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路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説①】:受験生ら刺傷 コロナ禍 孤独の危うさ

2022-01-18 07:49:50 | 【事件・未解決・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・オウム事件・旧統一教会を巡る事件他】

【社説①】:受験生ら刺傷 コロナ禍 孤独の危うさ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:受験生ら刺傷 コロナ禍 孤独の危うさ 

 理解に苦しむ事件がまた起きた。大学入学共通テスト初日の十五日朝、東京都文京区の東京大前の歩道で、受験生ら三人が刃物で切り付けられた=写真。うち一人は重傷を負った。
 
 殺人未遂の疑いで逮捕された高校二年の少年(17)は前夜、名古屋市内の自宅から夜行バスに乗り、上京した。包丁やナイフ、可燃性の液体を所持し、事件の直前、地下鉄の車内や駅構内で放火を試みた形跡もあった。
 
 少年は「医者になるため東大を目指して勉強していた。成績が振るわず、医者になれないなら事件を起こして、死のうと思った」と述べたという。不特定多数の人々に対する明確な殺意と周到な準備は、大阪・北新地のビル放火殺人事件を彷彿(ほうふつ)させる。
 
 少年にとって受験はまだ来年だ。成績は優秀で、学業が大きく遅れていたわけではないと級友らは話している。なのに、なぜ、そこまで思い詰めたのか。まだまだ未解明な点が多い事件だが、コロナ禍の影響も考えざるを得ない。
 
 実際、少年が在籍する私立高校は「昨今のコロナ禍の中で学校行事の大部分が中止となり、勉学だけが高校生活のすべてではないというメッセージが届かなかった」とするコメントを出した。
 
 この学校は自主性を重んじ、生徒主導の文化祭や遠足など学校行事の充実ぶりでも知られるが、少年はコロナ禍の高校生活しか送っていない。級友や教師らとリアルにやりとりし、コミュニケーションを深める機会が少なかったことが、学校側も言及した「少年の孤独感」につながったのか。
 
 コロナ禍も三年目。人と人が触れ合う機会が減り、大人でも時に「孤独」にさいなまれる。多感な時期の子どもには想像以上の影響が出始めた可能性がある。小さな芽に気付く想像力を高め、社会全体の知恵や工夫も発揮したい。
 
 受験シーズンはこれからが本番だ。受験生が襲われるという異例の事態に、各会場では警備体制の強化が避けられない。安全、安心な環境下で、かつ、受験生が落ち着いて試験に臨めるよう、関係者には最大限の配慮を求めたい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月18日  07:49:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:首相施政方針 政策実現の具体策欠く

2022-01-18 07:49:40 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説②】:首相施政方針 政策実現の具体策欠く

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:首相施政方針 政策実現の具体策欠く 

 通常国会がきのう召集され、岸田文雄首相が施政方針演説を行った。今年一年間の内政・外交運営を説明し、今夏の参院選で国民の判断材料となるような方向性を示すべき演説だが、長期的な政策目標を列挙するにとどまり、実現に向けた具体策には乏しかった。
 首相は演説冒頭、変異株オミクロン株の感染急拡大を受けて新型コロナウイルス対策に「全身全霊で取り組む」と強調した。国民の命と暮らしを守るのは政府の責務であり、首相の姿勢は当然だ。変異株の特徴や状況の変化に応じた柔軟で迅速な対応を求めたい。
 ただ、三回目の国会演説にもかかわらず、具体像を依然結ばないのが「新しい資本主義」である。
 首相は、新自由主義が生んだ弊害を乗り越え、持続可能な経済社会実現に向けた「経済社会変革」が始まっているとして、「成長と分配の好循環による『新しい資本主義』により、世界の動きを主導する」と意気込みを示した。
 弊害を是正する必要性は認めるとしても、その実現方法は今のところ見えてこない。
 首相が成長戦略に挙げた、デジタルを活用した地方の活性化や経済安全保障などが成長にどう結び付くのか、首相はより詳細に道筋を説明すべきではないか。
 一方、分配戦略としては「賃上げ」「人への投資」「中間層の維持」を掲げた。国民が知りたいのは、それらをどう実現するのかの具体策と首相の決意だ。新しい資本主義のグランドデザインと実行計画を今春、取りまとめると言うだけでは、説得力に欠ける。
 外交政策では「核兵器のない世界」を目指して「国際賢人会議」を創設し、年内に被爆地・広島で初会合を開くと表明したが、発効から一年を迎える核兵器禁止条約には触れなかった。
 核なき世界を目指す姿勢には賛同するが、求められるのは具体的な進展だ。核保有国と非保有国の橋渡し役を本当にできるのか、手腕が厳しく問われる。
 施政方針演説を受けて、各党代表質問や予算委員会審議が行われる。政府は今国会に五十八法案を提出するが、賛否が分かれる対決法案は見送る方針だという。
 波風立てずに国会を乗り切り、参院選に臨もうとするのなら、党利党略と言うほかない。国会審議では、こうした岸田政権の本質にも迫る論戦を期待したい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月18日  07:48:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【国会】:岸田文雄首相、初の施政方針演説 ②ー① 「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」

2022-01-18 07:49:35 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【国会】:岸田文雄首相、初の施政方針演説 ②ー① 「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【国会】:岸田文雄首相、初の施政方針演説 ②ー① 「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」 

 通常国会が17日召集され、岸田文雄首相は衆参両院の本会議で就任後初めての施政方針演説に臨んだ。冒頭、首相は「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」と述べ、国民に協力を呼び掛けた。演説の全文を、記者のワンポイント解説とともに詳報する。
衆院本会議で就任後初めての施政方針演説をする岸田首相

衆院本会議で就任後初めての施政方針演説をする岸田首相

 
 
 首相の国会演説は、首相指名選挙で選出された昨年10月の臨時国会での所信表明演説、2021年度補正予算案が提出された昨年12月の所信表明演説に続き3回目で、施政方針演説は初めて。

 ◆施政方針演説 毎年1月に召集される通常国会(会期150日間)の冒頭に、首相が1年間の内閣全体の方針を示す演説。補正予算などを審議するために開かれる臨時国会や、衆院選後に召集される特別国会、会期中に首相が交代した時に行われる演説は「所信表明演説」と呼ばれ、首相が自らの政治姿勢や国政の重要課題などを説明する。ただ2つの演説に法的な区別があるわけではなく、あくまでも慣例的に使い分けている。

◆コロナ後の新しい日本を創り上げるための挑戦

岸田文雄首相

 今、我が国は、オミクロン株の感染急拡大に直面しています。
 まず、新型コロナに感染し、苦しんでおられる方々にお見舞いを申し上げます。
 また、長期にわたり、新型コロナとの闘いに御協力いただいている国民の皆さんに、心から感謝申し上げます。
 そして、新型コロナ対応の最前線におられる、自治体、医療機関、介護施設、検疫所、保健所などのエッセンシャルワーカーの皆さんに、深く、感謝申し上げます。
 岸田政権の最優先課題は、新型コロナ対応です。しかし、政府だけで対応できるものではありません。
 国民皆で助け合い、この状況を乗り越えていきたいと思います。引き続き、皆さんの御協力を、お願いいたします。

岸田文雄首相

 内閣総理大臣に就任してから、国内外の山積する課題に、スピード感を持って、決断を下し、対応してきました。
 「行蔵こうぞうは我に存す。」
 それぞれの決断の責任は、自分が全て負う覚悟で取り組んでまいりました。
 その際、皆さんの声に丁寧に耳を澄まし、状況が変化する中で、国民にとってより良い方策になるよう、粘り強く対応し、判断の背景をしっかり説明する努力をしてきました。
 このように、「信頼と共感」の政治姿勢を堅持しつつ、まずは、新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組んでまいります。
 新型コロナという困難に直面しているからこそ、立ちすくむのではなく、皆で協力しながら、挑戦し、コロナ後の新しい日本を創り上げていこうではありませんか。

 ◆記者のワンポイント解説

  岸田首相は冒頭で、新型コロナ対応を政権の最優先課題と明示しました。「行蔵は我に存す」は、江戸時代末期に幕臣として江戸城無血開城を実現した勝海舟が福沢諭吉に宛てた手紙の一節から引用されたようです。「行蔵」は出処進退を表し、自分の行動の責任は自分で負うという趣旨。旧幕臣なのに明治政府の要職に就いていたため、福沢から批判された際、勝はこう返したとされます。
 歴代首相は、故事や尊敬する偉人の言葉などを用いて演説を締めるケースが多いですが、岸田首相は冒頭に持ってきました。「皆さんの声に丁寧に耳を澄まし」と、国民に直接、自らの「聞く力」をアピールしています。

◆新型コロナ対応の基本的な考え方

岸田文雄首相

 オミクロン株による感染が拡大しています。
 国民の皆さんの、またか、いい加減にしてくれ、もう限界だという声を、私自身、聞いてきました。しかし、新型コロナという見えない敵は、想定以上に手強いことを、改めて認識しなければなりません。
 昨年、我が国は、ワクチン接種など、国民一丸となった取組により、デルタ株を何とか抑え込むことができました。そこに、すかさず、変異株が現れました。ウイルスの怖さを改めて感じます。
 ただし、新しい変異株の可能性は、専門家からも指摘されてきました。
 私自身、総理に就任した時から、デルタ株を超える強力な変異株が現れる、そうした最悪の事態を想定して、万全の体制を整えるべく、政府を挙げて、取り組んできました。
 先般の補正予算では、医療体制の拡充、ワクチン接種の推進や経口薬の確保、さらには、仕事や暮らしを 守り抜くための支援策を盛り込んでいます。
 もちろん、新型コロナには未知のことも多く、全てを見通した上で判断を行える訳ではありません。
 私としては、専門家の意見を伺いながら、過度に恐れることなく、最新の知見に基づく対応を、冷静に進める覚悟です。
 また、一度決めた方針でも、より良い方法があるのであれば、躊躇なく改め、柔軟に対応を進化させていく所存です。
 国民の皆さん、今一度、御協力いただき、共に、この国難を乗り越えていこうではありませんか。
 具体的な対応について申し上げます。

岸田文雄首相

 これまで政府は、G7で最も厳しい水準の水際対策により、海外からのオミクロン株流入を最小限に抑えてきました。 
 この対策により、3回目のワクチン接種の開始、無料検査の拡充、経口薬の確保、医療提供体制の充実など、国内感染の増加に備える時間を確保できました。
 当面の対応として、2月末まで、水際対策の骨格を維持します。
 その上で、今後は、国内対策に重点を置きます。少しずつ明らかになってきたオミクロン株の特性を踏まえ、メリハリをつけた対策を講じていきます。
 専門家から、オミクロン株について、感染力が高い一方、感染者の多くは軽症・無症状であり、重症化率は低い可能性が高い、高齢者等で急速に感染が拡がると、重症者が発生する割合が高くなるおそれがある、といった分析が報告されました。
 こうした報告も踏まえ、重症者や中等症の患者、あるいは、そのリスクが高い方々に、的確に医療を提供することに主眼を置いて、医療提供体制を強化します。
 私から各自治体に、自己点検を依頼し、医療提供体制の確保に万全を期すよう要請しました。
 即応病床数の確保は順調に進んでいます。
 また、今後重要となる在宅・宿泊療養に対応する地域の医療機関を、全国1.6万、「全体像」の計画を 更に3割上回る体制を準備できました。
 陽性と判断されれば、直ちに健康観察や訪問診療を実施するとともに、必要な方へのパルスオキシメーターの迅速なお届け、経口薬へのアクセスの確保を徹底します。
 稼働状況の「見える化」を強化し、これらをしっかりと動かしていきます。
 その上で、感染が想定を超えて急拡大し、重症者の絶対数の増加が生じた時に、病床がひっ迫するような緊急事態に陥ることは、何としても避けなければなりません。
 この観点から、先進諸国の取組を参考にしながら、入退院基準などについて、科学的知見の集約を急ぎ、対応を検討します。

岸田文雄首相

 予防・検査・早期治療の強化も重要です。
 ワクチンについては、医療関係者、高齢者3100万人を対象とする3回目接種の前倒しについて、ペースアップさせます。
 3月以降は、追加確保した1800万人分のワクチンを活用し、高齢者の接種を6か月間隔で行うとともに、5500万人の一般向け接種も、少なくとも7か月、余力のある自治体では6か月で接種を行います。
 国としても、自衛隊による大規模接種会場を設置し、自治体の取組を後押しします。
 感染拡大が懸念される地域において、予約なしでの無料検査を拡充します。
 メルク社の経口薬160万人分について、既に全国2万2000の医療機関・薬局が登録し、医療現場に、3万人分をお届けしています。
 作用の仕組みが異なるファイザー社の経口薬についても、月内に200万人分の購入に最終合意し、来月できるだけ早くの実用化を目指します。
 オミクロン株は、お子さんの感染も多く見られます。これまでワクチンの接種対象ではなかった12歳未満の子どもについても、希望者ができるだけ早く、ワクチン接種を受けられるよう、手続を進めます。
 保健所について、体制の強化、科学的根拠に基づく業務の合理化、保健所に頼らない地域の重層的ネットワークの整備を進め、必要な即応体制を確保します。
 感染を抑えるためだけでなく、BCP計画遂行、社会活動維持のために、テレワークを積極的に活用していただくようお願いいたします。
 学校においても、休校時のオンライン授業の準備を進めます。入試については、追試などにより受験機会を確保するとともに、4月以降の入学を可とするなど、柔軟な対応を要請します。
 米国は、必要不可欠な場合以外の外出を認めない、夜間の外出を禁止するなど、在日米軍の感染拡大防止措置を発表しました。在日米軍の駐留に関わる保健・衛生上の課題に関し、地位協定に基づく日米合同委員会において、しっかり議論していきます。
 息の長い感染症対応体制の強化策として、まずは、安全性の確認を前提に、迅速に薬事承認を行う仕組みを創設します。
 さらに、これまでの対応を客観的に評価し、次の感染症危機に備えて、本年6月を目途に、危機に迅速・ 的確に対応するための司令塔機能の強化や、感染症法の在り方、保健医療体制の確保など、中長期的観点から必要な対応を取りまとめます。

 ◆記者のワンポイント解説 

 首相はワクチン接種のペースアップについて▽高齢者の接種を6か月間隔で行う▽一般向け接種も、余力のある自治体では6か月で行う▽12歳未満の子どもについても希望者が受けられるようにするーなどをアピールしています。ただ、いずれも既に明らかにされている内容で真新しさには欠けます。ワクチンの追加接種を巡っては昨年末から「2回目接種以降8カ月」からの前倒しを余儀なくされてきました。想定を上回る感染拡大のペースに供給が本当に追いつくかどうか、懸念は消えません。
 在日米軍基地で感染者が続出し、全国の感染拡大の一因となっている問題では、日本の検疫や行動制限などが及ばない日米地位協定の「壁」が改めて立ちはだかりました。首相は「在日米軍の駐留に関わる保健・衛生上の課題に関し、地位協定に基づく日米合同委員会において、しっかり議論する」と指摘しただけで、地位協定の抜本見直しを求める自治体にとっては「ゼロ回答」に等しい内容でした。 

 ◆新しい資本主義の実現

 新型コロナとの闘いに打ち克ち、経済を再生させるため、令和3年度補正予算の早期執行など、危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期します。

 経済あっての財政です。経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組みます。
 経済再生の要は、「新しい資本主義」の実現です。
 市場に依存し過ぎたことで、公平な分配が行われず生じた、格差や貧困の拡大。市場や競争の効率性を重視し過ぎたことによる、中長期的投資の不足、そして持続可能性の喪失。行き過ぎた集中によって生じた、都市と地方の格差。自然に負荷をかけ過ぎたことによって深刻化した、気候変動問題。分厚い中間層の衰退がもたらした、健全な民主主義の危機。
 世界でこうした問題への危機感が高まっていることを背景に、市場に任せれば全てが上手くいくという、 新自由主義的な考え方が生んだ、様々な弊害を乗り越え、持続可能な経済社会の実現に向けた、歴史的スケールでの「経済社会変革」の動きが始まっています。
 私は、成長と分配の好循環による「新しい資本主義」によって、この世界の動きを主導していきます。官と民が全体像を共有し、協働することで、国民一人ひとりが豊かで、生き生きと暮らせる社会を作っていきます。
 日本ならばできる、日本だからできる。共に、この「経済社会変革」に挑戦していこうではありませんか。
 様々な弊害を是正する仕組みを、「成長戦略」と「分配戦略」の両面から、資本主義の中に埋め込み、資本主義がもたらす便益を最大化していきます。
 成長戦略では、「デジタル」、「気候変動」、「経済安全保障」、「科学技術・イノベーション」などの社会課題の解決を図るとともに、これまで、日本の弱みとされてきた分野に、官民の投資を集め、成長のエンジンへと転換していきます。
 分配や格差の問題にも正面から向き合い、次の成長につなげます。こうして、成長と分配の両面から経済を動かし、好循環を生み出すことで、持続可能な経済を作り上げます。



岸田文雄首相

 まずは成長戦略。第一の柱はデジタルを活用した地方の活性化です。
 新しい資本主義の主役は地方です。デジタル田園都市国家構想を強力に推進し、地域の課題解決とともに、地方から全国へと、ボトムアップでの成長を実現していきます。
 そのために、インフラ整備、規制・制度見直し、デジタルサービスの実装を、一体的に動かしていきます。
 高齢化や過疎化などに直面する地方においてこそ、オンライン診療、GIGAスクール、スマート農林水産業などのデジタルサービスを活用できるよう、5G、データセンター、光ファイバーなどのインフラの整備計画を取りまとめます。
 5G基地局を信号機に併設するなど多様な手法で民間投資を促し、自動運転や、ダイナミックな交通管制、ドローンなど、未来のサービスを支えるインフラを整備します。
 デジタルサービスの実装に向けて、規制・制度の見直しを進めます。
 単なる規制緩和ではなく、新しいルールを作ることで、地域社会に新たなサービスを生み出し、日々の暮らしを豊かにすることを目指します。
 例えば、「運転者なし」の自動運転車、低速・小型の自動配送ロボットが公道を走る場合のルールや、ドローン、AIなどの活用を前提とした産業保安のルールを、新たに定めることで、安全を確保しながら、新サービス展開の道を拓きます。
 例えば、企業版ふるさと納税のルールを明確化することで、企業の支援による、地方のサテライトオフィス整備の取組を後押しし、企業や個人の都市から地方への流れを加速させます。
 マイナンバーカードは、デジタル社会の安全安心のための「パスポート」であり、その利便性を改善させます。
 例えば、2024年度までに、運転免許証とマイナンバーカードの一体化を進めます。転居時、住所変更手続を市役所で行えば、警察署での手続を不要とします。
 リアルとネットが密接不可分となる中、サイバー攻撃等への対処体制を整備するとともに、企業のセキュリティ強化に取り組み、デジタル社会のリスクに対し、正面から向き合います。
 経済安全保障も、待ったなしの課題であり、新しい資本主義の重要な柱です。
 新たな法律により、サプライチェーン強靱化への支援、電力、通信、金融などの基幹インフラにおける重要機器・システムの事前安全性審査制度、安全保障上機微な発明の特許非公開制度等を整備します。
 あわせて、半導体製造工場の設備投資や、AI、量子、バイオ、ライフサイエンス、光通信、宇宙、海洋といった分野に対する官民の研究開発投資を後押ししていきます。

岸田文雄首相

 社会課題を成長のエンジンへと押し上げていくためには、科学技術・イノベーションの力が不可欠です。
 世界と伍する研究大学を作るため、研究力に加え、研究と経営の分離、若手研究者の登用など、先端的なガバナンスを導入する大学に対し、10兆円の大学ファンドで支援します。
 官民のイノベーション人材育成を強化するため、大学の学部再編や文系理系の枠を超えた人材育成の取組を加速します。
 本年をスタートアップ創出元年とし、5か年計画を設定して、大規模なスタートアップの創出に取り組み、戦後の創業期に次ぐ、日本の「第2創業期」を実現します。
 2025年には、大阪・関西万博が開催されます。科学技術や、イノベーションの力で、未来を切り拓い ていく日本の姿を世界に発信していきます。

岸田文雄首相

 成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現する要となるのが、分配戦略です。
 その第一は、所得の向上につながる「賃上げ」です。
 先日、車座でお話を伺った中小製造事業の社長さんは、生産性向上を図り、従業員の可処分所得を3%引き上げたい、それが経営者としての信念だ、と力強く語ってくれました。
 成長の果実を、従業員に分配する。そして、未来への投資である賃上げが原動力となって、更なる成長につながる。こうした好循環を作ります。
 賃上げ税制の拡充、公的価格の引き上げに加え、中小企業が原材料費の高騰で苦しむ中、適正な価格転嫁を行えるよう、環境整備を進めます。
 春には、春闘があります。近年、賃上げ率の低下傾向が続いていますが、このトレンドを一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待します。
 できる限り早期に、全国加重平均1000円以上となるよう、最低賃金の見直しにも取り組んでいきます。

岸田文雄首相

 第二に、「人への投資」の抜本強化です。
 資本主義は多くの資本で成り立っていますが、モノからコトへと進む時代、付加価値の源泉は、創意工夫や、新しいアイデアを生み出す「人的資本」、「人」です。
 しかし、我が国の人への投資は、他国に比して大きく後塵を拝しています。
 今後、官民の人への投資を、早期に、少なくとも倍増し、さらにその上を目指していくことで、企業の持続的価値創造と、賃上げを両立させていきます。
 スキル向上、再教育の充実、副業の活用といった人的投資の充実が、デジタル社会、炭素中立社会への変革を円滑に進めるための鍵です。
 世界が、産業界が、地域が必要とする、人材像やスキルについて、現場の声を丁寧に聞き、明確化した上で、海外の先進事例からも学び、公的職業訓練の在り方をゼロベースで見直します。
 人的投資が、企業の持続的な価値創造の基盤であるという点について、株主と共通の理解を作っていくため、今年中に非財務情報の開示ルールを策定します。
 あわせて、四半期開示の見直しを行います。

岸田文雄首相

  第三に、未来を担う次世代の「中間層の維持」です。
 子育て・若者世代に焦点を当て、世帯所得の引き上げに向けて、取り組みます。
 全世代型社会保障構築会議において、男女が希望通り働ける社会づくりや、若者世代の負担増の抑制、勤労者皆保険など、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じてみんなが支え合う、持続的な社会保障制度の構築に向け、議論を進めます。
 世帯所得の向上を考えるとき、男女の賃金格差も大きなテーマです。
 この問題の是正に向け、企業の開示ルールを見直します。
 新たな官民連携を進めるにあたっては、公共施設の運営を民間に任せるコンセッションの一層の活用、ベンチャー・フィランソロフィーによるNPOや社会的企業への支援、社会的インパクト投資など、民による公的機能の補完も重要な論点です。
 今春、新しい資本主義のグランドデザインと、実行計画を取りまとめます。
 来年、日本がG7議長国を務めることを見据え、ダボス会議や、G7の場を活用し、世界の首脳や、経済界のリーダーと問題意識を共有しながら、世界の議論を牽引し、資本主義の変革に向けた大きな流れを作っていきます。

 ◆記者のワンポイント解説 

 岸田首相は、肝いりの「新しい資本主義」について多くの時間を割きました。
 首相は昨秋の自民党総裁選では新自由主義からの脱却を打ち出し、アベノミクスを修正して「分配」重視の姿勢を示していましたが、首相就任後は「成長と分配の好循環」に回帰した経緯があります。株式譲渡益や配当金などに課される金融所得課税についても当初は強化する姿勢を打ち出しましたが、直後に株価が下がると先送りを表明。新しい資本主義の理念や立ち位置があいまいだと指摘され続けています。
 今回の演説でも「成長と分配の両面から経済を動かす」と強調。今春、新しい資本主義のグランドデザインと実行計画を取りまとめる考えをあらためて表明しましたが、その具体像が問われます。 

◆気候変動問題への対応 と多様性の尊重

  過度の効率性重視による市場の失敗、持続可能性の欠如、富める国と富まざる国の環境格差など、資本主義の負の側面が凝縮しているのが気候変動問題であり、新しい資本主義の実現によって克服すべき最大の課題でもあります。

 2020年、衆参両院において、党派を超えた賛成を得て、気候非常事態宣言決議が可決されました。皆さん、子や孫の世代のためにも、共にこの困難な課題に取り組もうではありませんか。
 同時に、この分野は、世界が注目する成長分野でもあります。2050年カーボンニュートラル実現には、 世界全体で、年間1兆ドルの投資を、2030年までに4兆ドルに増やすことが必要との試算があります。
 我が国においても、官民が、炭素中立型の経済社会に向けた変革の全体像を共有し、この分野への投資を早急に、少なくとも倍増させ、脱炭素の実現と、新しい時代の成長を生み出すエンジンとしていきます。
 2030年度46%削減、2050年カーボンニュートラルの目標実現に向け、単に、エネルギー供給構造の変革だけでなく、産業構造、国民の暮らし、そして地域の在り方全般にわたる、経済社会全体の大変革に取り組みます。
 どの様な分野で、いつまでに、どういう仕掛けで、どれくらいの投資を引き出すのか。経済社会変革の道筋を、クリーンエネルギー戦略として取りまとめ、お示しします。
 送配電インフラ、蓄電池、再エネはじめ水素・アンモニア、革新原子力、核融合など非炭素電源。需要側や、地域における脱炭素化、ライフスタイルの転換。資金調達の在り方。カーボンプライシング。多くの論点に方向性を見出していきます。
 もう一つ重要なことは、我が国が、水素やアンモニアなど日本の技術、制度、ノウハウを活かし、世界、 特にアジアの脱炭素化に貢献し、技術標準や国際的なインフラ整備をアジア各国と共に主導していくことです。
 いわば、「アジア・ゼロエミッション共同体」と呼びうるものを、アジア有志国と力を合わせて作ることを目指します。

 ◆記者のワンポイント解説 

 岸田首相が強調した水素・アンモニアは、燃焼時に温室効果ガスのCO2を出さない燃料として注目され、火力発電や車の燃料などとして、化石燃料からの置き換えが目指されています。ただ、現状は、水素・アンモニアは天然ガスなどから作られることが多く、製造時のCO2排出をゼロにすることが課題。輸送コストの高さなども実用化のハードルです。岸田首相は水素・アンモニアによる火力発電所に取り組むことを掲げ、アジア各国と連携して、関連技術や国際調達網の構築を先導する意欲を示していますが、環境団体からは事実上の石炭火力発電所の延命策だと批判されています。
 気候変動対策をエネルギー分野に限定せず「経済社会全体の大改革」の道筋を示すとした点も注目されます。エネルギー供給構造の変革だけでは、脱炭素社会は実現できませんが、新型コロナ禍で非正規雇用の女性らが苦境に陥ったように、社会経済の大きな変化によって苦しむ人が出ないよう「公正な移行」が求められます。

岸田文雄首相

 新しい資本主義を支える基盤となるのは、老若男女、障害のある方も、全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会です。
 人生や家族の在り方が多様化する中、女性の経済的自立や、コロナ下で急増するDVなど女性への暴力根絶に取り組みます。
 孤独・孤立に苦しむ方々に寄り添い、支えるため、NPO等の活動をきめ細かく支援するとともに、国・自治体・NPOの連携体制を強化します。
 少子化対策やこども政策を積極的に進めていくことも、喫緊の課題です。
 不妊治療の範囲を拡大し、4月から保険適用を始めます。
 こども政策を我が国社会のど真ん中に据えていくため、「こども家庭庁」を創設します。
 こども家庭庁が主導し、縦割り行政の中で進まなかった、教育や保育の現場で、性犯罪歴の証明を求める日本版DBS、こどもの死因究明、制度横断・年齢横断の教育・福祉・家庭を通じた、こどもデータ連携、地域における障害児への総合支援体制の構築を進めます。
 消費者という視点から、本年4月の成年年齢の引き下げを控え、若者の消費者被害防止に集中的に取り組みます。

 元稿:東京新聞社 主要ニュース 政治 【政局・国会・衆参両院の本会議で就任後初めての施政方針演説】  2022年01月17日  15:54:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【国会】:岸田文雄首相、初の施政方針演説 ②ー② 「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」

2022-01-18 07:49:30 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【国会】:岸田文雄首相、初の施政方針演説 ②ー② 「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【国会】:岸田文雄首相、初の施政方針演説 ②ー② 「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」 

 通常国会が17日召集され、岸田文雄首相は衆参両院の本会議で就任後初めての施政方針演説に臨んだ。冒頭、首相は「新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組む」と述べ、国民に協力を呼び掛けた。演説の全文を、記者のワンポイント解説とともに詳報する。
衆院本会議で就任後初めての施政方針演説をする岸田首相

衆院本会議で就任後初めての施政方針演説をする岸田首相

 

 ◆地域活性化と災害対策

 デジタル以外の地域活性化にもしっかりと取り組みます。

 農林水産業については、輸出の促進と、スマート化による生産性向上により、成長産業化を進めます。
 昨年の農林水産品の輸出額は、1兆円を突破しました。次の目標である、2025年、2兆円突破に向け、輸出品目別に、オールジャパンで輸出促進を行う体制を整備します。
 コロナ禍による米価下落に対して、15万トンの特別枠の設定により対処してきました。現下の状況を重く受け止め、家族農業や中山間地域農業を含め、多様な農林漁業者が安心して生産できる豊かな農林水産業を構築できるよう、取り組みます。
 観光産業についても、新型コロナの影響への適切な支援を図りつつ、コロナ後を見据え、観光産業の高付加価値化を推進します。
日本酒、焼酎、泡盛など文化資源のユネスコへの登録を目指すなど、日本の魅力を世界に発信していきます。
 本年は、沖縄の本土復帰50周年です。この節目の年に、復帰の歴史的意義を想起し、沖縄の歴史に思いを致します。強い沖縄経済を作るための取組を進めます。この節目の年に、復帰の歴史的意義を想起し、沖縄の歴史に思いを致します。強い沖縄経済を作るための取組を進めます。

岸田文雄首相

 27年前の今日、阪神・淡路大震災が発生し、6000名を超える尊い命が失われました。
 この震災を教訓に、それまで以上に、災害対策や危機管理の充実を図ってきました。
 切迫する南海トラフの巨大地震や首都直下地震。日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震。風水害、豪雨への備え。
 5年間で15兆円規模の集中対策を進め、引き続き、強い覚悟を持って、防災・減災、国土強靱化を強化します。
 昨年熱海で発生した土石流災害と同様の悲劇を繰り返すことがないよう、これまで規制をかけることができなかった地域においても、危険な盛土を、規制するための法律を整備します。あわせて、全国に3万6000か所ある、点検が必要な盛土の安全確保も進めます。
 福島の再生を含め、東日本大震災からの復興は、政権の大きな課題です。
 大熊町おおくままち双葉町ふたばまち葛尾村かつらおむらから、復興再生拠点の避難指示解除に向けた、準備宿泊の取組を進めます。被災者の方の心に寄り添いながら、住民の方の帰還を進めていきます。
 福島の復興・再生を前進させるのみならず、世界の課題解決にも貢献する、国際教育研究拠点を具体化するための法律を整備します。
 昨年、米国が日本産食品の輸入規制を撤廃し、福島県産米の輸出が始まりました。私自身、ジョンソン首相に働きかけを行った英国も、規制撤廃に向けた手続を開始しています。一日も早く、全ての国と地域で、規制が撤廃されるよう、政府一丸となって働きかけていきます。

 ◆記者のワンポイント解説

 今年は沖縄の本土復帰50年の重要な節目ですが、首相は「強い沖縄経済を作るための取組を進める」と述べましたが、2022年度の当初予算案の総額が過去最大に膨らむ中、沖縄振興予算は減り、10年ぶりに3000億円を割り込みました。地元では、名護市辺野古の米軍新基地建設を巡って岸田政権との対立が続く県を財政的に締め付けるような姿勢に反発の声が上がっています。 

◆外交・安全保障

  厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、日本外交のしたたかさが試される一年です。

 私自ら先頭に立ち、未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、現実を直視し、「新時代リアリズム外交」を展開していきます。
 「新時代リアリズム外交」の第一の柱として、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値や原則を重視していきます。
 これらを共有する米国のバイデン大統領とは早期に会談し、我が国の外交・安全保障の基軸である日米同盟の抑止力・対処力を一層強化し、地域の平和と繁栄、そして、より広く国際社会に貢献する同盟へと導いていきます。
 豪州のモリソン首相とは、円滑化協定に署名し、安全保障協力を強化するなど、「特別な戦略的パートナーシップ」を新しいステージへと引き上げました。
 同盟国・同志国と連携し、深刻な人権問題への対処にも、私の内閣で、初めて任命した専任の補佐官と共に、しっかりと取り組む覚悟です。
 最重要課題である拉致問題について、各国と連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組みます。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意です。
 日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指します。
 我が国が提唱し、推進する「自由で開かれたインド太平洋」の考え方は、多くの国から支持を得ています。
 日米豪印では、ワクチンや質の高いインフラ整備など、実践的な協力が具体化しており、協力を前へと進めます。
 ASEANや欧州などパートナーとも連携を強化します。
 TPPの着実な実施、高いレベルを維持しながらの拡大に取り組みます。信頼性ある自由なデータ流通、「DFFT」の実現に向け、国際的なルール作りにおいて、中心的な役割を果たしていきます。

岸田文雄首相

 地域の平和と安定も重要です。
 中国には、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めていきます。同時に、諸懸案も含めて、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力し、本年が日中国交正常化50周年であることも念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指します。
 ロシアとは、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、2018年のシンガポールでの首脳会談のやり取りを含め、これまでの諸合意を踏まえ、2018年以降の首脳間でのやり取りを引き継いで、 粘り強く交渉を進めながら、エネルギー分野での協力を含め、日露関係全体を国益に資するよう発展させていきます。
 重要な隣国である韓国に対しては、我が国の一貫した立場に基づき、適切な対応を強く求めていきます。
  第二の柱として、気候変動やユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を含め、地球規模課題に積極的に取り組みます。
 6年前、オバマ大統領は、原爆資料館で「核兵器のない世界を追求する勇気を持ちましょう」と記帳し、自作の折り鶴を残しました。被爆地広島出身の総理大臣として、私は、この思いを引き継ぎ、勇気を持って 「核兵器のない世界」を追求していきます。
 外務大臣時代に設置した「賢人会議」の議論を更に発展させるため、各国の現・元政治リーダーの関与も得ながら、「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を立ち上げます。本年中を目標に、第1回会合を広島で開催します。
 貧困削減への貢献に向け、国際開発協会に対して、過去最大の約34億ドルを拠出します。
 TICAD8では、コロナ後を見据えた、アフリカ開発の針路を示していきます。
  第三の柱は、国民の命と暮らしを断固として守り抜く取組です。
 北朝鮮が繰り返す弾道ミサイルの発射は断じて許されず、ミサイル技術の著しい向上を見過ごすことはできません。
 こうしたミサイルの問題や、一方的な現状変更の試みの深刻化、軍事バランスの急速な変化、宇宙、サイバーといった新しい領域や経済安全保障上の課題。これらの現実から目を背けることなく、政府一丸となって、我が国の領土、領海、領空、そして、国民の生命と財産を守り抜いていきます。
 このため、概ね1年をかけて、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画を策定します。
 これらのプロセスを通じ、いわゆる「敵基地攻撃能力」を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討します。先月成立した補正予算と来年度予算を含め、スピード感を持って防衛力を抜本的に強化します。
 海上保安庁と自衛隊の連携を含め、海上保安体制を強化するとともに、島嶼防衛力向上などを進め、南西諸島への備えを強化します。
 海外で邦人等が危機に晒された際の輸送に万全を期すため、自衛隊法の改正案を今国会に提出します。
 日米同盟の抑止力を維持しながら、沖縄の皆さんの心に寄り添い、基地負担軽減に引き続き取り組みます。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進めます。

 ◆記者のワンポイント解説 

 被爆地広島出身の岸田首相は、自らが外相時代に設置した、核軍縮の道筋について各国の有識者が話し合う「賢人会議」の議論をさらに発展させるため、各国の首脳級の参加を目指した「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を立ち上げる意向を表明しました。ただ、核兵器の開発から使用までを全面的に禁じる「核兵器禁止条約」の発効から22日で丸1年となりますが、演説では言及しませんでした。
 一方、17日には北朝鮮が今年4回目となる弾道ミサイルを発射。首相はこうした情勢を踏まえてか、憲法9条の専守防衛から逸脱する「敵基地攻撃能力」について「現実的に検討する」と表明。その踏み込みぶりは、核廃絶に向けた取り組みとは対照的でした。

  ◆憲法改正と統計の不適切処理 

 先の臨時国会において、憲法審査会が開かれ、国会の場で、憲法改正に向けた議論が行われたことを、歓迎します。
 憲法の在り方は、国民の皆さんがお決めになるものですが、憲法改正に関する国民的議論を喚起していくには、我々国会議員が、国会の内外で、議論を積み重ね、発信していくことが必要です。
 本国会においても、積極的な議論が行われることを心から期待します。

岸田文雄首相

 昨年末に明らかになった建設工事受注動態統計調査における不適切な処理について、一言申し上げます。
 先週14日に国土交通省の第三者委員会及び総務省の統計委員会から、検証結果が公表されました。
 検証結果を真摯に受け止め、国民の皆さんにお詫び申し上げます。
 関係大臣に対し、直ちに、再発防止に取り組むよう指示しました。政府統計全体の信頼を回復するべく、指導・監督してまいります。

岸田文雄首相

 「己を改革する。」
 幕末を生きた勝海舟は、「行蔵は我に存す」とともに、「己を改革す」、自らを律することに重きを置きました。
 今、新たな時代を切り拓くに当たり、統計の不適切処理はもとより、我々政治・行政が、自らを改革し、 律していくことが求められています。
 その最大の原動力は、国民の声です。国民の声なき声に、丁寧に耳を傾ければ、そして国民と共に歩めば、自ずと改革の道は見えてきます。
 引き続き、「信頼と共感」の政治に向けて、謙虚に取り組んでいきます。共に力を合わせ、この国の未来を切り拓くため、心より、国民の皆さんの御理解と御協力をお願いいたします。
 御清聴ありがとうございました。

 元稿:東京新聞社 主要ニュース 政治 【政局・国会・衆参両院の本会議で就任後初めての施政方針演説】  2022年01月17日  15:54:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗】:子どものときからの大切な友を失ったような気になる。または子…

2022-01-18 07:49:20 | 【訃報・告別式・通夜・お別れの会・病死・事故死・災害死・被害による死他】

【筆洗】:子どものときからの大切な友を失ったような気になる。または子…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:子どものときからの大切な友を失ったような気になる。または子…

 子どものときからの大切な友を失ったような気になる。または子ども扱いせず、いろんなことを教えてくれた親類のおじさんかもしれぬ。漫画家の水島新司さんが亡くなった。八十二歳

 ▼思い出すのはその人が描いた緻密な打撃フォームか。藤村甲子園、山田太郎、岩田鉄五郎ら個性的なキャラクターの面々か

 ▼そればかりではあるまい。水島漫画で育った世代なら『ドカベン』を夢中で読んだ実家の居間や回し読みした教室、今はもうない故郷の書店のにおいまで思い出すだろう。懐かしい。そして、寂しい

 ▼うなる剛速球。「カキーン」。続く、大歓声。ページをめくりながら、球場の特等席にいる気になった。試合描写や読み手をひきつける展開のうまさは言うに及ばず、この人のペンには生きることの苦味や人の悲しさの色も確かに混ざっていた気がする

 ▼『野球狂の詩』に「スチール百円」という作品がある。試合そのものは描かれず、球場でスリを働く小学生とその親の話だった。球場という光あふれる場所で、罪を重ねる貧しい親子が切なく、更生に向かわせる周囲の心が温かかった▼考えてみれば、おなじみの登場人物にも弱点があった。ドカベンは鈍足、鉄五郎は高齢、里中は背が低い。それでも夢を追えるよ。なんとかなるよ。そのペンは子どもたちに野球とともにきっと別のことを教え、励ましていたのだろう。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2022年01月18日  07:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【岸田首相の一日】:1月17日(月)

2022-01-18 07:49:10 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・優生訴訟・年収「103万円」の壁】

【岸田首相の一日】:1月17日(月)

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【岸田首相の一日】:1月17日(月) 

 【午前】8時53分、官邸。9時、臨時閣議。10分、萩生田光一経済産業相、経産省の多田明弘事務次官、松尾剛彦通商政策局長。30分、秋葉剛男国家安全保障局長。11時、石原正敬自民党衆院議員。26分、同党本部。29分、同党両院議員総会。54分、国会。
 
 【午後】0時2分、衆院本会議。10分、官邸。38分、国会。1時、第208通常国会開会式。12分、官邸。40分、国会。41分、細田博之衆院議長、山口俊一衆院議院運営委員長にあいさつ。松野博一、木原誠二正副官房長官同席。43分、海江田万里衆院副議長にあいさつ。松野、木原正副官房長官同席。46分、山東昭子参院議長、福岡資麿参院議院運営委員長にあいさつ。松野、磯崎仁彦正副官房長官同席。48分、小川敏夫参院副議長にあいさつ。松野、磯崎正副官房長官同席。2時2分、衆院本会議。施政方針演説。3時43分、林芳正外相。46分、参院本会議。施政方針演説。5時13分、自民党役員会。33分、同党の麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長。元宿仁同党本部事務総長同席。6時6分、官邸。29分、テレビ東京の報道番組の収録。7時24分、公邸。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政局・首相の一日】  2022年01月18日  07:46:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【政界地獄耳】:矢面には立たないが… 見えてきた岸田首相の政治手法/01.11

2022-01-18 07:36:00 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政界地獄耳】:矢面には立たないが… 見えてきた岸田首相の政治手法/01.11

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳】:矢面には立たないが… 見えてきた岸田首相の政治手法/01.11 

 ★どうやら首相・岸田文雄の政治手法が垣間見えてきた。自民党保守本流の宏池会とは思えぬしたたかな動きは自民党の中でも新手の政権運営術といえようか。メディアが異例の事態と盛んに訴える党内の財政政策の主導権争い。首相率いる財政規律派対党政調会長・高市早苗率いる積極財政派の構図になっている。党の「財政健全化推進本部」が首相の砦(とりで)なら高市は政調内組織「財政政策検討本部」を立ち上げる。ところがこの2人が直接火花を散らすことはない。今は党幹事長・茂木敏充対高市のつばぜり合いだ。首相が出ていかないどころか、この党内対立は岸田対元首相・安倍晋三の代理戦争の様相だが、それでも岸田対安倍の直接対決も起こりえないだろう。岸田は土俵に下りてこない。

 ★7日開かれた衆院議院運営委員会で共産党の赤嶺政賢は在日米軍でのコロナ感染急拡大の対応を質(ただ)した。政府が水際対策として米国からの入国停止措置をとる一方、米軍関係者は自由に入国を続け、日本の検疫も免除されていると批判し、「一般の米国人と同様に米軍関係者の入国を停止すべきだ」と問うと経済再生担当相・山際大志郎は「日米同盟の抑止力の観点からも、入国禁止という話とは違う」とし、「政府が出入国管理と検疫を実施できるよう日米地位協定を改定すべき」と訴えると山際は「日米同盟の抑止力は必要だ。毀損(きそん)するようなことは判断しない」と繰り返した。

 ★ところが9日の複数のテレビで首相は「在日米軍施設の周辺の人々が不安に思っておられる。不要な外出を認めない方向で日米で基本的に一致した」「日米地位協定に基づく日米合同委員会で、保健衛生に関する体制について議論を行うよう指示した」と山際発言を全面的に上書きした。外出制限は10日から14日まで実施される。矢面には立たず、議会の外で発表。これが岸田流か。(K)※敬称略

 ◆政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2022年01月11日  07:15:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【フォーカス】:首相、参院選へ「守り」前面 施政方針演説

2022-01-18 07:31:30 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【フォーカス】:首相、参院選へ「守り」前面 施政方針演説

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【フォーカス】:首相、参院選へ「守り」前面 施政方針演説 

 ■コロナ対策、低姿勢 「Go To」言及なし 

 岸田文雄首相の施政方針演説は、今夏の参院選をにらみ各方面に配慮した守りの姿勢が目立った。新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」対策に重点を置き、国民に協力を呼び掛ける低姿勢をアピール。賛否の割れる話題は言及を避けた。反論の出にくい気候変動対策を目玉に打ち出したものの、既出項目の羅列にとどまる。感染拡大が深刻化する中、野党は追及姿勢を強めており、「安全運転」で国会審議を乗り切れるのか、不安要素は多い。

 ■「変革」8回、具体策欠く
 「最優先課題は新型コロナ対応。しかし政府だけで対応できるものではない」。首相は演説の冒頭で国民に協力を求めた。「行蔵(こうぞう)(出処進退)は我(われ)に存す」という勝海舟の言葉を引き、国際線の新規予約停止やオミクロン株濃厚接触者の大学受験を巡って省庁の決定を撤回した判断を念頭に、「決断の責任は自分が全て負う覚悟だ」と強調した。

 柔軟で、国民に寄り添うリーダー像をアピールする狙いだが、内容はワクチン接種の前倒しや医療提供体制の強化など、従来の対策の域を出ない。昨年10月の就任以降、2回の所信表明演説のほか、官邸で記者団に新型コロナ対策を公表する機会もあり、「あまり目新しい話は出せない」(政府高官)との事情もある。

 一方、観光支援事業「Go To トラベル」や、ワクチン接種や検査で行動制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ制度」の言及は消えた。政権幹部は「感染拡大の局面で触れられない」と話し、オミクロン株が拡大する中、世論の反発を強く意識した形だ。

 代わりに時間を割いたのが、気候変動対策だった。ただ、2050年までに国内温室効果ガスの排出を実質ゼロとする方針は、菅義偉前首相が20年に打ち出しており、首相周辺は「菅氏の時から全く進んでいない、と思われることを首相は気にしている」と明かす。

 これまでの所信表明演説で受けてきた「改革意欲に乏しい」との批判も強く意識した。施政方針演説では「経済社会変革に挑戦する」と表明。貧困や都市と地方の格差などを是正する考えを示し、「変革」という言葉を計8回使ったが、具体的な政策の言及はない。

 野党は追及姿勢を強める。立憲民主党の泉健太代表は記者団に「首相の演説には具体策がなく、画竜点睛を欠く」と批判。日本維新の会の藤田文武幹事長も、記者会見で「首相の『改革』は本音なのか。とってつけたようだ」と指摘した。

 「先手」を強調した新型コロナ対応で、内閣支持率は60%台を保つ。政府内には「これまで感染拡大イコール支持率下落だったが(症状の軽い)オミクロンは対策のスピードさえあれば大丈夫そう」(関係者)との緩みも見える。だが自民重鎮は「何とも言えない安定だ」と話し、政権への支持は盤石ではないとみる。

 首相は今後、2022年度予算案の早期成立に全力を挙げる方針だ。野党は、ワクチン3回目接種の遅れや在日米軍基地での感染拡大、国土交通省の建設受注統計書き換え問題などで追及する構え。コロナ対策のまん延防止等重点措置も適用拡大が予想され、いずれかの対応でつまずけば支持は急速に離れかねない。閣僚経験者は「通常国会で支持率をいかに下げないか。できれば、下げ幅は10%くらいにとどめたい」と漏らした。(吉田隆久、袖山香織)

 元稿:北海道新聞社 主要ニュース 政治 【政局・「フォーカス」】  2022年01月18日  07:31:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【NHK】:捏造・虚偽放送問題で河瀬直美監督のコメントが無責任すぎる!

2022-01-18 07:15:40 | 【新聞社・報道・テレビ・ラジオ・NHKの功罪・マスコミ・雑誌・著作権】

【NHK】:捏造・虚偽放送問題で河瀬直美監督のコメントが無責任すぎる! ■ドラマの デモ描写に異議唱えた『相棒』脚本家と大違い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【NHK】:捏造・虚偽放送問題で河瀬直美監督のコメントが無責任すぎる! ■ドラマの デモ描写に異議唱えた『相棒』脚本家と大違い 

 証言のない「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」というテロップを流し、重大な放送倫理違反が問われているNHK捏造・虚偽放送問題。ここにきてようやく河瀨直美監督がコメントを発表したが、それが火に油を注ぐかたちとなっている。

NHK捏造・虚偽放送問題で河瀬直美監督のコメントが無責任すぎる!ドラマの デモ描写に異議唱えた『相棒』脚本家と大違いの画像1

番組HPより

 河瀨監督が11日までに公表したコメントでは、〈五輪反対デモに参加していると紹介された男性について、公式映画の担当監督の取材において、当該男性から、「お金を受けとって五輪反対デモに参加する予定がある」という話が出たことはありません〉とし、同時に〈番組内で、担当監督が取材のまとめ映像を私に見せるという場面がありましたが、このまとめ映像にも、当該男性は含まれていません〉と説明。こうつづけている。

 〈今回のNHKの取材班には、オリンピック映画に臨む中で、私が感じている想(おも)いを一貫してお伝えしてきたつもりでしたので、公式映画チームが取材をした事実と異なる内容が含まれていたことが、本当に、残念でなりません。〉
〈現在は、6月の公開に向けて、たくさんの登場人物の、唯一無二な時間の数々と向き合いながら、鋭意編集作業を進めています。映画を楽しみにしてくださっている皆様のもとに、この作品がお届けできるその時まで、真摯(しんし)に創作に打ち込みたいと思います。〉(朝日新聞デジタル11日付)

 「本当に、残念でなりません」って、いまさら言うか、という話だろう。まず、最初にこの番組が放送されたのは12月26日で、30日の再放送後からはネット上で問題のシーンに対して「本当にそんな証言があったのか」「どうして肝心の証言の音声は使わずにテロップだけで出しているのか」などといった問題を指摘する声があがってきた。自身の名前がタイトルに打ち出された密着ドキュメンタリーのなかで不自然かつ捏造が疑われる場面があったというのに、どうしてすぐに公式記録映画の責任者として説明をおこなったり、NHKへの抗議といったアクションを起こさなかったのか。

 いや、抗議どころか、すでにこの問題を指摘する声がネット上で多数上がっていた5日に河瀬監督は〈めちゃくちゃ面白かった!自分達に都合が悪いとすぐBPOだの放送倫理違反だの言ってくる人たちの誹謗中傷に負けずこれからも頑張ってください〉というあるTwitterユーザーの投稿をわざわざ引用リツイートし、〈はい(キラキラマークの絵文字)〉と返信していた。

 つまり、河瀨監督は疑義を呈する声を「誹謗中傷」扱いし、“そんな声には負けない”と宣言していたのである。ところが、NHKが「字幕が不適切だった」と公表した途端、「残念でなりません」などと被害者ヅラをしはじめたのだ。

 だが、今回の問題はたんにNHKが勝手に捏造・虚偽のテロップをつけただけで河瀨監督は被害者、というわけではまったくない。本サイトでは繰り返し指摘しているように、問題の男性の取材は公式記録映画のためにおこなわれたものであり、当然ながら河瀨監督には「取材時点で五輪反対デモに参加したこともなかったこの男性に、何の目的で取材しようと思ったのか」「どうして五輪反対運動をおこなってきた市民団体に話をじっくり訊こうとしなかったのか」など説明すべき問題が山のようにある。同時に、自分たちがおこなった取材が発端となって「五輪反対デモは金で動員されていた」というデマが拡散されてしまったことに対する見解を示し、デマによって誹謗中傷を受けている人々への名誉回復をNHKに促す最低限の責任がある。

 しかし、河瀨監督はこうした説明責任を果たさないままだというのに、番組内で島田角栄監督が取材のまとめ映像を見せる場面でも自分は問題の映像を見ていないのだと強調した挙げ句、「たくさんの登場人物の、唯一無二な時間の数々と向き合いながら、鋭意編集作業を進めています」「真摯に創作に打ち込みたい」などと言い募っているのである。ようするに、NHK同様、河瀨監督も、五輪反対デモを主催してきた市民団体や手弁当で参加した人々を傷つけたことの責任・自覚がまるでないのだ。

 ◆脚本無視でデモ参加者をヒステリックに描いた元旦ドラマ『相棒』の脚本家・太田愛は異議を表明!

 この姿勢はあまりに不誠実、いや下劣だと言わざるを得ない。ネット上では多くの人が指摘しているが、河瀨監督の下劣さは、今年の元旦に市民によるデモや抗議の場面を扱う際の指摘をおこなった脚本家・小説家である太田愛氏がコメントと比較すると、より際立ってくるものだ。

 太田氏は脚本を担当した『相棒20』(テレビ朝日)の元旦スペシャル「二人」が放送された直後に自身のブログを更新。そのなかで〈右京さんと亘さんが、鉄道会社の子会社であるデイリーハピネス本社で、プラカードを掲げた人々に取り囲まれるというシーンは脚本では存在しませんでした〉と公表した。 

 放送では、杉下右京(水谷豊)と冠城亘(反町隆史)がデイリーハピネス本社を出たところで、非正規差別を訴える女性たちがふたりを取り囲み、拡声器で「格差をなくせ!」とシュプレヒコールする場面があったのだが、太田氏によると脚本では〈あの場面は、デイリーハピネス本社の男性平社員二名が、駅売店の店員さんたちが裁判に訴えた経緯を、思いを込めて語るシーンでした〉といい、このシーンに込めた思いと、実際の放送での演出に抱いた苦々しい思いを以下のように綴った。

 〈現実にもよくあることですが、デイリーハピネスは親会社の鉄道会社の天下り先で、幹部職員は役員として五十代で入社し、三、四年で再び退職金を得て辞めていく。その一方で、ワンオペで水分を取るのもひかえて働き、それでもいつも笑顔で「いってらっしゃい」と言ってくれる駅売店のおばさんたちは、非正規社員というだけで、正社員と同じ仕事をしても基本給は低いまま、退職金もゼロ。しかも店員の大半が非正規社員という状況の中、子会社の平社員達も、裁判に踏み切った店舗のおばさんたちに肩入れし、大いに応援しているという場面でした。〉
〈自分たちと次の世代の非正規雇用者のために、なんとか、か細いながらも声をあげようとしている人々がおり、それを支えようとしている人々がいます。そのような現実を数々のルポルタージュを読み、当事者の方々のお話を伺いながら執筆しましたので、訴訟を起こした当事者である非正規の店舗のおばさんたちが、あのようにいきり立ったヒステリックな人々として描かれるとは思ってもいませんでした。同時に、今、苦しい立場で闘っておられる方々を傷つけたのではないかと思うと、とても申し訳なく思います。どのような場においても、社会の中で声を上げていく人々に冷笑や揶揄の目が向けられないようにと願います。〉 

 太田氏はこれまでも、『相棒』をはじめとする脚本や『天上の葦』(KADOKAWA)などの小説において、権力組織の暗部や暴走、メディアの情報統制、さらに翻弄される個人といった現在の社会状況を鋭くえぐりながらエンタテインメントに見事に昇華させ、評価を得てきた。そして今回、自身が作品に込めた思いとは裏腹に「か細いながらも声をあげようとしている人々」をヒステリックに演出されたことに対し、太田氏はわざわざ「今、苦しい立場で闘っておられる方々を傷つけたのではないか」「とても申し訳なく思います」と謝罪し、「どのような場においても、社会の中で声を上げていく人々に冷笑や揶揄の目が向けられないようにと願います」と思いを寄せたのだ。

 テレビドラマや映画の世界では演出家によって脚本が変えられることは日常茶飯事だが、それでも声をあげる市民が傷つけられ、冷笑や揶揄の目が向けられることがないようにと説明と注意をおこなうという作家としての社会的責任を果たした太田氏。一方、河瀨監督は、実際に自身の作品づくりがきっかけとなり、五輪反対の声をあげてきた市民に対し実害が及んでいる状況に陥っているにもかかわらず、問題を指摘する意見を「誹謗中傷」扱いした挙げ句、いまなお“NHKの責任であって自分は知らぬ存ぜぬ”を貫き、「真摯に創作に打ち込みたい」などと宣っている。両者の姿勢を比べれば、河瀨監督はあまりに無頓着かつ不誠実であり、これで「真摯な創作」など、どだい期待できるはずもない。

 ◆河瀬監督は五輪に反対する市民を「異端」「敵」「非国民」とでも考えているのか?

 いや、そもそも河瀨監督は今回の公式記録映画について「光の部分だけを描くのではなく、影を描くことも試されている」などと語ってきたが、五輪反対の運動をおこなってきた市民団体の思いや考えを掘り下げようという態度はまるでなく、デモや抗議の様子を「公式記録映画用の取材」だと許可をとることもなく撮影していたという声もあるほど。それどころか、今回のNHKの番組のなかで河瀨監督は「五輪を招致したのは私たち」などとIOC組織委員会、政治判断の責任を矮小化させて国民に転嫁させるという醜い発言までおこなっている。ようするに、河瀨監督は権力側の視点からしか五輪を捉えておらず、反対する市民などは「異端」「敵」「非国民」とでも考えているふしさえあるのだ。

 しかも、河瀨監督に対する疑念が深まっているのは、なぜ捏造がおこなわれた証言男性を取材しようと考えたのか、という点だ。 

 島田監督が本日公表したコメントによると、〈島田が取材対象を探す中で出会った方で、その場で取材を申し込み、後日、公園でのインタビューをさせて頂きました〉というが、一方、朝日新聞の取材に対するNHKの説明では、男性は撮影当時「過去に(五輪以外の)複数のデモに参加したことがあり、金銭を受け取ったことがある」「今後、五輪反対デモにも参加しようと考えている」といった趣旨の発言をしていたという。

 普通、五輪反対デモの参加者に話を訊こうと考えるのであれば、直接デモの場で参加者に声をかけて取材をオファーするのが確実な手段であるにもかかわらず、五輪反対デモに参加したこともない、さらには過去にデモで金銭を受け取っていたなどおおよそ「一般的なデモ参加者」とは思えないような人物を選び、取材を申し込んだのか。NHKが証言の捏造をおこなったこと以前に、公式記録映画の取材過程のこの時点で、チーム河瀨は「五輪反対デモは金で参加者を動員しているのではないか」という憶測や予断があった、あるいは「そうした証言が取れれば面白い」とでも考えていたとしか思えないのである。 

 つまり、『相棒』の制作陣が太田氏の脚本を無視して会社に対し抗議の声をあげる非正規の女性たちをヒステリックに描いたのと同じように、チーム河瀨にも恣意的な意図があり、さらにNHKは証言を捏造するという大きな一線を踏み越えたのではないか。そう考えずにはいられないのだ。

 『相棒』の問題を取り上げた11日付の毎日新聞のコラムで小国綾子記者は、〈デモや抗議行動を「うるさい」「意味がない」とバカにし、差別など不当な扱いを受けて怒りや悲しみをあらわにする人を「感情的」とあざ笑う空気は、現実社会にも広がっている。だから脚本も視聴者を意識し、変更されたのではないか〉と指摘していたが、安倍政権以降、テレビのワイドショーなどでは声をあげる人びとへの冷笑を促すようなコメント、番組の構成が増えていった。その行き着く先が今回の捏造問題だとすれば、これはNHKにかぎった問題ではないだろう。

 だからなのか、今回のNHKおよび公式記録映画の監督である河瀨氏に対する大手メディアの追及は、ほとんど見られない。だが、証言を公共放送が捏造したことは、マスコミを揺るがす重大事だ。BPOで審議されることはほぼ間違いないだろうが、それよりも前に、NHKと河瀨監督には、それぞれが取材にいたる過程をはじめとする経過についてしっかり検証をおこない、公の場であきらかにする責任があると強く言っておきたい。(編集部

 元稿:LITERA・リテラ(本と雑誌の知を再発見) 主要ニュース 芸能・エンタメ 【テレビ】  2022年01月12日  11:55:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【NHK】:「五輪反対デモ参加者」証言捏造の悪質性は“『ニュース女子』並み”! 

2022-01-18 07:15:30 | 【新聞社・報道・テレビ・ラジオ・NHKの功罪・マスコミ・雑誌・著作権】

【NHK】:「五輪反対デモ参加者」証言捏造の悪質性は“『ニュース女子』並み”! ■ふだんの厳重すぎるチェックと異常な落差 その理由は?

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【NHK】:「五輪反対デモ参加者」証言捏造の悪質性は“『ニュース女子』並み”! ■ふだんの厳重すぎるチェックと異常な落差 その理由は? 

 本サイトが6日配信記事で問題にした、東京五輪公式記録映画の監督を務める河瀨直美監督に密着したドキュメンタリー番組『河瀬直美が見つめた東京五輪』について、昨日9日、NHKが謝罪をおこなった。

NHK「五輪反対デモ参加者」証言捏造の悪質性はニュース女子並み! ふだんの厳重すぎるチェックと異常な落差 その理由は?の画像1

おわびを出したNHK大阪放送局(公式サイトより)

 あらためて振り返ると、問題となった番組はNHK BSが12月26日(30日に再放送)したもので、そのなかの公式記録映画のために河瀨監督から街の人びとへの取材を任された映画監督・島田角栄氏の取材シーンにおいて、「五輪反対デモに参加しているという男性」が匿名で登場。このシーンは島田監督が公式記録映画用に取材・撮影している現場をNHKが密着取材し撮影したかたちになっていたのだが、このシーンでは画面に「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」というテロップが映し出されたものの、問題の男性が肝心の動員された事実を語る映像は一切出てこなかった。 

 この放送に対し、ネット上では東京五輪の反対運動をおこなってきた団体やデモに参加した人たちが一斉に反発。本サイトでも、証拠なき印象操作であることを指摘し、NHKの責任を徹底追及していた。

 すると、昨日9日になってNHK大阪放送局は公式サイトにおいて、〈字幕の一部に、不確かな内容がありました〉とし、以下のように公表した。

〈映画の製作中に、男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕をつけました。NHKの取材に対し、男性はデモに参加する意向があると話していたものの、男性が五輪反対デモに参加していたかどうか、確認できていないことがわかりました。NHKの担当者の確認が不十分でした。〉

 なんと、問題の男性は五輪反対デモに「参加する意向があると話していた」だけだったにもかかわらず、NHKは「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と放送していた、というのである。 

 前述したようにNHKは「字幕の一部に不確かな内容」などと表現し、他メディアも「不適切な字幕」などと報じているが、これはそんなレベルではなく、どこからどうみても完全な「虚偽・捏造放送」であり、「第2の『ニュース女子』」とも言える重大事件だ。

 実際、沖縄基地反対運動で日当が支払われているかのような放送をおこなった『ニュース女子』(TOKYO MX)は、番組で「往復の飛行機代相当、5万円を支援します」と書かれているチラシが東京で配られていたこと、さらに普天間基地の周辺で「2万円」と書かれた茶封筒が発見されたことを紹介し、「反対派は日当を貰ってる!?」というスーパーや「これが事実なら反対派デモの人たちは何らかの組織に雇われているのか」とナレーションを付けたことが問題となったが、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会はこの放送を〈重大な放送倫理違反があった〉と判断。〈基地建設反対派は誰かの出す日当をもらって運動しているという疑惑を裏付けるものとは言いがたい。たとえスーパーに疑問符をつけていても、そのような疑惑を裏付けなしに提起することが不適切であることに変わりはない〉と指摘し、番組放送前に内容のチェックをおこなう考査において、TOKYO MXが〈抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった〉〈「日当」という表現の裏付けを確認しなかった〉ことを問題として挙げていた。

 対して、今回問題になっている河瀨監督のドキュメンタリー番組は、五輪反対デモに参加した事実すらないにもかかわらず、「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」などと放送したのだ。「不確か」「不適切」どころか、『ニュース女子』同様、重大な放送倫理違反が問われる内容であることは間違いないだろう。

 ◆政権批判には厳重すぎるチェックを行うNHK がなぜ事実確認せずに垂れ流しを?

 しかも、『ニュース女子』はネトウヨ番組を手掛けるDHCテレビが制作・完成版をUHF局のTOKYO MXに納品する「持ち込み番組」だったのに対し、今回の番組は公共放送として信頼度の高いNHK大阪放送局が制作・放送したものだ。そこであきらかな虚偽の内容を伝えたことの責任は計り知れないほどに重い。

 そもそも公共放送であるNHKでは民放とは比べものにならないほど厳しい考査を経て放送がおこなわれており、放送前には「試写を繰り返し、念には念を入れて事実確認や検証をおこなうことで知られている。つまり、普通ならば事前チェックの段階で、番組責任者や上司から証言映像もなくテロップで説明することの問題の指摘や男性の証言の裏付けをとったのかなどの確認がおこなわれているはずだし、それ以前に、『ニュース女子』問題でBPOが指摘していたように「抗議活動を行う側に対する取材の欠如」が指摘されていたはずだ。

 さらに、NHKは2014年5月放送の『クローズアップ現代』に発覚したやらせ問題を受け、翌2015年、調査をおこなった上で再発防止策を公表。そこでは〈「匿名化した映像」のチェックの導入〉を掲げ、〈全国の放送現場で「匿名での取材・制作チェックシート」を活用する〉ことを明記。このチェックシートでは「必要性の検討」「内容の真実性」「取材先はどんな人か」などの項目があり、〈取材・制作の担当者と上司などが、これらの項目に沿って検討・判断する。シートは制作責任者が最終確認し、上司の部長などが局内の文書保存要領に従って保管する〉としていた。また、この再発防止策では〈試写などによるチェックの強化〉も掲げており、〈取材制作担当者とは別の担当者や上司、局内で高い専門性を持つ者が参加〉する「複眼的試写」や、留意点を書き出して共有する「取材・制作の確認シート」の導入、「事前考査によるチェック」の充実などを挙げていた。

 ところが、今回の番組は、こうしたチェックを経ていたならば当然に撥ねられていたはずの内容を、平然と垂れ流してしまったのだ。 

 この背景には、NHKの政権迎合体質が関係しているとしか思えない。周知のように、NHKは、政権に不都合な報道には神経を尖らせ、2001年には日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷を取り上げた放送前のドキュメンタリー番組に内閣官房副長官だった安倍晋三から「勘ぐれ、お前」と政治的圧力をかけられ放送内容を改ざんさせたほか、2014年に菅義偉官房長官に鋭い質問を浴びせた『クロ現』の国谷裕子キャスターを降板させたり、森友の国有地不当売却問題でスクープを飛ばしたNHK大阪放送局の相澤冬樹記者(当時)の上司を恫喝したり、加計問題では「総理のご意向」文書を他社が報じる前に入手しながら肝心の部分を黒塗りにして報じるなど、忖度に忖度を重ねてきた。

 しかし、今回の虚偽・捏造放送の内容は政府やメディアが一体となって推し進めてきた「コロナ禍での五輪強行」への抗議を貶めるものであり、政権からは歓迎されこそすれ、クレームをつけられることはない。そうした認識がチェックの甘さを生んだのではないか。

 いずれにしても、いったいどんな過程を経て、問題の番組が放送にいたったのか、NHKは検証・説明をおこなう責任があるだろう。

 ところが、NHKが今回とった姿勢は、まったく納得がいかないものだ。何しろ、冒頭で紹介した謝罪文でも、昨日夜にNHK BS1で放送した2分の謝罪番組においても、説明は一切なし。今後検証をおこなうことさえ明言しなかったのだ。

 ◆NHKの謝罪は視聴者と河瀬監督らに対してだけ、五輪反対デモの主催団体には謝罪なし

 さらに、今回のNHKの対応がありえないのは、肝心の「謝罪」をおこなった対象だ。NHKの謝罪文には、こうある。

 〈番組の取材・制作はすべてNHKの責任で行っており、公式記録映画とは内容が異なります。河瀨直美さんや映画監督の島田角栄さんに責任はありません。
字幕の一部に不確かな内容があったことについて、映画製作などの関係者のみなさま、そして視聴者のみなさまにおわびいたします。〉 

 言うまでもなく、あたかも金で動員されていたかのように放送されたことによって名誉を傷つけられたのは、五輪反対デモをおこなってきた市民団体や参加した人びとだ。しかし、NHKはそうした市民団体や参加者に対する取材を怠ったことや虚偽・捏造放送によって名誉を傷つけたことには何ら言及せず、むしろ「河瀬監督や島田監督には責任がない」と強調した挙げ句、映画製作関係者と視聴者にお詫びしたのである。

 ちなみに今回の公式記録映画は、製作は国際オリンピック委員会、企画は大会組織委員会、制作は木下グループだ。ようするに、NHKは虚偽・捏造放送によって市民運動グループやデモ参加者に対して重大な名誉毀損を起こしながら、そちらには一言も詫びを入れず、視聴者も二の次で真っ先にIOCや組織委らに謝罪したというわけだ。

 この信じがたい暴挙に、2013年から反対運動をおこなってきた東京の市民グループである「反五輪の会」は昨晩、Twitterで〈「金銭で動員」と印象付けられ貶められた私たちに対しては一言もなく、名誉は未だ毀損されたままです〉と指摘。準備していたという抗議文を公開したが、そこにはこう綴られている。 

 〈同番組内では私たちの抗議行動の映像を繰り返し無断使用した上で、当該インタビューのみをデモ参加者の声として紹介していることから、あたかも、私たちのデモが金銭による動員であったと印象付ける内容になっています。
実際、SNS等では、私たちや、五輪反対の意思を表明する人々などに対して「お金で動員された矜持もなにもない集団」「潔白を自ら証明しろ」「民意をゆがめようという工作が何者かによって行われている」という事実に基づかない誹謗中傷が数多く発せられました。〉
 〈私たちのみならず、全国、全世界で多数の団体・個人が反対の声を挙げてきました。
 私たちは、この番組内容が、私たちの活動や主張、五輪反対運動に自発的に参加した多くの団体・個人の名誉を毀損する、非常に悪質なものであると考えます。〉

 あまりにも当然すぎる抗議だが、しかし、NHKにはまるで反省はなく、むしろいまだに名誉毀損行為をつづけている。朝日新聞の取材に対しNHKは、なんと、こんな説明をおこなっていたのだ。 

 〈テロップは担当ディレクターが独自に補足取材した内容に基づいて作成したが、実際には、男性が五輪反対デモに参加した事実は確認できていなかったという。
放送後、視聴者から複数の問い合わせが寄せられたため、NHKは今年1月に再び男性に取材。その過程で、男性が撮影当時、「過去に(五輪以外の)複数のデモに参加したことがあり、金銭を受け取ったことがある」「今後、五輪反対デモにも参加しようと考えている」といった趣旨の発言をしていたことが判明。字幕の内容とは異なっていたという。〉

 この期に及んで、無責任にもほどがあるだろう。男性が撮影当時、「過去に(五輪以外の)複数のデモに参加したことがあり、金銭を受け取ったことがある」「今後、五輪反対デモにも参加しようと考えている」といった趣旨の発言をしていた、と公表するのであれば、NHKはその発言に裏付けはとれているのかにも言及・説明すべきだ。ところが、その説明がないせいで、今度はあたかも「五輪以外のデモで金が支払われていた」「男性がもし五輪反対デモに参加していれば金が払われていた可能性がある」かのように情報が流布する状況を生んでしまったのだ。

 そもそも「謝罪文」でも〈男性はデモに参加する意向があると話していたものの、男性が五輪反対デモに参加していたかどうか、確認できていないことがわかりました〉などとし、いまだに五輪反対デモに参加したか否かさえはっきりさせていないこと自体が無責任極まりないのだが、その上、さらなるデマを拡散しかねない説明をおこなうとは……。

 ◆いまだ説明のない河瀨直美監督、一方、和田政宗はじめネトウヨはデマ拡散も…

 だが、無責任なのはNHKだけではない。たしかに今回の虚偽・捏造放送の責任はNHKにあるものだが、問題の男性の取材は公式記録映画のためにおこなわれたものであり、当然ながら河瀨監督には「どうやってこの男性を見つけ出し、取材しようと考えたのか」「取材後に証言の裏付け確認はおこなったのか」「どうして五輪反対運動をおこなってきた市民団体に話をじっくり訊こうとしなかったのか」などなど、説明すべき問題は山程あり、同時に説明する責任がある。

 しかし、既報でも伝えたように、河瀨監督は5日、〈めちゃくちゃ面白かった!自分達に都合が悪いとすぐBPOだの放送倫理違反だの言ってくる人たちの誹謗中傷に負けずこれからも頑張ってください〉というあるTwitterユーザーの投稿を引用リツイートし、〈はい(キラキラマーク)〉と返信。昨日NHKが謝罪し、実際にBPOが審議すべき放送倫理違反が問われる事態となっているというのに、本日10日の18時時点では、この問題に対して何の反応もおこなっていないのである。 

 このように、これほどの問題を引き起こしながら、無責任な姿勢を貫くNHKと河瀨監督。だが、今回の放送によって「東京五輪の反対デモは金で動員されていた!」などというデマがネット上で拡散され、自民党和田政宗・参院議員という国会議員までもが〈事実なら民意をゆがめようとする工作が何者かによって行われていたということ〉などとデマを喧伝。その結果、市民団体や参加者が謂れのない誹謗中傷を受けているのだ。しかも、NHKが市民団体やデモ参加者に謝罪もせず、問題を有耶無耶にしているせいで、ネトウヨたちはさらなる攻撃を開始している。

 実際、和田議員のツイートを拡散させていた安倍応援団のジャーナリスト・門田隆将氏は本日、〈左翼の猛烈な抗議でNHKが白旗らしい。それなら反対運動のデモにはお金が支払われています、との新テーマでやり直しなさい〉と投稿。同じく安倍応援団の有本香氏も、NHKが謝罪したことを受けて、〈謝罪がかえって墓穴掘ったね。要するに、いろいろなデモで参加者にお金が支給されていて、この男性のように小遣い稼ぎ感覚で「今度はあれ行こうかな」とする人がいたということ〉などとツイートをおこなっている。 

 すでに拡散されてしまったデマや、謝罪後に吹き上がっている新たなデマや印象操作、誹謗中傷を、いったいNHKと河瀨監督はどうやって責任をとるつもりなのか。謝罪になっていない謝罪文だけで問題を終わらせるわけには到底いかないだろう。(編集部

 元稿:LITERA・リテラ(本と雑誌の知を再発見) 主要ニュース 社会 【ジャーナリズム】  2022年01月10日  07:06:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【疑念】:年末年始も吉村知事を大スター扱いの在阪テレビ!  ■コロナ死亡者ワースト1なのに「被害を最小化」と絶賛 東野&ブラマヨ吉田も…

2022-01-18 07:15:20 | 【地方自治・都道府県市町村・地方議会・議員年金・デジタル田園構想・地方地盤沈下】

【疑念】:年末年始も吉村知事を大スター扱いの在阪テレビ!  ■コロナ死亡者ワースト1なのに「被害を最小化」と絶賛 東野&ブラマヨ吉田も…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【疑念】:年末年始も吉村知事を大スター扱いの在阪テレビ!  ■コロナ死亡者ワースト1なのに「被害を最小化」と絶賛 東野&ブラマヨ吉田も…

 ついに恐れていた新型コロナ第6波がはじまったが、またも不安の声が高まっているのが大阪感染状況だ。昨日8日、大阪府の新規感染者数は891人と、約4カ月ぶりに800人台に。東京都も同じく約4カ月ぶりに1200人超えの1224人となったが、人口比でいえば大阪のほうが多い状況だ。

年末年始も吉村知事を大スター扱いの在阪テレビ! コロナ死亡者ワースト1なのに「被害を最小化」と絶賛 東野&ブラマヨ吉田も…の画像1

『直撃!池上彰×山里亮太〜どーなる?2022ニュースな人〜』(毎日放送)に出演の吉村知事

 しかも、大阪府の吉村洋文知事は、7日に府の独自基準である「大阪モデル」の黄色信号を8日に点灯して警戒を呼びかけることを決定し、「大阪版GoTo」である「大阪いらっしゃいキャンペーン」の新規予約中断を発表したが、すでに予約済みの人には「キャンセルは求めない」とコメント。まん延防止等重点措置の要請についても、医療提供体制が逼迫していないことなどから「要請する段階ではない」としている。 

 通天閣や大阪城のライティングを黄色にすることに感染拡大防止の大きな期待ができるわけもないのだが、問題なのは吉村知事の危機感のなさだ。1月1日は70人だった新規感染者がたった1週間で12倍以上に達していることを考えれば、またも病床不足に陥るのは時間の問題だ。また、「オミクロン株はかかっても軽症。重症化リスクは低い」など楽観視するメディアもあるが、感染者数が増えれば中等症・重症者の数も増えるのは当たり前の話だろう。

 そもそも、それでなくても大阪は「人口当たりのコロナ死亡者数」が全国ワースト1であることからもはっきりしているように、吉村知事の失策によって多大な犠牲を生んできた。にもかかわらず、この期に及んでもその反省に基づいた危機感がまるで感じられないのだ。

 だが、それも当然なのかもしれない。医療を受けられないまま自宅で亡くなるという人を続出させるという惨事を巻き起こしておきながら、昨年の衆院選で大阪では維新が大躍進したように、吉村知事は批判の的になるどころか、むしろ大きな支持を受けている。ようするに、どれだけ犠牲者を出しても支持は盤石だと高をくくっているのだ。

 無論、この吉村人気を支えているのが、在阪メディアによる報道だ。そして、オミクロン株の感染爆発が心配されていたこの年末年始にも、関西では「異常」としか言いようがない光景が繰り広げられていたのである。

 まず、12月から正月明けの1月4日までのあいだに吉村知事が出演した番組を挙げよう。

 12月7日『報道1930』(BS-TBS
 12月10日『かんさい情報ネットten.』(読売テレビ
 12月11日『あさパラS』(読売テレビ)
 12月20日『キャスト』(朝日放送)
 12月27日『報道ランナー』(関西テレビ
 12月29日『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日
   1月  1日『東野&吉田のほっとけない人』(毎日放送)
     1月  3日『直撃!池上彰×山里亮太〜どーなる?2022ニュースな人〜』(毎日放送)
     1月  3日『2022年は吉か?凶か?爆願!生ニュース大明神』(朝日放送)
     1月  4日『復活なるか!? 関西経済〜財界フォーラム2022〜』(朝日放送)

 なんと、その数10本。吉村知事は12月に入ってからも人気タレントばりにテレビ出演し、とくに正月には特番内で大特集が組まれるような状況だったのだ。

 ◆大阪府は死亡者数ワースト1なのに「被害を最小化」と吉村知事を絶賛

 しかも、その正月特番における吉村知事の取り上げられ方は、これまでの吉村知事のコロナ対策について鋭く切り込むわけでも、死亡者数ワースト1という重大問題を指摘するでもなく、ただただ「大スター」であるかのように扱いつづけたのである。

 たとえば、テレビ朝日系の朝日放送が1月3日に放送した『2022年は吉か?凶か?爆願!生ニュース大明神』では、司会の赤江珠緒が「積極的なコロナ対策で支持を集めた吉村知事」と紹介し、コーナーVTRを放送。そのVTRのナレーションは、こんなふうにはじまる。

 「新型コロナウイルスの影響で未曾有の危機に瀕したニッポン。そんななか、吉村知事は、感染状況を示す独自の基準『大阪モデル』を設けるなど、コロナ対策で手腕を発揮!」

 本サイトでは何度も指摘してきたが、「大阪モデル」は感染状況が悪くなるたびに吉村知事が恣意的に基準変更しつづけてきたシロモノでしかないのだが、あ然とさせられたのは、そのナレーションが読み上げられた画面上には、デカデカと「「大阪モデル」などで被害を最小化」と打ち出されていたことだ。

 被害を最小化!? 死亡者数ワースト1で? ……もはや言葉を失うほかないが、すごいのはこのあと。VTRでは「コロナ対応で評価する政治家」のランキングで見事1位に輝いただけではなく、「総理大臣になって欲しい人」アンケートでも「国会議員でもないにもかかわらず堂々の4位に」などと紹介。選挙時に街頭演説で聴衆に手を振る吉村知事の映像にナレーションで「コロナ禍の窮地ながら吉村知事の評価は鰻のぼりに!」とかぶせたあとに街の声を流したのだが、それはこのようなものだった。

 「頑張ってくれている。大阪の希望」
 「維新が独占している状況も吉村さんがつくっている。大阪ではスーパースターですからね」

 そして、ナレーションは「一方、吉村知事の評価とは裏腹に大阪はコロナで致命的な状況に」と言い出し、外国人観光客の減少、地下変動率の下落、倒産件数やコロナ関連経営破たん数、完全失業率が全国ワースト2位となっていることを紹介。ここで再び街の声を流したが、それも「吉村さんは言葉はうまいけど、もうちょっと頑張ってほしい」というものだった。

 言うまでもなく、大阪の経済が悪化しているのはインバウンドに頼り切ってきただけではなく、感染を抑え込むことこそが最大の経済対策であるというのに吉村知事がそれを軽んじてきた結果だ。だが、番組では「吉村知事の評価とは裏腹に大阪経済が致命的な状況に」などとし、経済悪化を吉村知事の責任から切り離すかのように伝えたのだ。

 もちろん、スタジオでのトークでも、吉村知事は「コロナ対策に明け暮れた1年だったなと思います」「社会経済のバランスと感染を抑えるバランス、本当に難しいけど追及していきたい」などと、「お前が言うか」とツッコミを入れずにはいられない発言の連続だったが、何か指摘するような者はスタジオには誰ひとりおらず、それどころか大阪・関西万博の話題に移ると、「空飛ぶクルマ」だの「乗るだけで10歳若返るためのアドバイスがもらえるあアトラクション」の紹介をはじめる始末。

 ◆吉村知事に朝日放送は「今モテ期?」、毎日放送は「アイドルみたい」

 さらに、「視聴者から届いた質問」も、「1週間休みになったら何がしたいですか?」「スピード感を持って政策を進められる秘訣は何でしょうか?」「座右の銘は?」といったどうでもいいものばかりで、やはり府政に異を唱えるような質問はゼロだった。

 この番組を放送した朝日放送は、年末の12月20日に放送した『キャスト』でも吉村知事と松井一郎大阪市長を一緒に生出演させ、質問コーナーで「万博で大阪はV字回復する?」「維新運営のパートナーは松井代表しかいない?」「密かに総理の座狙っている?」などという愚問を並べ立てた上、吉村知事に「今モテ期だと思う?」と質問。これにはTwitter上でも批判の声が出ていたが、もはや呆れ返るしかないだろう。

 だが、この絶句するような放送は、この番組だけではなかった。松井市長にたびたび攻撃対象にされているTBS系の毎日放送も、同じく1月3日に『直撃!池上彰×山里亮太〜どーなる?2022ニュースな人〜』で吉村知事をリモート出演させたのだが、こちらの番組のVTRでは、「なにわのプリンスこと吉村洋文・大阪府知事」と紹介。“大学時代は橋下徹と同じくラガーマンだった”だの、インスタライブで「健康維持の方法は寝る前にお菓子を食べること」と語る吉村知事の映像を流して“SNSでの発信が若者にも刺さると評判を呼んでいます”だのと伝え、スタジオでは「アイドルみたい!」という声もあがるほどだった。

 しかも、番組MCの池上彰が投げかけた質問も、「橋下さんは反面教師?」「辻元清美さんのことは嫌い?」「なぜ維新代表戦に出馬しなかった?」「維新のトップになるつもりは?」という体たらくで、厳しめの質問でもせいぜい「大阪版GoTo拡大して大丈夫?」「“うがい薬”会見について」という生ぬるいもの。挙げ句、最後には「万博を成功させるカギは何だと思いますか?」と万博の宣伝に誘導する始末だった。 

 いや、もっと酷かったのは、やはり毎日放送が1月1日の元旦に放送した『東野&吉田のほっとけない人』だろう。

 この番組では、吉村知事だけではなく松井一郎市長と橋下徹・元大阪市長という“維新御三家”が揃い踏み。対する番組MCである東野幸治ブラックマヨネーズの吉田敬吉本興業のなかでもとくに維新に近い芸人であり、吉田は初っ端から松井・吉村・橋下が3人並んだ絵面を見て「ドラゴンボールで言ったら悟空・悟飯・悟天」などと評していた。

 そして、御多分に洩れずこの番組のVTRでも「去年は新型コロナの対応に追われつづけた知事と市長。身体のほうは大丈夫? ちゃんと休めてる〜?」などとナレーション。市民が教えてほしいのは「松井市長は平日の“公務日程なし”の日は仕事もせずに何をやっているのか」「いまも公用車でサウナ通いしているのか」ということのほうだが、番組は「身体は大丈夫? ちゃんと休めてる〜?」と心配するのである。
 
 これだけでもうお腹がいっぱいだが、その後のトークでは、橋下氏が「吉村さんはつねに自分がどう映ってるかってことを計算していますから」と言うと、松井市長も「吉村さんのインスタを見たらよくわかる。完全にアイドルになってますから!」などと吉村イジリを展開し、これに東野が大爆笑。吉村知事が「寝られない日はありました」と口にすると、松井市長が「NETFLIXの見すぎやろ?」とツッコミを入れ、またも東野は「どんだけボケんねん」と大喜びする……という具合だった。

 ◆御用芸人・東野幸治&ブラマヨ吉田敬の露骨な都構想ヨイショに吉村知事は…

 無論、「文通費問題」に話題がおよんでも、吉村知事が過去に「月はじめの1日に衆院議員を辞任、満額100万円を受け取っていた」問題は完全にスルー。大阪万博の話題では吉田が「万博なんか楽しみでしかない」と語った。

 だが、この番組のハイライトは、2度も住民投票で否決された「都構想」の話題になった場面だろう。東野は「不思議なもんで、二重行政が問題だから大阪を良くしようと都構想をがんばった結果、二重行政なくなったけど、『このままでええやん』っていう」などと発言。吉村・松井体制を支持する民意によって都構想は否決されてしまったとばかりに語ったのである。

 こうしたヨイショに気を良くしたのか、吉村知事は選挙によって知事と市長は「すぐにねじれる」と言い、こんなことを宣言したのだ。

 「そうなったときは、これは都構想です」
 「僕が維新の代表じゃなくなる日はおそらく来ますけど、大阪維新の会は都構想をこれからも掲げ続けます。最後まで」

 言っておくが、吉村知事は2020年の「都構想」住民投票で否決の結果になった際、会見で「反対派の方の大阪市を残すべきだという熱量が、僕らより強かった。僕たちが掲げてきた『大阪都構想』はやはり間違っていたんだろうと思います」とはっきり語っていたのだ。その「間違っていた」と認めたはずの「都構想」を、知事と市長が「ねじれ」たときには必要だ、今後も大阪維新の会として掲げていく、と述べたのである。

  しかも、このツッコミどころしかない発言に対して、吉田は「ねじれたときに我々が気づくことっていうのはたくさん出てくる」などとコメント。──こんな「維新の特番」以外の何ものでもない番組が、元旦の真っ昼間から公共の電波で垂れ流されたのだ。

 本サイトでも伝えたように、昨年末に大阪府は読売新聞と「包括連携協定」を結び、読売新聞に対して「権力監視の役割が果たせるのか」「メディアの役割を放棄した自殺行為だ」という批判が巻き起こっている。そして、本サイトでは「読売が吉村知事のPRの場となるのではないか」「今後、連携協定を結ぼうとする他社が出てくることも十分考えられ、そうなれば、まともな報道はなくなって大本営発表に埋め尽くされていくだろう」と指摘した(既報参照→https://lite-ra.com/2021/12/post-6116.html)。だが、もはや連携協定など結ばずとも、在阪テレビ局はメディアの役割などとっくに捨てて、進んでこのような「吉村礼賛」番組を放送しているのだ。

メディアが「維新府政の犬」に成り下がり、吉村知事を持ち上げつづけるかぎり、大阪のコロナ対応の問題点が改善されることはないだろう。(編集部

 元稿:LITERA・リテラ(本と雑誌の知を再発見) 主要ニュース 社会 【マスコミ】  2022年01月09日  05:43:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【新型コロナ】:沖縄で1400人超の感染爆発でも岸田首相は「在日米軍が原因と断定するのは難しい」 

2022-01-18 07:15:10 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【新型コロナ】:沖縄で1400人超の感染爆発でも岸田首相は「在日米軍が原因と断定するのは難しい」 ■米軍にも言うべきこと言う韓国とは大違い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【新型コロナ】:沖縄で1400人超の感染爆発でも岸田首相は「在日米軍が原因と断定するのは難しい」 ■米軍にも言うべきこと言う韓国とは大違い

 水際対策の強化や「アベノマスク」廃棄決定などによって「安倍・菅よりマシ」と評価の声もあがってきた岸田文雄首相だが、ここにきて、いよいよこの男の化けの皮が剥がれた。

沖縄で1400人超の感染爆発でも岸田首相は「在日米軍が原因と断定するのは難しい」 米軍にも言うべきこと言う韓国とは大違いの画像1

首相官邸HPより

 岸田首相は昨日6日、沖縄県と山口県、広島県から「まん延防止等重点措置」を適用するよう要請があったと発表したが、そのぶら下がりにおいて、沖縄の感染状況と米軍基地の関係について質問が飛ぶと、こんなことを言い出したからだ。 

 「政府としては米軍側の全ゲノム解析の結果を待っているところであり、現時点で感染拡大の原因や感染ルートを断定するということは難しいと思っている」

 なんと、この期に及んでも、沖縄の感染拡大の原因が米軍にあることを認めようとはしなかったのだ。

 言わずもがな、沖縄県と山口県、広島県で突出して感染が急拡大しているのは、あきらかに米軍基地の影響だ。実際、沖縄では12月中旬から米軍基地で大規模クラスターが発生し、1月3日までのあいだに県内基地9施設で確認された感染者は計832人に。これは山口県も同様で、米軍岩国基地でも米軍施設関係者529人の感染が確認されており、県内の感染者は基地のある岩国市を中心に拡大。これが隣接する広島県にも拡がっていると見られている。つまり米軍基地から外への「染み出し」によって市中感染が拡大しているというわけだ。

 そして、これには裏付けとなるデータも出てきている。4日に会見をおこなった岩国市の福田良彦市長は、「感染した米軍岩国基地日本人従業員と飲食店従業員のゲノム解析で型が同一だったことから、オミクロン株が基地内の感染者を通じて市中に漏れた可能性が高い」と公表しているからだ。

 にもかかわらず、岸田首相は「米軍側の全ゲノム解析の結果待ち」という理由で「感染拡大の理由が米軍だとは断定できない」などと寝言を言っているのである。アメリカのご機嫌取りに終始してきた安倍首相や菅首相と、いったい何が違うというのだろうか。

 いや、そもそも本日の新規感染者が1400人を超えるという大変な状況になっている沖縄の感染拡大をはじめ、米軍基地からの染み出しを原因とした感染拡大は、あきらかに岸田首相に大きな責任がある。

 前述したように、沖縄では12月16日以降、キャンプ・ハンセンで大規模クラスターが発生したが、その後も米軍関係者は基地外の街に繰り出し飲食する姿が目撃されており、さらには複数の飲酒運転まで発覚。ところが、岸田首相は「水際対策の強化」を打ち出しながら、一方で在日米軍の問題は見て見ぬふりをし、同月22日になって林芳正外相が在日米軍のラップ司令官との電話会談をおこない、感染者が発生した米軍部隊がアメリカ出国時と日本入国時にPCR検査を実施していなかったと公表したのだ。

 ◆在韓米軍は隔離終了前に韓国側がPCR検査実施、一方在日米軍はアメリカに丸投げ

 説明しておくと、日米間には米軍の特権的な地位を定めた「不平等条約」である日米地位協定により、在日米軍には検疫を含めて国内法が適用されない。そのため、2020年7月に日米両政府はコロナ対策で在日米軍は「日本側と整合的な措置」をとると合意していた。だが、それを一方的に破られていた、というわけだ。

 言っておくが、これは異常事態だ。というのも、地位協定は米韓でも結ばれているが、昨年12月24日放送の『報道1930』(BS-TBS)の取材によると、在韓米軍は出国時に検査を実施し、入国時もアメリカ側がPCR検査を実施。しかも、10日間の隔離終了前には、韓国側がPCR検査を実施しているというのだ。

 一方で在日米軍の場合は、日本側による変異株検査を拒否。10日〜14日間の行動制限のみで、検査は5日目の一度のみで実施は米軍側。また、行動制限中も施設区域内の移動は自由で、ワクチン2回接種済みなど一定の条件のもと基地内でマスクを外しての活動も認めていたという。

 ようするに、同じく地位協定を結んでいる韓国は出国時・入国時・隔離終了時と3回も検査を実施(しかも、うち1回は韓国側が検査)しているというのに、日本は在日米軍に任せきりで対策を放置。その結果、このようなことになってしまったのだ。

 こうした対応の違いについて、沖縄国際大学の前泊博盛教授は「自国の主権を強調し、米軍に改善を求める姿勢の違いが日韓両政府の間で表れたのだろう」と指摘しているが(琉球新報2021年12月31日付)、いかに日本が「主権なき国家」であるかがコロナ対策でもはっきりしたと言えるだろう。

 だが、日本の「在日米軍への犬っぷり」はこれだけではない。林外相は22日の会見で“感染者が確認された部隊では出入国時にPCR検査が実施されていなかった”としていたが、24日には多くの新聞朝刊が「すべての在日米軍の出入国時にPCR検査が実施されていなかった」「多くの部隊が未検査」と報道。すると、24日の閣議後会見で林外相はその事実をようやく認め、さらには、じつは2021年9月3日から米出国時検査を免除していたと公表したのだ。

 どうして22日の時点でこのような重要な事実を確認・公表しなかったのか、あまりにも杜撰だとしか言いようがないが、しかし、林外相はあたかも「私が強い遺憾の意を直接ラップ司令官にもお伝えをした」結果として判明したかのように強調したのである。

 これだけでも岸田政権の弱腰ぶりが見て取れるが、さらに驚くのはこのあと。沖縄県の玉城デニー知事は12月21日に日本政府と在沖米軍に対して「収束まで米本国から県内への軍人軍属の移動停止」「基地外への外出禁止」などを要請していたのだが、林外相が在日米軍関係者の外出制限を含む感染防止対策の強化をアメリカ側に申し出たのは、なんと昨日6日午前のこと。さらに、在日米軍が「基地外でのマスク着用を義務化」したのも、昨日になってのことだ。

 ようするに、さんざん岸田政権は在日米軍に対して「強い遺憾」を伝えたと主張し、メディアも「岸田首相が在日米軍の対応に憤慨」などと伝えてきたが、たんに怒っているフリをしているだけで、何も結果に結びついていなかったのである。つまり、「怒ってる感」による「やってる感」でしかないのだ。

 ◆在日米軍への「思いやり予算」は年約220億円増の2110億円の一方、沖縄への交付金は219億円減

 実際、昨日のぶら下がりで岸田首相は、記者から今回の感染拡大と在日米軍の関係から日米地位協定の改定を検討するかと問われると、「日米地位協定の改定等は考えていない」と断言。「日米の間でしっかり意思疎通を図って、現実的に具体的に対応していくことが大事」「実態を把握して、いまの現実のなかで最善の対応を考えていくことが政府として優先で考えるべきこと」などと述べた。

「現実的に具体的に対応していくことが大事」って、昨年から沖縄は深刻な状況になることが十分予想されていたにもかかわらず、政府の弱腰でほとんど何も対応できていないというのに、この男は何をほざいているのか。

 その上、この期に及んで日米地位協定を放置しようとは──。岸田政権は2022年度からの在日米軍駐留経費負担、いわゆる「思いやり予算」を前回協定より年220億円近くも増額させた年平均約2110億円(5年間の合計約1兆550億円)とすることでアメリカと合意。その一方で、辺野古新基地建設に反対する沖縄県に嫌がらせするかのように沖縄振興一括交付金を219億円も減額した。その姿勢は、沖縄に嫌がらせをしてきた安倍・菅政権とまったく変わりないものだが、「水際対策の強化」をあれだけ打ち出しながら日米地位協定には手をつけようともしない岸田首相のこの態度こそが、沖縄の新規感染者数が1400人超えという凄まじい結果を生んだのだ。

 つまり、「安倍・菅よりマシ」などではなく、岸田も相当酷いのだが、問題なのは、対在日米軍に対する岸田政権の弱腰っぷりや日米地位協定の問題を、メディアがほとんど深掘りしていないことだ。

 メディア、とくにワイドショーではコロナ初期からパチンコ店や接待を伴う飲食店、河原でバーベキューをする一般市民や繁華街に集まる若者などをさんざんやり玉に挙げるなどしてきたが、ここまであからさまに米軍基地感染拡大の要因となっているというのに、それはまったく問題視しようとしない──。これまでも、沖縄で在日米軍関係者による殺人事故が起こるたびに日米地位協定の問題が浮き彫りになってきたが、メディアが政権の意向に沿うかたちの報道をつづけた結果、協定見直しの世論が高まることはなかった。かたや韓国では、前述したようにコロナ対策で出入国時、隔離機関終了前の検査を実施しているだけではなく、世論の高まりに後押しされて政府がアメリカと粘り強い交渉をつづけた結果、殺人や強かん、誘拐、放火、強盗、飲酒運転による死亡事故などの犯罪を在韓米軍関係者がおこなった際、その容疑者の身柄を起訴前に韓国側に引き渡せるよう規定が改められるなどの成果をあげているのに、である。

 岸田首相の在日米軍に対する大甘な対応と日米地位協定の見直し拒絶、そしてこの問題を問題として大きく取り上げないメディア。いったいこの国はいつまで主権を差し出しつづけ、その負担を沖縄に押し付けつづけるつもりなのだろうか。(編集部

 元稿:LITERA・リテラ(本と雑誌の知を再発見) 主要ニュース 社会 【社会問題・医療・新型コロナウイルスの感染拡大・沖縄の感染拡大の原因が米軍にあることを認めようとはしなかった】  2022年01月07日  08:45:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

 

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【東京五輪】:NHKで河瀬直美監督「五輪を招致し喜んだのは私たち」発言に批判殺到!

2022-01-18 07:15:00 | 【新聞社・報道・テレビ・ラジオ・NHKの功罪・マスコミ・雑誌・著作権】

【東京五輪】:NHKで河瀬直美監督「五輪を招致し喜んだのは私たち」発言に批判殺到!  ■番組は「五輪反対デモは金で動員」と印象操作

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京五輪】:NHKで河瀬直美監督「五輪を招致し喜んだのは私たち」発言に批判殺到!  ■番組は「五輪反対デモは金で動員」と印象操作

 この年末年始、再び多くの人びとが怒りの声をあげる事態が起こった。映画監督の河瀨直美とNHKに対する怒りだ。

 というのも、BS-NHKは12月26日(30日に再放送)に東京五輪公式記録映画の監督を務める河瀨氏に密着したドキュメンタリー番組『河瀬直美が見つめた東京五輪』を放送したが、そのなかで河瀨氏は「五輪を招致し、喜んだのは私たち」などと反対派の声をなきものとして語った。そのうえ番組は、なんと「東京五輪の反対デモにお金で動員されていた人がいた」と報道。しかも、それがあまりにも杜撰かつ怪しすぎる内容だったからだ。

NHKで河瀬直美監督「五輪を招致し喜んだのは私たち」発言に批判殺到! 番組は「五輪反対デモは金で動員」と印象操作の画像1

番組HPより

 まず、河瀨監督についてだが、本サイトでも以前取り上げたように(過去記事参照→https://lite-ra.com/2021/06/post-5910.html)、東京五輪開催前の昨年6月に出演した『スッキリ』(日本テレビ)でも「オリンピック憲章に書かれた本当の意味のアスリートファーストのオリンピックというのは非常に素晴らしい、感動的だ」などと熱く語る一方、「コロナの不安をオリンピックにぶつけるという不満というのは、少し棲み分けないといけない」と世界的パンデミック下で五輪を開催することに不安を抱く人たちの感情を八つ当たり扱い。東京五輪の開催によって新規感染者数は急増し、医療崩壊が巻き起こったが、その最中だった8月中旬に出演した『報道ステーション』(テレビ朝日)でも河瀨監督は「渋谷は若い人たちですごい状態」「みんなの意識が低くなっている」などと発言していた。

 結果、8月だけでも医療崩壊によってコロナで自宅死した人が250人にものぼり、まさに東京五輪に反対した人びとの危惧が的中したかたちとなったわけだが、しかし河瀨監督は今回のドキュメンタリーのなかで、こんなことを言い出したのだ。

 「日本に国際社会からオリンピックを7年前に招致したのは私たち」
「(開催が決まって)喜んだし、ここ数年の状況をみんなは喜んだはず」
「これはいまの日本の問題でもある。だからあなたも私も問われる話。私はそういうふうに(映画で)描く」

 「私たち」が招致して、開催が決まって「みんな」が喜んだ……!? 言わずもがな、招致に動いたのは森喜朗だの石原慎太郎だの安倍晋三だのといった五輪利権や政権浮揚しか頭にない政治家たちであって、断じて「私たち」ではない。そして、「復興五輪」を掲げながらダシに使われただけの被災地や、五輪に伴う再開発で霞ヶ丘団地からの立ち退きを迫られた高齢者たち、さらに利権まみれな上に国威発揚に利用される国策五輪を批判する人びとなど、東京五輪に反対を唱えてきた人も数多くいた。なのに、河瀨監督は「みんなは喜んだはず」「あなたも私も問われる話」などと乱暴にひとまとめにしたのだ。 

 当然、この発言には怒りの声がSNS上に広がり、「#五輪を招致したのは私達ではありません」というハッシュタグが正月早々トレンド入りする事態となったのである。

 東京五輪の開催をさんざん後押ししてきた上に、反対してきた人びとの存在などなかったかのごとく責任を全体に押し付ける──。だが、河瀨監督はもともと「体制寄り」を隠そうともしてこなかった人物だ。

 実際、前述した本サイト記事でも指摘したが、以前からスピリチュアルへの傾倒が指摘されてきた河瀨氏の作品に惚れ込んだひとりが安倍昭恵氏で、2015年には自ら河瀨氏と対談したいと「AERA」(朝日新聞出版)に企画を持ち込んだほど。そして、安倍首相が昵懇だった俳優の津川雅彦氏を統括に据え、津川氏の国粋主義や日本スゴイ思想も盛り込まれたパリでの展覧会「ジャポニスム2018」にも河瀨氏は参加し、作品が特集上映された。河瀨氏が東京五輪の公式記録映画の監督に就任したと発表されたのは、この「ジャポニスム2018」で特集上映が開始される1カ月前のことだ。

 ◆河瀬直美監督は安倍昭恵のお気に入り 「日本人が本来持つ精神性やアイデンティティーの大切さを訴えたい」と語ったことも

 さらに、河瀨監督は公式記録映画のテーマについて語った産経新聞インタビューでも「コロナ禍を克服した証しとしての東京五輪の姿を後世に残すとともに、日本人が本来持つ精神性やアイデンティティー(同一性)の大切さを訴えたい」などと発言。これは日本人が固有の精神性や同一性を持っているという、異文化差別、少数民族排除につながりかねないものだが、ようするに河瀨監督は安倍元首相をはじめとするネトウヨ政治家極右言論人とほとんど変わりがない考えの持ち主なのだ。

 そう考えれば、河瀨監督が権力側と一体化したかたちで東京五輪の開催を声高に叫び、「招致したのは私たち」「みんな喜んだ」とあまりに雑すぎる大きな主語で語ることによって体制側の責任を矮小化しようとするのも当然なのだろう。

 だが、先にも触れたように、この年末年始に河瀨監督のドキュメンタリー番組をめぐって炎上が起こったのは、こうした発言の問題だけではない。最大の問題点は、NHKが今回のドキュメンタリーのなかで「東京五輪の反対デモにお金で動員されていた人がいた」と報道したことだ。

 問題となっているのは、公式記録映画のために河瀨監督から街の人びとへの取材を任された映画監督・島田角栄氏の取材シーンだ。河瀨監督と島田監督は同じ映像専門学校の出身であり、島田監督の作品に河瀨氏が出演するなどの関係があるが、その島田監督が取材したなかのひとりとして、「五輪反対デモに参加しているという男性」が登場した。

 その男性の顔にはボカシがかけられているが、島田監督と男性は公園へ。男性がベンチに座り、島田監督は地べたに座り込んで男性にカメラを向けている。その様子を離れた場所からNHK取材班が撮影している、という画だ。

 すると、画面にはこんなテロップが映し出されるのだ。

 「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」

 つまり、この顔にボカシの入った男性は、五輪反対デモにお金をもらって動員された、というのだ。

 本サイトも五輪反対派として取材をおこなってきたが、東京五輪に反対するデモや抗議活動で「金で動員をかけている」などという話はまったく聞いたこともない。一体どのように動員がかけられ、いくらの日当が出ていたというのか、訝しく思いながらも問題の場面を固唾を呑んで観たが、男性と島田監督のやりとりは以下の通りだった。

 男性「結局、デモは全部上の人がやるから、書いたやつを、それを言ったあとに言うだけやから」
 島田「デモいつあるで、どういった感じの知らせがくるんですか」
 男性「それは、もう予定表もらっているから、自分」
 島田「はいはいはいはい」
 男性「それを見て行くだけで」

 「デモは全部上の人がやる」「書いたやるを言ったあとに言うだけ」という証言はデモや抗議の際に反対を訴えるためにおこなうシュプレヒコールの話だと思われ、つづく「予定表をもらっている」というのも、デモでは集合・解散場所が書かれた案内が配られることも珍しくはない。つまり、この証言では「金で雇われて動員された」ということは何も説明されていない。

 だが、なんと男性の証言はこれで終わり。その後は島田監督が路上で電話をかけるシーンとなり、島田監督が河瀨監督の取材風景をニュース番組で見て映画の方向性に疑問を感じた、というナレーションが入るのだ。

 ◆NHK「東京五輪反対デモにお金で動員」報道は本当か? 裏付ける証言も証拠も示さず疑問の声が殺到

 ようするに、テロップでは「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と打ち出しながら、問題の男性が肝心の動員された事実を語る映像は一切出てこなかったのである。

 「お金をもらって動員〜」というテロップが出ている場面では、男性が「光熱代から全部一緒で」と話しているのがかすかに聞き取れ、これが唯一金銭にかんすると思しき発言だ。だが、この発言の前後は放送されておらず、これがデモ参加の報酬について話しているのか、たんなる男性の金銭事情の話なのか、あるいは男性が「光熱代」をもらった話なのか払う話なのか、この場面だけでは判別できない。いや、それ以前に、この男性がいつどのデモに参加したかすら示されていない。

 本来、「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」とテロップを出すのであれば、それを裏付ける証言や何らかの証拠を提示するのは当然のことだ。にもかかわらず、証言も証拠も出さずにこのような放送をおこなったのだ。疑義の声があがるのは当たり前だろう。

 しかも、前述したように、本サイトでも「金で動員がかけられていた」というような話は一切耳にしたことはない。実際、この番組が再放送されたあと、このシーンの動画がTwitter上で拡散されると、反対デモを主催した団体や関係者らが一斉に反論。

 たとえば、2013年から反対運動をおこなってきた東京の市民グループである「反五輪の会」は、〈反五輪デモでお金は貰えません。当会主催のデモはもちろん、他でも聞いたことありません〉〈デモの報酬としてお金をもらったことも払ったこともありません〉とツイート。同じく東京で活動してきた市民団体「オリンピック災害おことわり連絡会」も〈デモの呼びかけ団体として「参加者を動員するためにお金を配る」といったことは一切行ってきておりません〉と反論をおこなった。

 また、東京五輪の開会式当日に中止を求めるデモには中派の活動家も参加し、警察官の手首をつかんだとする公務執行妨害の疑いで逮捕されているが、〈五輪開会式当日、現場でフィールドワークした研究者〉という五野井郁夫・高千穂大学教授は〈わたしが中核派の担当弁護士に確認したところ「日当」での動員はないとのこと〉〈そうした動員手法は「ない」と全面否定でした〉とツイートしている。

 さらに、反対デモに参加したことのあるという人たちからも、〈反五輪の会の主催や賛同の抗議行動にわたしは参加してましたが、マジでお金なんてもらったことない〉〈私もいくつかの五輪反対デモに参加したが、金なんかもらったこともなければ、そんな話を聞いたこともない〉〈私は自分でSNSで情報見て何度も参加し、お金などもらっていませんが、どこでもらえますか?あの人だけが特別ですか?それならなぜそんな特殊な出来事を、説明もなく映像にねじ込んだのですか?〉という声があがったのだ。

 しかも重要なのは、このシーンは島田監督が公式記録映画用に取材・撮影している現場を、NHKが密着取材し撮影したものであるということ。つまり、NHKの番組制作側がこの場面を使うことを決定し、編集・放送したという事実だ。

 実際、島田監督に対してあるTwitterユーザーが“取材相手が言っていないことがテロップに入っている。島田さまのご意図でこうなったのか、知らないうちにこうなったのか”と尋ねると、島田監督は〈編集はNHKに任せております。NHKにご連絡頂けると助かります〉と返答している。

 繰り返すが、金による動員を語る者がいるのならば、最低限、その証言の該当部分を放送するのは当たり前の話。それすらもなく「お金をもらって動員されている」とテロップを出して放送することは、証拠なき印象操作だ。さらに、この番組内で「反対デモに参加した」という人はこの男性しか登場しない。そのため、あたかも反対デモでは日当が支払われるのが普通のことであるかのように視聴者が受け取ってしまう危険もあるかたちになっているのだ。

 ◆NHKの異常な五輪報道! 聖火リレー中継から五輪反対の声をカット、 世論調査で政権忖度し「延期」の選択肢を削除

 それでなくてもNHKは、東京五輪開催中に新規感染者数が1万人を超えても五輪礼賛報道に終始し、夜のニュース番組も休止・短縮するという公共放送にあるまじき醜態を晒した。だが、それだけではなく、世論調査では五輪開催のために恣意的な変更までおこなった。

 実際、東京五輪の開催の是非について「開催すべき」「中止すべき」「さらに延期すべき」の3つから1つを選んでもらうかたちで調査をおこなってきたのに、昨年2月以降の世論調査では「どのような形で開催すべきだと思いますか」という質問に変わり、用意された選択肢も「これまでと同様に行う」「観客の数を制限して行う」「無観客で行う」「中止する」という4択となり、「さらに延期すべき」という選択肢をなくしたのだ。

 それだけではない。NHKは特設サイトで聖火リレーのライブ中継をおこなっていたが、昨年4月1日に長野県長野市でおこなわれた聖火リレーでは、沿道から「オリンピックに反対」「オリンピックはいらないぞ」という抗議の声があがったのに、その直後から中継の音声がなぜか切れてしまい、約30秒にわたって無音状態に。あまりにも露骨すぎるが、NHKは五輪開催に反対する市民の抗議の声を流さないよう、わざわざ音声を消したのである。

 しかも、言っておくが、先の衆院選自民党の国光文乃議員の応援のために岸田文雄首相が駆けつけた街頭演説会において「茨城県運輸政策研究会」が日当5000円で動員をかけていた問題について、NHKは他のメディアが報じても無視を決め込み、遅れに遅れて報道した。選挙活動における現金の配布は公選法違反となる重大事であり、取材・報道すべき問題はあきらかにこちらだが、ところが、東京五輪の反対デモに対しては、証言も証拠も出さずに「反対デモは金で動員されていた」と印象づける放送をおこなったのである。悪質極まりないだけでなく、NHKも完全に権力側と一体化していると言わざるを得ないだろう。
 
 無論、NHKには今回の番組における取材の経緯や裏付けとなる証言や証拠があるのかどうかなど、説明をおこなう責任があるが、これだけネット上で問題になっているにもかかわらず、いま現在もダンマリをつづけている。

 その上、この期に及んで醜態を晒したのが、河瀨監督だ。放送自体はNHKに責任があるが、問題の男性の取材は公式記録映画のためにおこなわれたものであり、当然ながら河瀨監督にも説明責任がある。だが、河瀨監督は5日、〈めちゃくちゃ面白かった!自分達に都合が悪いとすぐBPOだの放送倫理違反だの言ってくる人たちの誹謗中傷に負けずこれからも頑張ってください〉というあるユーザーの投稿を引用リツイートし、〈はい(キラキラマーク)〉と返信。まったくその責任を感じていないようなのだ。この調子では、問題の男性の証言が公式記録映画にも使用されてしまう可能性すらあるのではないか。

 本サイトは河瀨監督の問題点を指摘した記事で、「このままでは河瀬監督による東京五輪公式記録映画は、ナチスドイツでレニ・リーフェンシュタールが監督したベルリンオリンピックの記録映画『民族の祭典』のような、国威発揚プロパガンダ作品になってしまう危険性も大いにある」と警鐘を鳴らした。だが、どうやらその懸念は的中してしまいそうである。(編集部

 元稿:LITERA・リテラ(本と雑誌の知を再発見) 主要ニュース 芸能・エンタメ 【スポーツ・東京五輪】  2022年01月06日  01:08:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:施政方針演説 異論にこそ「聞く力」を

2022-01-18 06:53:20 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説】:施政方針演説 異論にこそ「聞く力」を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:施政方針演説 異論にこそ「聞く力」を 

 岸田文雄首相がきのう、就任後初めての施政方針演説に臨んだ。出だしと締めくくりの部分で2度、「信頼と共感」の政治を繰り返し強調した。

 現今の政治にそれほど、「信頼と共感」が欠落しているとの現状認識ならば、その通りだろう。岸田政権に先立つ安倍、菅両政権から引き継いだ「負の遺産」にほかならない。

 だが国土交通省の不正統計には行数を割いたものの、森友、加計両学園や「桜を見る会」を巡る疑惑、日本学術会議会員の任命拒否には触れずじまいだった。お膝元の広島県政界をも揺るがした「政治とカネ」問題さえ脇に置いたのは一体なぜか。ちぐはぐな印象が拭えない。

 最優先課題といえる新型コロナウイルスへの対応策に続き、取り上げたテーマは「新しい資本主義」である。

 格差や貧困の拡大、気候変動問題などを招いた新自由主義的な考えから転換し、資本主義を問い直すとした視点は国民にもうなずけよう。成長と分配の好循環によって「国民一人一人が豊かで、生き生きと暮らせる社会」を目指すという。その希望には共感できただろうか。

 成長戦略の柱として、デジタルを活用した地方の活性化を真っ先に挙げた。説明に「例えば…」を多用し、かみ砕いた工夫は買えるとしても、カタカナ言葉ばかりが躍る。政権のうたい文句らしい「デジタル田園都市国家」構想とは何なのか、未来図はまだ見えてこない。

 分配戦略では、いの一番に賃上げを掲げた。賃上げ税制の拡充や公的価格の引き上げ、中小企業が適正な価格転嫁を行える環境づくりに心掛けるというが、「お願い」「期待」が基調の路線は従来の政権と代わり映えしない。企業から「コロナ禍が明けてからの話」と受け取られるようなら、困る。

 そもそも新自由主義のアキレス腱(けん)は、道義や地球環境をわきまえない利潤の追求にあったのではないか。

 再来年から新1万円札の顔となる「日本資本主義の父」渋沢栄一が著書の「論語と算盤(そろばん)」で説いたのも、道徳と経済活動との両立である。「新しい資本主義」も、道義との両輪で進めなくてはなるまい。

 「モリ・カケ・サクラ」や学術会議の問題をなおざりにすることは許されない。「政治とカネ」では、2019年参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件は言うに及ばず、統合型リゾート(IR)事業に絡む収賄や無登録の貸金業で謝礼受け取りなど議員の摘発が相次ぐ。国民への説明を尽くした上で、再発の根を断つ必要がある。

 岸田首相は今回、新自由主義の一つの弊害として「健全な民主主義の危機」を取り上げた。それは取りも直さず、野党からの異論や批判を「ご指摘は当たらない」と退け、道義と責任をなおざりにした安倍・菅両政権の病巣でもあろう。

 「死票」が増える小選挙区選挙制度の導入以降、政治の場から、少数の意見や弱者の声は切り捨てられる傾向にある。「信頼と共感」の政治に向け、首相は長所とする「聞く力」を四方八方に発揮すべきである。

 国会ではあすから、各党による代表質問が始まる。与野党ともに、幅広い国民の声を吸い上げた論戦を望みたい。

 

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月18日  06:53:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録】:勝海舟の二つの言葉

2022-01-18 06:53:10 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【天風録】:勝海舟の二つの言葉

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:勝海舟の二つの言葉

 今どき使わなくなった言葉を広辞苑は拾っている。【行蔵(こうぞう)】世に出て道を行うことと隠遁(いんとん)して世に出ないこと―。よって「行蔵は我(われ)に存す」は、あれこれ言われなくても出処進退自分決める、といった意味らしい

 ▲きのう岸田文雄首相は初の施政方針演説の冒頭、勝海舟のこの言葉を引いた。首相に就任して3カ月余り。過去最大の予算案や新型コロナ対策を巡る国会での本格論戦を前に、政治結果責任全て自分が背負うという覚悟をまずは表明した格好

 ▲幕臣でありながら江戸城の無血開城を主導し、しかも「敵方」明治新政府に仕えた海舟。そんな曲折の人生に福沢諭吉は「やせ我慢が足りない」と痛烈な批判を浴びせた。行蔵うんぬんはその反論だ

 ▲首相は演説の締めくくりにもう一つ、海舟の言葉「己を改革する」を引用した。こちらは晩年の政談を聞き書きした「氷川清話」の一節。行政改革は公平が肝要だと説いた上で「改革者が一番に自分を改革するのサ」

 ▲自己責任自己改革―。激動の世を駆け抜けた一人の政治家の腹をくくった信条に、岸田首相はどんな思いを重ねたのだろう。安倍・菅政治からの決別宣言と読めないこともないが、さて…。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2022年01月18日  06:53:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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