です。

しかし、その先進性があまりに急すぎる所為でしょうか、我国では節操が無いとか、シャリコマだとか、常々言われ続けて軽視されていたのも、また事実でした。

特に1960年代からの諸作は、悩んで聴くのが主流のジャズ喫茶では困り者というか……。ただしその快楽性を含んだハードバップ物は、避けて通れません。

このアルバムは10吋盤ですが、後に12吋LP化された「4,5&6(Blue Note 1537)」には収録されなかった音源も含んだ傑作盤です。

録音は1954年8月21日、メンバーはルー・ドナルドソン(as)、ケニー・ドーハム(tp)、マシュー・ジー(tb)、エルモ・ホープ(p)、パーシー・ヒース(b)、アート・ブレイキー(ds) という強烈な面々です――

A-1 After You've Gone
 爆発的なアート・ブレイキーのドラムソロで始る、元気溌剌の演奏です。曲は古いスタンダードなんですが、リズム隊のグルーヴは強烈至極で、まさにハードバップここにあり! ルー・ドナルドソンがリードするテーマ部分のシンプルなアレンジも力強さに繋がっています。
 アドリブパートでは先発のケニー・ドーハムが熱血のフレーズを連発すれば、ルー・ドナルドソンはビバップ色の強いエキセントリックな突っ込みに加えて、分かり易いノリもあったりして、素直に楽しめます。背後から襲い掛かってくるホーン陣の即興リフは「お約束」でしょうが、クライマックスでブレイク気味の無伴奏ソロに持っていくあたりは、流石の纏まりだと思います。

A-2 Caracas
 ラテンビートを用いたルー・ドナルドソンの楽しいオリジナル曲ですが、アドリブパートでは正統派4ビートですから、全員が本領発揮の大名演!
 まずルー・ドナルドソンがアグレッシブなブレイクから、チャーリー・パーカー直系のスタイルを完全披露♪ もちろんアドリブフレーズは頂き物が多いわけですが、そのノリが分かり易いですから、たまりません。
 それはエルモ・ホープにも言えることで、どこか儚げにスイングするモダンジャズピアノの新しいスタイルを提示してくれます。
 そしてケニー・ドーハムが、これまた哀愁が滲むような音色ですし、私が大好きなマシュー・ジーが切なくも和みのフレーズを吹きまくり♪ あぁ、これがハードバップの楽しさです♪
 もちろんアート・ブレイキーのドラミングも、千変万化で最高です。

B-1 The Stroller
 小気味良いエルモ・ホープのイントロからして、最高です。簡単なリフのテーマを挟んで始るアドリブソロも、痛快至極! アップテンポでも決して乱れないノリの凄さは、神憑りかも……♪
 ですからルー・ドナルドソンも大ハッスル! バックのリズム隊も激烈な煽りですから、全く油断が出来ない雰囲気で、ケニー・ドーハムも流麗なフレーズを大放出です。
 そしてマシュー・ジーが、実に良いですねぇ~~♪ ちょっと中間派っぽいモダンスイングのフレーズに加えて、非常に黒っぽいグルーヴィなノリが最高です。こういう早いテンポで、これが出来てしまうのですから、モダンジャズ全盛期の凄さが存分に味わえる名演ですねっ♪

B-2 Moe's Bluff
 エルモ・ホープが書いたオリジナル曲ですが、ちょっとセロニアス・モンクの影響が滲んでいるあたりに、この人の個性とルーツが感じられます。
 しかし演奏そのものは、楽しさ追及モードですから、アドリブ先発のマシュー・ジーが俺に任せろ! 和みとオトボケのグルーヴィなノリが味わい深いところです。
 また続くケニー・ドーハムが、これまた「味」の世界♪ するとルー・ドナルドソンもリラックスしたフレーズで、なかなか分かり易いモダンジャズに撤してくれます。
 それと弾みきったリズム隊が秀逸です。特に大技・小技を駆使したアート・ブレイキーが好演! エルモ・ホープも翳を秘めたスイング感が絶妙ですねっ♪

ということで、わずか4曲にハードバップの醍醐味が凝縮されています。時期的にそれは、ビバップからハードバッブに移行した完成形かもしれません。

ちなみに「After You've Gone」は、前述の12吋盤には未収録となりましたが、一時出回っていたCDには収録されているとの事です。

機会があれば、ぜひとも聴いていただきたい名演集なのですが、ここに取上げた真意は、もちろんマシュー・ジーの存在ゆえなのでした。先日ご紹介したリバーサイド盤と合わせて聴けば、幸せが倍増するでしょう。

コメント
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