【社説①】:皇位継承報告 立法府の主体性発揮を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:皇位継承報告 立法府の主体性発揮を
衆参両院はきのう、各党派の代表者を集めて皇室の課題に関する全体会議を開き、政府の有識者会議の答申について説明を受けた。今後国会での議論が本格化する。
国会は2017年の天皇退位特例法の付帯決議で、皇位安定の諸課題や女性宮家の創設などを検討するよう、政府に求めていた。
だが答申内容をそのまま反映させた政府案は皇位継承を先送りし、皇族数の確保策を軸とする。
各種世論調査で容認の多い女性・女系天皇には触れない一方で、旧宮家の復活を盛り込むなど保守派への配慮がうかがえる。
これでは要請に応えた内容とは言えず、立法府としてそのまま受け入れることは認められない。
国会は国民の代表として皇位継承のあり方まで踏み込んで議論し、使命を果たすべきだ。
皇族数確保策としては女性皇族が結婚後も皇室に残る案と、旧宮家の男系男子を養子縁組により皇族とする案を盛り込んだ。
それでも不十分な場合は法律で旧宮家の男系男子を直接皇族にする案を示した。
各党は政府案の検討に入るが、細田博之衆院議長はきのう、取りまとめの期限は示さなかった。
自民党の茂木敏充幹事長は「皇位継承の問題を切り離し、皇族数の確保を図るのが喫緊の課題だ」と述べ、早くも基本的に政府案の内容を容認する姿勢を示した。
同党は麻生太郎副総裁を座長とする懇談会で党内議論を進めるが、一部からは皇位継承策について「完全に先送りしたのは残念だ」という批判も出ている。
これに対し立憲民主党は首相時代に女性宮家創設を検討した野田佳彦氏をトップに検討委員会を発足させ、党見解に創設を盛り込む見通しだ。野田氏は政府案は「主体性が見えない」と反発する。
同党は旧宮家の男系男子を皇族とする案については、「憲法で禁じた門地による差別に当たる」と問題視している。
共産党は女性・女系天皇、女性宮家の創設を認める立場だ。
公明党、国民民主党、日本維新の会なども検討組織を設置する。
特例法制定前、当時の大島理森衆院議長らは政府の報告を受けた後に期限を切って国会見解をまとめると表明し、付帯決議に至った。
その時のように国会は主体性を持って議論を前へ進めるべきだ。
皇位継承を取り巻く危機的な状況は何ら変わっていない。
各党には皇室の現状と時代の変化を見据えた議論が求められる。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年01月19日 14:36:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。