OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ポエムの中身

2007-05-21 17:20:15 | Weblog

公私共に困難に直面していましたが、なんとか光明が射してきました。

こういう事は、いつもながら、あっけなく片付くというか、本人の思い込みよりは簡単にいってしまうんですねぇ~。結果の良し悪しは別にしてですが……。

ということで、本日は気合の1枚を――

Scratch / Kenny Barron (enja)

巷では「ジャケ買い」なんていう粋な行為が流行っているようですね。このアルバムなんか山城新伍風に言えば「ポエムですねぇ~、メルヘンですねぇ~」となるジャケットですが、どっこい、中身はガチガチのモロジャズが詰め込まれた裏腹盤です。

リーダーのケニー・バロンは、抜群のセンスとテクニックを兼ね備えた黒人ピアニストで、けっこう古くから活動していますから、局地的というかマニアックな人気があったんですが、どういう訳か長い間、決定的なリーダー盤を出すことが出来ませんでした。

しかしそれが好転したのが1980年代で、このアルバムあたりは、ジャズ喫茶に集うようなガチガチのファンから好意的に迎えられた代表作となりました。

なにしろ時代はウィントン・マルサリス(tp) 一派を中心とした新伝承派が台頭し、それに刺激されたベテラン勢がフュージョンの夢から覚めた者も含めて、一様に4ビートに回帰していました。そんな中で、この作品こそが、主流派ジャズの底力を存分に感じさせた新作として登場したのです。

録音は1985年、メンバーはケニー・バロン(p)、デイブ・ホランド(b)、ダニエル・ユメール(ds) というガチンコトリオ! しかも1曲を除いて全てがケニー・バロンのオリジナルという演目も強烈です――

A-1 Scratch
 いきなり幾何学的なテーマが飛び出してくれば、辺りはすっかり硬派ジャズ色に染め抜かれてしまいます。しかもアドリブパートでは徹底してグルーヴィな4ビートが貫かれるんですから、たまりません♪
 もちろんそれはモード系なんですが、デイブ・ホランドの弦の張りが緩いようなベースによるブゥ~ン、ブゥ~ン唸るウォーキングが実に良いですし、ドスドスバタバタに迫って来るダニエル・ユメールのドラムスも強力です!
 そして主役たる、ケニー・バロンはハービー・ハンコックの影響下にあるピアノスタイルながら、充分に個性と歌心を発揮して憎めません♪

A-2 Quiet Times
 これだけがカーメン・ランディという人のオリジナルで、綺麗なスロー曲ですから、ケニー・バロンのこよなく美しいピアノタッチが堪能出来ます。もちろん、じっくり醸し出される歌心の妙も素晴らしく、素敵なテーマメロディを変奏しつつ、どこまでも気持ち良い演奏に仕立てていくあたりは、流石♪
 寄り添うデイブ・ホランドのベースも嫌味無く、目をつぶって真剣に聴くというジャズ喫茶モードには、うってつけの名曲・名演になっているのでした。

A-3 Water Lily
 基本はワルツ曲なんでしょうが、重心の低いビードを敲き出すダニエル・ユメールの存在感ゆえに、重厚でハードな演奏が展開されます。
 ケニー・バロンのピアノからもテンションが高く、それでいて琴線に触れまくるフレーズが連発されますから、完全にジャズ者の心を虜にしてしまうんですねぇ~♪ このあたりのツボの押え方こそが、この人の持ち味だと思います。
 そしてデイブ・ホランドのべースソロが、これまた歌心の塊なんです♪ ダニエル・ユメールが、その背後で動かすブラシもシブイ!
 う~ん、そこはかとなく泣けてきます。

B-1 Song For Abdullah
 B面に入っては、いきなり叙情的なケニー・バロンのソロピアノ♪
 曲調は「泣き」を含んだゴスペル風でもあり、欧州民謡の様でもあり、はたまた我国のニューミュージック歌謡曲の様でもありますが、もちろん聴いていて嫌味がありません。まあ、キース・ジャレットの様だという、スバリと言い切った御意見もあろうかと思いますが……。
 まあ、それはそれとして、ここでのケニー・バロンは出来すぎです。聴いていて一瞬もダレず、全く穏やかな歌心の世界は、「良い」としか言えません♪

B-2 The Third Eye
 一転して過激な演奏です。
 基本はもちろん4ビートですが、トリオの全員が互いにガンガン、遠慮せずにぶつかりあって展開される世界は、当にジャズの本質でしょうか!? バラバラをやっている中で、ある時は正統派に収斂し、またある時はフリーに分裂していく様は、本当に痛快です!
 このあたりは、当時の若手中心だった新伝承派に対するベテランの意地の爆発でしょうか!? 本当に凄みと気合に満ち溢れた演奏です!

B-3 And Then Again
 オーラスはアップテンポのビバップ風ブルースですが、このメンツですから、一筋縄ではいきません。
 早いフレーズを弾きまくるケニー・バロンは、マッコイ・タイナーのような力感溢れるスタイルから、瞬間的にセシル・テイラーへ接近遭遇していますし、デイブ・ホランドは重量感に満ちたベースワークながら、ブリブリの早弾きソロを披露♪ するとダニエル・ユメールはシャープなシンバルで絶妙のバックアップです。
 あぁ、ジャズって本当に良いですねぇ~♪ そういう喜びをダイレクトに感じてしまいます。

ということで、これは当時のジャズ喫茶を中心に、かなりヒットした名盤だと思います。正直言うと、自宅で聴くにはハード過ぎるかもしれませんが、それなりの音量が確保出来る環境にあれば、これを聴かない手はありません。

もちろんヘッドホーンやカーステレオでガンガン聴くという手も、有りです。

そしてジャズ喫茶では、ぜひともリクエストしてみて下さいませ。ちなみにリアルタイムではA面が定番でしたねぇ~。

それと、もちろんCD化もされていて、どうやらボーナストラックが1曲入っているようですが、例によって残念ながら持っていないので、詳細はご容赦願います。

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和みが欲しい

2007-05-20 19:36:53 | Weblog

あ~ぁ、公私共にゴッタ煮生活になっています。

全然、和めないというか……。

そこで本日はリラックスした、これを――

The Complete Unedited“Sweets at The Haig”1953 Recordings (Fresh Sound)

ハリー・エディソンは1930年代からカウント・ベイシー楽団の看板だったトランペッターで、ニックネームの「Sweets」が示すとおり、甘さを含んだ明朗闊達な音色がウリの人気者でした。

そしてアドリブスタイルは、もちろんスイング~中間派に属するとはいえ、シンプルなフレーズの積み重ねを、件の甘い音色でやられると、それはジャズ普遍の良さに満ち溢れていますから、たまりません♪ つまりモダンジャズ期以降も堂々の第一線で活躍した実力者です。

このアルバムは1953年のライブ音源から、元々は「The Inventive Mr. Edison (Pacific Jazz)」として発売されていた傑作ですが、もちろんオリジナル盤は直ぐに幻化……。

ですから、一時は日本盤も出ていたのですが、我侭な私は手を出すことをせず、どうしてもオリジナル盤が欲しかったにもかかわらず、結局は良い出会いが無いままに、今日に至っていました。

それがCD化されたんですからねぇ。しかも「The Complete Unedited」なんて、マニア心をくすぐられては、たまりません♪

あらためて録音年月日を記すと、1953年7月1日、ハリウッドにあったクラブ「ヘイグ」でのライブセッションで、メンバーはハリー・エディソン(tp)、アーノルド・ロス(p)、ジョー・コンフォート(b)、アルヴィン・ストローラー(ds) という隠れ名手が揃っています――

01 September Rain
02 `S Wonderful
03 Just You Just Me
04 Indiana
05 Pennies From Heaven
06 These Foolish Things
07 Two For Two

以上の演目は、全てが有名スタンダード曲ですから、ハリー・エディソン以下バンド全員が手馴れた雰囲気で、和みの演奏に撤しています。

特にはハリー・エディソンは、分かりやすいフレーズとアドリブ展開、さらにウリの甘い音色が絶好調♪

リズム隊もアルヴィン・ストローラーのメリハリの効いたドラムスを要にした好演で、主役を盛り立てています。特に「`S Wonderful」は熱演ですねぇ~♪ シンミリとした情感を漂わせた「These Foolish Things」も良い感じです。

気になる「The Complete Unedited」ですが、既に述べたように私はオリジナル盤を持っていないので、どこがどーなっているのか、分からないのが実状です。はっはっはっ、結局なんにも意味ないじゃないかぁ~。でも、まあ「The Complete Unedited」というメーカーのインフォを信じて、ひとり納得するところに、ジャズのマニアックなオタク道があるのでしょう。そこを鋭く突いたメーカーの勝利でしょうかねぇ……。

ということで、本日は曲毎のご紹介は端折っていますが、どこを切っても金太郎飴なんで、モダンスイング系の演奏が好きな皆様には充分すぎる名演集かと思います。

ただし快適過ぎて、聴き通すと飽きがくるかも……。半分ずつ聴いて気分は最高なのでした。

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ドルフィ、パウエル、ブッカー・アーヴィン!

2007-05-19 17:20:22 | Weblog

実家に帰ってもノンビリ出来ないのは、何故なんだっ!

もう、いい加減にしてもらいたいんですがねぇ……。

そこで憂さばらしに、こんなDVDを大音量で鑑賞しています――

Stockholm 1964・Antibes 1960 / Eric Dolphy (Impro-jazz)

あまりにも良い仕事ばっかりしてくれる Impro-jazz から、またまた歓喜悶絶のブツ!

なんとエリック・ドルフィがチャールス・ミンガスのバンドに雇われていた時代の映像です! しかもバド・パウエルと共演した奇跡のステージまでもが納められています!!!!!

もちろん映像はモノクロですが、おそらく初DVD化じゃないでしょうか!?

で、内容は前半が1964年の欧州巡業からオスロでの演奏ですが、これはリハーサル時にテレビ放送用に収録されたものでしょう。時間は30分弱です。

そして後半が、1960年のフランスはアンチーブジャズ祭でのライブで、これは1曲だけですが、バド・パウエルがゲスト出演♪ 音源だけは公式発売されていますが、映像はウルトラ級のお宝です――

★1964年4月13日、オスロ
 メンバーはジョニー・コールズ(tp)、エリック・ドルフィ(as,fl,bcl)、クリフ・ジョーダン(ts)、ジャッキー・バイヤード(p)、チャールス・ミンガス(b)、ダニー・リッチモンド(ds) という、ミンガスバンドが全盛期の顔ぶれです――

01 So Long Eric (First Version)
 ガランとした劇場内のステージで、テレビ用に集められたセッティングですから、椅子に座ったメンバーもいるわけですが、まずサングラスをかけたチャールス・ミンガスの凄みに圧倒されるでしょう。
 演目は当時の定番だったグイノリのハードバップですが、いろいろと即興的な仕掛けが施されていますから、油断ならないスリルが満点です。音だけの演奏は多く残されていますが、実際の映像が付いていると、あぁ、ここはこんな風にやっていたのか! と目からウロコ♪
 そしてアドリブパートでは先発のジョニー・コールズがマイルス・デイビスそっくりさんを軽く演じ、ジャッキー・バイヤードからクリフ・ジョーダンにバトンタッチ! さらにミンガス親分が短くも凄みのあるベースソロ! まあ、このあたりはメンバー紹介を兼ねているようなところもあります。
 しかし次に登場するダニー・リッチモンドがエキセントリックなやけっぱちドラムス! ギョロ目の表情とニヤリの笑いからは、ラリルレロ疑惑も漂いますが、続けて出るエリック・ドルフィーのアルトサックスは、メッチャ、カッコイイ驚愕のブレイク! するとダニー・リッチモンドが素っ頓狂な叫び声! いやはや、気持ちは分かりますけど、キメすぎじゃ~~~。これには流石のミンガス親分も苦笑い♪ 全ジャズファンが必見という、最高の名場面だと思います!
 全体では2分半ほどの演奏ですが、あまりのインパクトの強さに悶絶させられますよっ♪

02 Meditaions
 幻想的でエキセントリックな演奏ですが、なんとスタートした直後にミンガス親父の指示で一端停止! グチャグチャと雑談&打ち合わせがあって、演奏が再スタートするという、なかなかの内幕が楽しめます。
 で、まずはエリック・ドルフィーがヒステリックで浮遊感に満ちたフルートを披露♪ 背後を彩るバンドメンバーの緻密な演奏も流石です。
 さらにアドリブパートではバスクラリネットに持ち替えたエリック・ドルフィーが、これまた熱演です。あぁ、こんなことやってたら、若死にするようなぁ……。そんな思いを強くしてしまうのが哀しいところですが、本当に渾身の激演なんですねぇ。
 また逆にクールにキメるジョニー・コールズは、マイルス・デイビス顔負けの思わせぶりに撤して、好感が持てます。あぁ、動くジョニー・コールズが見られるなんてっ!
 それと映像的な面白さとしては、前曲に続いてヤバイ表情のダニー・リッチモンドが咥えタバコを落としたりするのは、ご愛嬌♪ 反対に短くなるまでタバコを指から放さないジャッキー・バイヤードは熱くないのかっ!? ギシギシの伴奏でメンバーを翻弄しまくりですがっ!
 その点、クリフ・ジョーダンは物分りが良いというか、バンド全体のバランスを大切にした正統派ブローには安心感がいっぱいです。黒人っぽい極小サングラスも妙にカッコイイですねぇ。
 演奏は大団円で、またまたエリック・ドルフィのバスクラリネットが大爆発! それに引張られてバンド全体が混濁していく展開に、ミンガス親分もニンマリです。
 それと途中で倒れてきたシンバルを直すエリック・ドルフィの姿は、映像作品ならではの楽しみでしょうね。
 
03 So Long Eric (Second Version)
 これは冒頭曲のロングバージョンです。
 まずミンガス親分のベースソロがリードしてテーマに入っていくところで、すっかり虜になってしまうでしょう。あぁ、このジャズ的なスリルとサスペンス♪
 アドリブパートでは、ジョニー・コールズが坊主頭にギョロ目の風貌ながら、またまたマイルス・デイビスの物真似をやってくれますが、いゃ~、実に良いですねぇ♪
 続くクリフ・ジョーダンも、なかなかにブッ飛んだフレーズを連発していますが、やや無理している雰囲気でしょうか……。
 しかしエリック・ドルフィーのアルトサックスは自然体で猛烈に咆哮します。緩急自在というか、異次元浮遊というか、全身全霊、渾身のアドリブは圧倒的なのでした。
 それとここでもダニー・リッチモンドがキレまくり! 最後に敲くだけ敲いて叫んだあげく、演奏を放り出していく様が圧巻です!

★1960年7月13日、アンチーブのジャズ祭
 このパートは約14分半で、画質もイマイチですが、バド・パウエルが出ていますから貴重♪ もちろん素晴らしい演奏です。
 メンバーはテッド・カーソン(tp)、エリック・ドルフィ(as)、ブッカー・アーヴィン(ts)、バド・パウエル(p)、チャールス・ミンガス(b)、ダニー・リッチモンド(ds) という、これも凄い顔ぶれですねぇ~~~。

04 I'll Remember April
 ビバップの定番曲ですから、バド・パウエル以下のメンバーも手馴れた部分があるかもしれませんが、しかし演奏は圧倒的です。
 テーマに続いてのアドリブパートでは、まずバド・パウエルが全く鍵盤を見ず、例の唸り声をあげながら「パウエル節」を全開させます。もちろんそれは、全盛期の凄みには及びませんが、ミンガス親分とダニー・リッチモンドの真摯な伴奏もあって、流石の輝きが随所に聴かれます。
 というか、なによりも動くバド・パウエルというだけで圧巻でしょう。
 ホーン陣では、まずテッド・カーソンが温故知新の熱演です。
 するとエリック・ドルフィーは唯我独尊のエキセントリック節! 基本はビバップながら、全く自分だけの世界に没頭していくのですが、そこで天空を仰ぐバド・パウエルの姿がインサートされる編集映像には感動させられます!
 さらに続けてブッカー・アーヴィンとエリック・ドルフィの壮絶バトルが展開されるんですから、もはや歓喜悶絶するしかありません。
 う~ん、ブッカー・アーヴィンの動く映像というのも、ウルトラ貴重ではないでしょうか!? この人は、どちらかというとスロースターターなんで、最初はエリック・ドルフィーに押され気味なんですが、後半ではアクの強さを発揮してブリブリギンギンに場を盛り上げていきます。しかも映像を見て初めて分かったんですが、ほとんどアクション無しに過激なフレーズを吹いているんですねぇ~! あぁ、この人も若死にしてしまうのが……。

ということで、これは本当に掛け値なしに凄い演奏&映像集です。

画質も前半はAランクですし、後半は少しボヤケも感じられますが、音質は問題無しですから、皆様にはぜひともご覧いただきたいと、サイケおやじは心からオススメ致します。

もちろん「リージョンフリー」ですよ♪

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南部風白人ジャズ

2007-05-18 18:37:59 | Weblog

毎度のことですが、ちょっと仕事が地獄になってきました。

そんな所へ関係者の訃報が入ったり……。

さあ、今日は実家へ帰ろう!

という支離滅裂なところで、本日は――

Gone Wiht The Wind / Dave Brubeck (Columbia / Sony)

モダンジャズでは一番人気だったディブ・ブルーベックのカルトテットは、もちろん優れたミュージシャンの集りだったわけですが、発売するアルバムもまた、好企画盤が多いという、優れたプロデュースに恵まれていました。

つまり単なる演奏集ではなく、アルバム全体をひとつの企画に纏めた作りにしていたんですねぇ~♪ これは同時代の他のジャズバンドでは、なかなか出来ないことだったと思います。

で、この作品はアメリカ南部に題材を求めていますが、もちろんそれは、白人社会から見たアメリカ人の心の故郷を狙っているようです。

録音は1959年4月22&23日、メンバーはデイブ・ブルーベック(p)、ポール・デスモンド(as)、ジーン・ライト(b)、ジョー・モレロ(ds) という黄金期のメンツです――

A-1 Swanee River (1959年4月22日録音)
 アメリカ大衆音楽の草分け的作曲家=スティーヴン・フォスターの代表曲を、ディブ・ブルーベックは思わせぶりを含めて軽快にアレンジ・演奏してくれます。なにしろドラムス&ベースの基本に忠実なスイング感が最高ですからねぇ~♪ ポール・デスモンドのクールなアルトサックスも、止まらない歌心を披露しています。
 う~ん、それにしてもジョー・モレロのブラシの気持ち良さ!
 ガチガチのディブ・ブルーベックのピアノとのアンバランスな相性の良さは、いう事無しというジャズの魅力だと思います。終盤の掛け合いなんか、見事過ぎますねっ♪

A-2 The Lonesome Road (1959年4月22日録音)
 ブルース味がついた哀愁の名曲ですから、ジンワリと演奏を始めるディブ・ブルーベックの手の内はミエミエなんですが、いゃ~ぁ、気持ち良くノセられてしまうんですねぇ~♪
 それはスゥ~と登場するポール・デスモンドのハスキー&ウェットなアルトサックスに凝縮され、その背後ではジョー・モレロの意外なほどハードなドラムスが素晴らしい限りです。
 しかも後を継ぐディブ・ブルーベックのじっくり構えたピアノ、それに寄り添うジーン・ライトのベースが存在感を示していますから、後半の緩急自在なバンドのノリは天下一品! もちろんここでも、ジョー・モレロのシャープなドラムスが天才性を遺憾なく発揮しているのでした。

A-3 Georgia On My Mind (1959年4月22日録音)
 説明不要の人気大名曲ですから、ここは素直に楽しんで正解という名演になっています。
 あぁ、モタレ寸前のスローグルーヴは、明らかに黒人系の演奏とは異なっていますが、むしろ如何にも白人というディブ・ブルーベックの硬質なピアノタッチや涼やかな熱気を孕んだポール・デスモンドのアルトサックスは、これもジャズの王道だと納得させられるでしょう。
 本当にいつまでも浸りきっていたい世界だと思います。夏の夜に冷たいビールとこの演奏があればねぇ~♪

A-4 Camptown Races / 草競馬 (1959年4月23日録音)
 これもスティーヴン・フォスターが書いた楽しい名曲ですので、このバンドもその路線を大切にした軽快なスイングに撤していきます。
 もちろんキモは強烈なジョー・モレロのドラムス! バスドラ、ブラシ、シンバルのキレは、もう最高と言う他はありません! あぁ、短い演奏なのが残念です。

B-1 Camptown Races / 草競馬 (1959年4月23日録音)
 さて、こちらは別バージョンですが、基本路線は変わりません。
 ただしポール・デスモンドが、かなり熱くなっていますし、ジョー・モレロはますます強烈なビートを敲き出しています。

B-2 Short'nin' Bread (1959年4月23日録音)
 これはジョー・モレロのオリジナル曲で、もちろん自分のドラムスを大活躍させていますが、そこにはアメリカインディアン風のリズムとかアフリカ土人のビートまでも取り込んだ変幻自在の恐ろしさが秘められています。
 しかし決して難しくないんですねぇ~♪ 当に天才が成せるワザ!

B-3 Basin Street Blues (1959年4月22日録音)
 一転してポール・デスモンドを主役に据えたモダンジャズ王道の演奏となります。
 曲は白人的解釈のブルース歌謡なので、バンド全体も十八番のノリというか、聴いていて安心感のあるスリル! つまり全て分かっている楽しみに満ちています。 

B-4 Ol' Man River (1959年4月23日録音)
 これも有名なミュージカル「ショウボート」からのゴスペル風な曲ですが、ここではかなりアグレッシブにアレンジされ、ジーン・ライトのベースが大活躍しています。
 しかし失礼ながら、ここでの主役はジョー・モレロ! というのが私の感想です。いやはや、実際、素晴らしいドラミングには絶句ですよ♪

B-5 Gone With The Wind (1959年4月22日録音)
 オーラスは軽快なモダンジャズ! ポール・デスモンドのクールなアルトサックスが冴えまくりです♪ もちろんジョー・モレロのシンバルも快適ですし、安定感抜群のジーン・ライトのウォーキングベースが手馴れた雰囲気です。
 しかしデイブ・ブルーベックは、良くスイングしているように見せかけて、要所で自分だけのガチガチなところを披露して、ニヤリとさせられます。

ということで、とても良く出来た作品だと思います。なによりメンバー全員が自信を持って自分達のバンドスタイルを貫いている姿勢が潔く、当に人気絶頂期の勢いと輝きが楽しめると思います。

そしてそれは、冒頭で述べたように、白人社会から見た南部やジャズの解釈ですから、ある意味で「強いアメリカ」を表現する意図があったのかもしれません。このあたりは「Columbia」という大手レコード会社ならでは目論みでしょうか。

個人的には映画「風とともに去りぬ」とか「夜の大走査線」に描かれた南部白人社会の実相、あるいはそこに蠢く黒人社会の苦しみ、そんなこんなを黒人音楽のジャズで表現した白人音楽家の居直りみたいなものを感じたりしますが、そんなことは、どーでもいいでしょう。

じゃ、書くなよ~、という声がはっきり聞こえますが、アルバムそのものは楽しく、哀愁もあるスマートなモダンジャズの決定盤だと思います。

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気分は夏の日

2007-05-17 17:52:26 | Weblog

いよいよ梅雨でしょうか?

世間は悲惨で妙な事件に満ちていますが、気分は夏にいっている私です。

そして――

夏の日の恋 / パーシー・フェイス管弦楽団 (CBSsony)


昼飯食った店の前に出ていた露天で、本日ゲットしたシングル盤です。

値段は50円♪ 盤質はそれなりでしたけど、ジャケットの懐かし感覚でOKです。

もちろん曲も演奏も好きですよ♪

イントロの、♪~ファンファンファン、ファンファンファン~♪ 最高です♪

これからの夏の日、毎朝、ターンテーブルの予定です。

あぁ、ちょっとジャズモードに入らない……。

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貴公子!?

2007-05-16 16:48:16 | Weblog

昨日はネットの通信障害のために、更新出来ませんでした。

最近、私用のPCが不調なので、また機嫌が悪いのか……。なんて思っていたんですけどねぇ。

ということで、本日は――

Flavours / Vito Giordano (Videoradio)

Vito Giordano については、例によって私は何も知らないのですが、ジャケ写では二枚目なんで、どことなく「ムードトランペットの貴公子」という雰囲気ですが、その実態はアート・ファーマー直系のスタイルにマイルス・デイビスのエッセンスが仄かに漂うという、なかなかの好ましさです。

しかも、このアルバムはピアノトリオのリズム隊を従えたワンホーン編成ですから、そのあたりの「味」をじっくりと楽しむ事が出来ますので、これぞ私的愛聴盤♪

録音年月日は残念ながら不明ですが、発売は2001年、メンバーは、Vito Giordano(tp,flh)、Paolo Di Sabatino(p)、Carlos Puerto(b)、Horacio Hernandez(ds) となっています。また演目は有名スタンダード1曲を除いて、全て Vito Giordano のオリジナル曲ですが、これがなかなかの佳曲揃い――

01 The Time Was
 躍動的なリズム隊をバックに、哀愁のテーマメロディを柔らかく吹奏する Vito Giordano は、完全にアート・ファーマーの世界です♪ まあ、物真似と言われれば、それまでなんですが、憎めないものが確かにあります。
 またピアノの Paolo Di Sabatino もハービー・ハンコック直系のスタイルながら、失敗を恐れない張り切りには好感が持てますし、重さも兼ね備えたシャープなドラミングを披露する Horacio Hernandez も良いですねぇ。
 私のような者には、こういう演奏こそが愛しいのでした。

02 Blue Sea
 なんかイントロを失敗したようなスタートから、擬似ボサビートで演じられる泣きのテーマメロディが、たまりません♪ あれっ? 我国に似たようなニューミュージック曲があったのでは……。
 全体的には緩いリズム隊ゆえに緊張感が無い演奏なんですが、それが妙に心地良いという、些かトホホではありますが、Vito Giordano の歌心は素晴らしいと思います。

03 Minton's
 これが軽快なハードバップの名曲・名演になっています。調子が良くて「泣き」を含んだテーマメロディが、まず最高ですし、溌剌としたリズム隊と軽妙に歌う Vito Giordano のコンビネーションが、ジャズの楽しみに満ち溢れています。
 あぁ、こんなのブラインドフォールドに出されたら、アート・ファーマーと答えて疑心暗鬼になっちゃいますねぇ~♪ そして Paolo Di Sabatino のピアノもクールで熱い!

04 Letter For My Daughter
 一転して、スローで優しさ溢れる演奏です。
 もちろん Vito Giordano が書いたテーマメロディは、どっかで聞いたことがある雰囲気なんですが、やはり作曲能力と自己の演奏スタイルが見事に合致した証でしょうねぇ、地味ながら、キラリと光る出来栄えになっています。
 あぁ、素敵な歌心♪ いつまでも浸りきっていたい世界が現出されているのでした。

05 Body And Soul
 このアルバム中で唯一のスタンダード曲ですが、これを軽快なラテンビートで変奏するバンドの和みモードが、最高です。
 それは4ビートも巧みに織り交ぜた旨味のある展開ですから、これぞ、スリルと安らぎが交錯するモダンジャズ王道! 淀みなくアドリブしまくる Vito Giordano は、決して超一流ではありませんが、完全に私の好みです。
 また、いささか荒っぽいリズム隊も存在感があると思います。ピアノの Paolo Di Sabatino は自分で楽しんでいる雰囲気でしょうか? 本当に憎めない奴です。

06 Zagara
 これも Vito Giordano のオリジナルですが、ミディアムスローで展開される、なかなかの名曲です。もちろん自在に歌う Vito Giordano のトランペット(フリューゲル?)は絶品の泣き節♪ ややハスキーな音色にもグッときます。
 また、ちょっと聴きにはバラバラなリズム隊が、実は強力なグルーヴを弾き出しているあたりも侮れず、特に Paolo Di Sabatino が、ここではシダー・ウォルトンやビル・エバンスに憧れた本音を吐露♪ 全く微笑ましい限りです。

07 South Department
 最初っから痛快なハードバップを狙ってハズした雰囲気ではありますが、なんだかバラバラの演奏がひとつに収斂していく、1分過ぎあたりからのグルーヴが強烈です。
 あぁ、やっぱり狙っていたのかっ!? と気づいた時には、もう遅いというか、もう完全にこのバンドの虜になっているんですねぇ~♪ やっぱりこれは、痛快な演奏でした。特にリズム隊の頑張りは、やや走ってしまう部分もありますが、熱気がありますし、終盤での丁々発止はバンド全員で盛り上げていこうという意思表示が鮮明で、本当に気持ちが良いです。

08 Dry Land
 オーラスは1970年代のジャズ喫茶では御用達のような、アフロビートのモード曲ですが、テーマメロディの哀愁度は天下一品! しかも Vito Giordano がミュートで迫りますから、マイルス・デイビス味も強く、しかも王道路線で泣きまくりです♪
 あぁ、私はこんなジャズを聞きたかったという思いを強くします。

ということで、これも無名の隠れ盤ではありますが、見つけたら即ゲットを強くオススメ致します。ただし非常に「味」の世界の仕上がりです。正直、アート・ファーマーを聴いた方がマシと思われる皆様もいらっしゃるでしょう。

しかし、それでもこのアルバムは素敵です! と本日も断言モードで終了致します。

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ヒックスとクラーク

2007-05-14 18:11:18 | Weblog

PC、なんとか復調、一安心です。

しかしデータが一部壊れているような気配……。

まあ、それはそれとして、本日は――

Music In The Key Of Clark / John Hicks (High Note)

ジョン・ヒックスといえば、マッコイ・タイナーを追う一番手のような、暗く饒舌なモード節を得意とした黒人ピアニストですから、所謂ジョン・コルトレーンの世界の継承・再現を狙うバンドには不可欠の名手です。

しかし、このアルバムは、なんとその対極に位置するようなソニー・クラークの世界にトリビュートした企画盤! これだけで、ちょっとワクワクと驚愕です。

さて、そのソニー・クラークは、我国でこそ人気ダントツの黒人ピアニストですが、本国アメリカでは知る人ぞ知るの存在だったようです。なにしろ積極的にソニー・クラークを録音していたブルーノートの主宰者=アルフレッド・ライオンですから、日本でのソニー・クラーク人気には愕いていたという伝説があるほどですからねぇ……。

まあ、ソニー・クラークの作曲やアドリブフレーズから滲み出てくる仄かな気分はロンリーな感覚とか、泣きのツボの刺激の上手さあたりは、当に日本人好みでしょう。この感覚が毛唐にわかってたまるかっ! という粋がりすら、私にあったりします。

で、この作品の録音は2001年3月18日、メンバーはジョン・ヒックス(p)、ドュウエイン・ドルフィン(b)、セシル・ブルックス三世(ds) というシブイ面々のピアノトリオが主体です――

01 Pocket Full of Blues
 ジョン・ヒックスのオリジナルですが、まるっきりソニー・クラークのアドリブフレーズから引用したようなテーマメロディが、まず素敵です。
 もちろん快適なテンポで演奏される全篇には、ソニー・クラークの味わいがたっぷり♪ あぁ、ジョン・ヒックス、あんたはいったい……。いやはやなんとも、調子の良いグルーヴと一抹の泣きを含んだアドリブは、小手調べとは言いがたい魅力があります。
 またベース&ドラムスもハードバップ感覚を大切にしていますので、これ1曲で気分は最高です。

02 My Conception - Prelude
03 My Conception

 「Sonny Clark Trio(Time)」や後年の発掘盤「My Conception(Blue Note)」に入っていた、これも哀愁の名曲です。
 ここではチャプター分けされていますが、ほとんど繋がった演奏で、前半のソロピアノ部分は「Sonny Clark Trio(Time)」でのソニー・クラーク自身のソロを意識したものでしょう。ジョン・ヒックスは、なかなかの思わせぶりで、ジーンとしますよ。
 そして後半はピアノトリオとなって、ミディアムテンポの快演♪ 次々に溢れ出る哀愁のアドリブフレーズは、オリジナルのテーマメロディを心を込めて解釈したと思い込んでも良いでしょう。何度聴いても本当に快感で、これがジャズを聴く喜びだと痛感させられます。あぁ、出来すぎの歌心!
 もちろん、でしゃばらないベースとドラムスも最高で、特にセシル・ブルックス三世のブラシは流石です。
 ズバリ、この曲だけで、このCDは価値があると断じます。

04 Cable Car
 ソニー・クラークが西海岸でバディ・デフランコのバンドに雇われていた時代のオリジナル曲です。
 それはラテンビートを基本にした楽しさがミソでしたが、ここでは擬似ボサロックで演奏され、オリジナルのテーマメロディを上手く変奏するジョン・ヒックスの器用さが堪能出来ます。もちろん歌心も満点♪
 ただし、ちょっと全体的に隙間が目立つというか、もう少し熱気が欲しいのが本音です。

05 Sonny's Ballad
 はて、これはどのアルバムに入っていたのでしょう?
 クレジットはソニー・クラークになっている泣きの美メロで、ここではジョン・ヒックスが素晴らしいソロピアノ演奏を聞かせてくれます。う~ん、本当に「ソニクラ節」しか出てこないんですよっ♪

06 Minor Meeting
 ソニー・クラーク自身が何度もレコーディングしている説明不要の名曲ですが、ここでは変態ジャズロックにアレンジし、新鮮味を狙っているようです。
 う~ん、狙いは分かるんですが……。こういう曲こそ、真っ向勝負して欲しかったですねぇ……。

07 I Deal
 これもソニー・クラークが西海岸時代に書いたオリジナル曲でしょう。確かハワード・ラムゼイのライトハウスオールスターズ(Contemporary)での演奏が残されているはずです。
 で、ここでのジョン・ヒックスはミディアムテンポで素晴らしい快演を聞かせてくれます。あぁ、この仄かのブルース感覚と泣き! タメとモタレのピアノタッチもソニー・クラークをじっくりと研究した成果と言うよりも、「愛」でしょうかねぇ♪ それでいて、持ち前の歯切れの良さも存分に披露しているんですから、流石だと思います。

08 Sonny's Mood
 これも説明不要というソニー・クラークのオリジナル曲で、原典は「Dial S For Sonny(Blue Note)」なんですが、そこではグルーヴィなハードバップだった演奏を、ここでのジョン・ヒックスはソロピアノでジンワリと聞かせてくれます。
 う~ん、これも肩透かし気味ではありますが、しかしソニー・クラークの持ち味がちゃ~んと滲み出ているのですから、ちょっと愕きなのでした。あぁ、この暗いスイング感!

09 Sonny's Crib
 ソニー・クラークのリーダー盤「Sonny's Crib(Blue Note)」のタイトル曲ですから、嬉しくなってきます。しかもここでは絶好調のトリオ演奏! ジョン・ヒックスはソニー・クラークに拘らずに自分の「節」も交えての快適スイングですし、キメるところはキメるというドラムス&ベースの好サポートも見事です。
 ちょっと軽めの仕上がりではありますが、気に入っています。

10 Angel With a Briefcase
11 Clark Bar Blues
12 Sonny Side Up
13 Sonny Day

 以上の4曲は全てジョン・ヒックスのオリジナルで、曲タイトルからも推察出来るように、ソニー・クラークに捧げきった演奏を聞かせてくれます。
 ただしそのほとんどの部分がソロピアノなんですねぇ……。
 そこが物足りなくはありますが、しかし「Clark Bar Blues」は途中からドラムス&ベースを従え、黒くてグルーヴィな展開を聞かせてくれますから、たまらんですよっ♪
 またオーラスの「Sonny Day」における気分はロンリー感覚も、捨てがたい魅力がありますねぇ。

ということで、全てが素晴らしいアルバムでは無いんですが、実は密かに愛聴している1枚です。特に「My Conception」や「I Deal」はグッとくる演奏で、ジョン・ヒックス中毒になりそうな……♪

ですから、個人的なオススメ曲順は「2・3」→「9」→「7」→「13」ですが、頭っから聞き流しても、いつしか惹き込まれて抜け出せない世界が展開されているのでした。

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皆様へ

2007-05-13 18:44:42 | Weblog
PCトラブルの連続で、更新出来ませんでした。
ネットへの接続も断続的で、これはどうも、強風の影響でしょうか?

本日は逼塞、出張で仕入れてきたネタを楽しみます。
ご容赦下さい。
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本領発揮

2007-05-12 18:25:40 | Weblog

はははっ、高野連のお偉方が文部大臣から苦言を♪

流石の文部大臣も、今回ばかりは世間並みの思考になっていたというか、当たり前の事を言って、感心されるんですから、高野連も罪が深いというか……。

ということで、本日は――

Deligtfulee Morgan / Lee Morgan (Blue Note)

名盤・人気盤が多いリー・モーガンのアルバム中、これも飛びっきりの傑作です。

これが製作・発売された1960年代後半という時代は、はっきり言ってジャズはロックやR&Bに押され気味でしたが、ジャズはジャズなりにフリーとかジャズロックに活路を見出して、欧州や日本ではカッコイイ音楽であり続けていました。

特に日本ではジャズ喫茶という独自の文化がありましたから、このアルバムもそこから生まれた人気盤だったと思います。と言うのは、このアルバム自体が1970年代に入ると入手困難になっていたからです。もちろん日本盤もなかったと思います。

そのあたりは、ハンク・モブレーの「ディッピン(Blue Note)」と境遇が似ておりますし、また内容の快楽性とか痛快さも、然りです。

録音は1966年4月&5月、メンバーは演目によって異なります。

まず4月のセッションでは、リー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、マッコイ・タイナー(p)、ボブ・クランショウ(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) を核として、数名のブラス&リード奏者が加わっており、アレンジはオリバー・ネルソンが担当していますが、あえて「数名」と書いたのは、この部分のメンツに諸説があるからです。

そして5月のセッションは、リー・モーガン(tp)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、マッコイ・タイナー(p)、ボブ・クランショウ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) というお馴染みの面々です――

A-1 Ca-Lee-So (1966年5月27日録音)
 ラテンビートを使ったリー・モーガンの楽しいオリジナルです。
 まず息の合ったリズム隊が作り出すイントロ、それ続くテーマが最高にウキウキしてきます♪
 アドリブパートでは先発のリー・モーガンがオトボケとスリルを上手く融合させた絶妙の展開を聞かせるという、流石の名演です。もちろんタメとツッコミの「モーガン節」が溢れんばかりの躍動感ですねぇ♪
 するとジョー・ヘンダーソンも、噴出し笑いのようなスタートから少しずつ自分のペースに持ち込んで、独特のウネウネクネクネ♪ ちょっと気持ち悪いほどの妙演だと思います。
 しかしマッコイ・タイナーは生真面目です。ラテンビートの楽しさを追求しつつも、けっしてテーマから外れようとしないあたりは、如何にもいう感じで、憎めません。
 もちろんビリー・ヒギンズ&ボブ・クランショウは、この手のブルーノート・セッションではお馴染みの快楽追求型のリズム隊として、ここでも秀逸です。

A-2 Zambia (1966年5月27日録音)
 これもリー・モーガンのオリジナルで、新主流派を装ったハードバップになっています。刺激的なテーマが黒っぽいですね。
 しかしアドリブパートはスピード感に溢れた展開となり、まずジョー・ヘンダーソンが本領発揮のウネウネ節! 高音部では猫の鳴声のような得意技を披露し、低音部ではタイトな音使いで好調さをアピールしています。
 もちろんリー・モーガンも負けじと大ハッスル! こちらも十八番のフレーズを淀みなく繰り出して、場をダレさせません。ビリー・ヒギンズの調子の良いドラムスも最高です♪
 またマッコイ・タイナーは当時、ジョン・コルトレーン(ts) のバンドを辞めた直後で、しかも急に仕事が無くなっていた苦闘時代に突入……。その所為でしょうか、ここでは何とか活路を見出そうとしているような、なかなか必死さが滲み出ていると感じます。
 
A-3 Yesterday (1966年4月8日録音)
 ビートルズの、というよりも地球音楽の代表として説明不要の名曲に、オリバー・ネルソンがイナタイ様なアレンジを施し、リー・モーガンが朗々と吹きまくった快演です♪
 あぁ、このテーマ吹奏の屈託の無さ! アドリブパートの潔さは居直りではなく、唯一無二の素晴らしさだと思います。背後を彩る分厚く柔らかいブラス&リードの響きも良いですねぇ♪
 しかもウェイン・ショーターが、また実に良いんです。意味不明のフレーズの連なりから、突如、断片的に浮かび上がるテーマメロディの美味しさが、もう最高です♪
 それとマッコイ・タイナーの意外な物分りの良さも侮れません。個人的にはマッコイ・タイナーにはラムゼイ・ルイス(p) の路線も「有り」だったかなぁ……、と思う瞬間まであるのでした。

B-1 Sunrise, Sunset (1966年4月8日録音)
 これもオリバー・ネルソンのアレンジが入った演奏で、哀愁のテーマが力強く変奏され、なかなかハードバップな仕上がりになっています。
 アドリブパートでは、まずウェイン・ショーターが妥協しない姿勢を貫いておりますが、楽しさも忘れていません。続くリー・モーガンも同じ路線を踏襲していますので、全体としてはちょうど良い塩梅でしょうか。
 その中でマッコイ・タイナーは精一杯の力演! フィリー・ジョーのドラムスも違和感ギリギリで、好感が持てます。

B-2 Nite Flite (1966年5月27日録音)
 私が大好きなリー・モーガンのオリジナルで、痛快至極なハードバップです。テーマメロディに秘められた仄かな暗さとミステリアスな黒っぽさが最高なんです♪
 もちろんアドリブパートも素晴らしく、まずはリー・モーガンが絶好調! するとジョー・ヘンダーソンが、ミョウチキリンな変態節を連発してくれます。
 あぁ、ビリー・ヒギンズのビシバシのドラムスとの相性が、如何にもブルーノートです♪ マッコイ・タイナーもジョン・コルトレーンのバンド時代のような音符過多なスタイルで突進するんですから、たまりません。終盤でボブ・クランショウのツッコミにシドロモドロになって、ラストテーマに戻るあたりのバンドの勢いは微笑ましい限りです♪

B-3 The Delightflu Deggie (1966年5月27日録音)
 ちょっとした思わせぶりから始まるリー・モーガンのオリジナル曲で、アフロっぽい哀愁のテーマがジンワリと泣かせます。
 このあたりは先発でアドリブを展開するウェイン・ショーターにとっても、百も承知というか、地味ながら、全く薬籠中の名演になっています。
 もちろんリー・モーガンは、ウネリのあるリズム隊と一体化した素晴らしいグルーヴと絶妙のアドリブ展開です! 最後に余韻を残してマッコイ・タイナーにバトンタッチするあたりも、上手いですねぇ~♪
 そのマッコイ・タイナーにしても、これは待ってましたのお膳立てだったのでしょう、短いながらも、後のアフロモード演奏に近い出来を示しています。しかも膨らみのあるグルーヴまで生み出しているのですから!
 それはもちろん、ラストテーマをさらに味わい深いものにしているのでした。

ということで、これは聴き易くて骨のある作品だと思います。

リー・モーガンという人は天才だけあって、どちらかと言うとムラっ気が目立つ演奏も少なからず残していますが、このアルバムに関してはノー文句でしょう。

ちなみにCD時代に再発された時にはボーナストラックが幾つか入っていたようですが、持ってないのでご容赦願います。友人の話では、それもけっこう良い演奏みたいなんで、ちょっと気になってはいるのですが……。

ご存知のように、リー・モーガンは1972年に衝撃的な死を迎えています。そして、このアルバムあたりを聴いていると、来たるぺきフュージョン時代にどんな演奏をしてくれたか、想像しては悲喜こもごも……。

シャレの効いたアルバムタイトルとジャケ写の大らかさが、なんともいえません。

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なんとか帰る

2007-05-11 20:16:24 | Weblog

いやはや、交通機関が乱れまくって、ようやく帰ってまいりました。

疲れたというよりも、やるせない気分とでも申しましょうか……。

さて今回の土産は、海賊盤DVD、かなり仕入れてしまいました。

もちろん、いけないんですが、なにせ公式盤が無い作品が多いですからねっ。

収穫については、ほとぼりがさめた頃に書きたいと思います。

ということで、本日はここまでで、ご容赦願います。

では。

 

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