Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ベートーベンは嫌いだけど...

2014-02-09 08:29:37 | 新音律


ベートーベンが嫌いだった.あの押し付けがましい音楽も去ることながら、運命とか英雄とかいうタイトルとか,音楽室の髪を振り乱し苦虫をかみつぶした肖像画とかがおぞましいのだ.しかしこれは,全聾の作曲家のヒロシマ交響曲をもてはやす感情の裏返し,実は同じことである...と今回すこし反省.

ベートーベンは嫌いだったが,昔 研究所で敬愛する先生が,しきりとクライスラーのベートーベンとおっしゃるので,聞いてみたらバイオリン協奏曲が好きになってしまった.一言で言えば楽天的な曲に感じられたのだ.クライスラー盤とは,レオ・ブレッヒ指揮,ベルリン国立歌劇場管弦楽団との1926年の演奏.昭和を飛び越え,大正時代の録音.頼りない音から古き良き時代の情緒がにじんでいる.これを聞いて,「ロンディーノ」を聞くと,やはりベートーベンの曲に思えてしまう.

...と言うより,クライスラーはロンディーノのように,自作曲のように,協奏曲を弾いたというべきかもしれない.同じ曲でも,ハイフェッツ - トスカニーニ NBC の組み合わせ (1940) は,演奏時間 (クライスラー盤 44 分に対し) 38 分.緊迫感があふれ,ソロ楽器対オーケストラのチャンバラという感じ.

昔々のバイオリニストは個性的だったが,それに負けないのがこの動画のコパチンスカヤ嬢.ここでは第3楽章がすこし聞けるだけだが,カデンツァも自作とか.音符もあちこち勝手に変えて弾いているのだそうで,この方,ジャズを演っても良いのでは?

追記(2/10)
FB にいただいたコメントで思い出したのだが, ベートーベン自身がこのバイオリン協奏曲を,オケ部分はそのままで,ピアノ協奏曲として発表している.バイオリンと同じキーのためか,きんきんと聞こえるように思う.解説によれば,ちゃんとした協奏曲として評価すべきらしい.コパチンスカヤのカデンツァはピアノ版を参考にしているようだ.
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この曲 だれの曲 ?

2014-02-07 08:09:42 | 新音律


佐村河内守という作曲家には別にゴースト作曲家がいたのだそうだ.
だれが作曲しようと,楽曲が良ければいいじゃないか.こうした問題で抹殺されてしまうような曲なら,所詮マスコミがでっち上げた話題曲にすぎない...とか言って,問題の作品群には全然関心がなかったんだけど.
ちなみに,JASRACが「権利の帰属が明確になるまで作品の利用許諾を保留」しているため,演奏も放送もできないのだそうだ.

代作した新垣隆氏は現代音楽の作曲家で,(交響曲のようなクラシックといえども) 商業音楽と割り切っていたのではないだろうか.

佐村河内守は現代のベートーベンと言われたそうだ,しかし Wiki によれば,ベートーベンの場合も全く聞こえなかったわけではない,というのが現在の定説らしい.
動画は史上最高のバイオリニストのひとり,フリッツ・クライスラーによる「ベートーベンの主題によるロンディーノ」.

クライスラーは演奏旅行先にある歴史ある図書館などで埋もれていた作品を発掘したと称して,十曲以上の自作曲を演奏・出版した.「ブランド」で音楽を聴く輩への皮肉だろう.「作品はすばらしいが、演奏は大したことがない」とけなした評論家もいたらしい.後年「自作曲ばかりじゃ聴衆が飽きると感じるだろうし,またクライスラー作曲とあると他のヴァイオリニストが演奏しにくいから、他人の名前を借りたのさ」と語ったそうだ.

では,このロンディーノは?? http://josephsmithpianist.com/wp-content/uploads/2012/10/Kreisler.pdf に,同時代のピアニスト,レオポルド・ゴドフスキによる考察を発見.ヒントくらいは得たかもしれないが,イマ的感覚では純然たるクライスラーの作曲と楽譜を見て思った.有名な「美しきロスマリン」も,クライスラーは,はじめは Lanner という作曲家の作品として発表したと,これを読んで初めて知った.
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ビブリア古書堂の事件手帖 (5)

2014-02-05 08:31:33 | 読書
三上延 「ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~」メディアワークス文庫 (2014/01).

少し迷ったが結局購読.
このシリーズは,言うなれば男女関係・親子関係が縦糸,古書にまとわる日常の謎を横糸とする連作短編集(ただし長編もひとつ)だが,しだいに縦糸が太くなってきたようだ.「繋がりの時」というサブタイトルがこのことを暗示しているのかもしれないが,常連でないと入れないお店みたい.

そのためにミステリ味も希薄化しつつある.
僕的にはブラックジャックの章が良かった.最後にX本屋が出てくるところで高得点 !

今までと違って,各「章」の後に「断章」があって,異なる視点から,すぐ前の章の事件が解説されるしかけ.プロローグとエピローグにも,しかけがある.
ヒロインに危機迫る! 次回をお楽しみに,という終わり方だが,(6) が出ても読むかどうかは微妙.
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耄碌ジャズ・恍惚ジャズ

2014-02-03 08:27:09 | ジャズ


先日,「酩酊ジャズ」というブログを書いたのだが,酔っぱらい演奏の特徴 - くどい,間違える,リズムが不安定,独りよがり,etc - は,だいたい老人の演奏にも当てはまる.歳をとると言うことは,慢性アルコール中毒のようなものなんだろうか.

しかし酩酊ジャズと異なり,老人のジャズに特有の現象もいくつかある.
いつだったか,京都のライブハウスに入ったら,お年寄り主体のバンドで.悠揚迫らぬ,いい雰囲気であった.しかし,しだいにテンポが遅くなる.学生バンドと全く反対の現象! そのうち,フロントの ts 爺さんは,背中が痛いとか言って帰ってしまった.

もちろん,歳をとってもちゃんと演奏し,聴衆に感銘を与える方もたくさんおられる.しかし,出来不出来のムラは激しいようだ.
老大家のバンドによるライブでは異常に休憩時間が長かったりする.
某老大家は,まことに調子良く演っておられたが,後テーマに戻るときになって,サイドマンに「この曲なんだっけ,え? え?」と聞いていた.
これとは別に,曲が分かっていて,演奏もできるけれど,タイトルが分からないということはもっと多い.これはヒトの名前が出て来ないのと同じことだろう.

落語とジャズは似ている.数年前,テレビで自分より2歳上の柳家小三治が,出来る噺がいくつもなくなったと言って嘆いていた.ジャズの場合も,歳を取ると古い曲は忘れ,新しい曲は覚えられなくなる.老眼で楽譜なんかわからない...とか言っちゃって,若いときも楽譜は読めなかったんだけど,でも見えた.

ファンの立場になると,名人が目の前で何か演ってくれるだけでありがたいと感じることもある.
古今亭志ん生は高座でいねむりをしたそうだが,ジャズは集団演奏なので,こういう場面は共演者がカバーしてしまうかも.

タイトル曲は「夢見る頃を過ぎても」.歳取ってからのことを思いやる内容だが,やたらキスを連発するあたりはやはり若い人たち (正確には,今は亡き方々の若かりし日の) の演奏だ.字幕と異なり.Tempo Jazz Men (1946), Dizzy Gillespie (trumpet, vocals) Lucky Thompson (tenor saxophone, vocals) Milt Jackson (vibraphone, vocals) Al Haig (piano) Ray Brown (bass) Stan Levey (drums) の演奏と思う.


宣伝です : 私たちの著書
小方・高田・中川・山本 著
「視て聴くドレミ - フーリエ音楽学への招待」大阪大学出版会(2013/03).
をよろしくおねがいします,なお,この本を立ち読みのノリで視聴できるムービーを YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=I43aZi6otBY
にアップしました.
コメント (2)
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アンディ・ウォホールの絵本2册と統計学の本 @ 古書店

2014-02-01 08:57:49 | お絵かき


広島の古書店で2冊で900円.猫は自分用,靴は J 子用.
見開きの左に絵,右に大小のフォントを用いた散文詩.
絵はカラーが大半だが,モノクロもちらほら.
巻末に出典と原画の画材とサイズ.

我が貧しい認識では,マリリン・モンローとキャンベル缶だけだったが,彼はちゃんとイラストも描けるのだった.

猫はみな雌猫に見える.


古書と言えば,尾道で
S.S.ウィルクス, 林 周二 訳,新版「初等統計解析」東京大学出版会 (1955)
を発見.林先生には,ありがたくも「可」をいただいた覚えがある.講義は面白かったが,この本に言及されたことはなかったと思う.いまさら統計の復習をする気はないのだが,105 円という値段に釣られて購入.
検定のあたりは簡単.ポアソン分布にラザフオード,ガイガーが登場.全体にパソコンも電卓もなかった時代の教科書という感じがなつかしい.

アマゾンで見たら 4000-6000 円が古書の相場らしい.せどり男爵気分になった.
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reading

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