初年級の理科系大学生に音律と音階の講義をする機会があった.多少は小難しい話も...と思ってフーリエ変換を全部で 15 分ほどで片付けることにした.16トンの時代には,手計算で,大学院では手回し計算機でフーリエ係数をえっさえっさと計算したが,今ではパソコンにデータを放り込めばいいと言って.Mathematica を紹介した.大学がキャンパスライセンスを取得していて,学生個人のPCでも使うことができるのだ.
これは講義で用いたスライドの1枚.左上の16点からなるデジタルデータから,Mathematica を使えば,右のように棒グラフ?でフーリエ係数の絶対値を表示することができる...ここでやめてしまえばいいのだが,説明し出すときりがない.
フーリエ係数として得られるのは,直流成分,sin の係数,cos の係数で,入力が 16 点なら全部で 16 の数値のはず.右のグラフの横軸は1から16までの目盛りがあるが,じつは 9 の点線に対して左右対称である.ここには 9 点の情報しかない.
じつは変換結果として,グラフで示した「絶対値」と,「位相角」を対にして扱うべきである.のこりの情報は位相角にある.しかし慣例により ! 位相角は無視するのだ...というようなことを言い出すと,疑問が疑問を呼び,議論が議論を呼びそう.結局,いちおう問題は指摘しておいて,フーリエ変換を「使いこなすには複素関数論の知識が必要」とごまかして次に行くことになった.
フーリエ変換だけなら,Mathematica よりもっと与し易いソフトがありそうだ.
そもそもイマドキの学生には,スマホは使いこなせるが,PC はダメという子が多い.ある意味では一昔前より退歩している.しかし一方ではスマホ側からの進歩があり,いわゆる簡易 Mathematica のAndroid版が,Web上では無料で利用もできるという.
数式処理に限らず,原稿作り・デザイン・音響遊びなどスマホだけで PC なしでどこまで行けるか,考える必要がありそうだ.