
後藤新樹訳.図書館で借読したのは 1990/10 埼玉福祉会刊の大活字本シリーズ上下だが,写真は 1986 年の旺文社版.
受験時代に旺文社の大学受験ラジオ講座でハリス先生 (1916-2004) の英作文の講義を聞いていた.高校生はおろか高校の英語教師にも書けなような英文で,受験向きだったかどうか.しかし英字新聞記者の作文に触れることには意味があったと思う.
著者の父は新聞特派員として来日したイギリス人,母は日本人.父の勤務先のハリウッドで暮らしたりするが,日本に戻った後父を喪い,母方の日本国籍を得る.開戦とともに日本国籍があるのに外国人収容所に拘束され,そこから解放されたときに待っていたのは徴兵検査,ひきつづき赤紙であった.そのまま二等兵として徴兵され北支で終戦を迎える.
身長こそ日本人並だが外見は白人そのものだから,当然過酷な扱いを受けるが,意外に素直に日本兵化したなあという印象も受ける.終戦時には伍長に昇進している.人間的な陰影は分からないが,健全な常識人の強さたくましさであろう.
敗戦を知ったときの受け止め方は至って冷静だが,そういう日本兵も多かったと聞いている.
戦後編もおもしろい.
重苦しい戦争体験ものという感じはない.戦後 40 年も経っていたので,客観的に書く余裕があったのかもしれないが,著者のポジティヴな性格のためと思う.
著者は日本語は喋れるが読み書きはできなかったというが,なぜ学習する気にならなかったのかが不思議.
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