【社説】:①消費税10%表明 実施へ首相の覚悟が問われる
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:①消費税10%表明 実施へ首相の覚悟が問われる
社会保障制度を全世代型に転換するため、安定した財源を確保する。その決意を明確に示したものと言えよう。
安倍首相が15日の臨時閣議で、消費税率を来年10月1日に8%から10%へ引き上げる考えを正式に表明した。
「あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないように全力で対応する」とも述べた。
景気は緩やかながら、息の長い回復を続けている。首相が予定通り消費税10%を実施する方針を示したことは評価できる。
高齢化で増大する社会保障費を支えるには、景気に左右されにくい消費税の税率引き上げが避けられない。子育て支援など、若年層向けの社会保障を充実させるためにも、新たな財源が要る。
米中の貿易摩擦や新興国経済の変調など、先行きの懸念材料はある。だが、今後、リーマン・ショック級の深刻な景気悪化が起きない限り、確実に消費増税を実現しなければならない。
首相が早めに増税実施を明言した背景には、関係機関や民間事業者による準備を促す狙いがある。増税後の消費落ち込みや、小売店などでの混乱を回避したい。
過去には、消費増税前に買い物を済ませる「駆け込み需要」が盛り上がり、増税後に反動による消費低迷が長引く例が多かった。
こうした教訓を踏まえ、政府は増税ショックを緩和する経済対策を打ち出す方針だ。住宅購入の助成拡大や自動車課税の軽減などが柱になると見られる。
中小事業者に配慮し、期間限定で国の補助による「2%ポイント還元」の導入も検討している。
中小小売店でクレジットカードなどのキャッシュレス決済をした場合には、増税分と同じ2%のポイントを付与し、次回以降の買い物で使えるようにする。
経済の効率を高めるキャッシュレス決済の拡大を後押しする目的もあるのだろう。
実現すれば、消費者の負担は軽くなるが、中小事業者にキャッシュレスの機材をどう普及させるかなどの課題も残る。対象に含める決済の線引きや、具体的な還元方法をどうするのかも難題だ。対応を急がねばならない。
他にも消費下支えの妙手はないのか。官民で知恵を絞りたい。
今回の増税では、食品と定期購読される新聞に、8%の軽減税率が適用される。小売店によるレジの改修や買い替えなど、事前準備は遅れている。政府は周知徹底に努める必要がある。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2018年10月16日 06:06:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。