【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記・01.20】:もう一つの裁判始まる 裁判長が「審理は公開の法廷で進める」と宣言
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記・01.20】:もう一つの裁判始まる 裁判長が「審理は公開の法廷で進める」と宣言
「この事案は公開の要請が非常に強いと思われますので(傍聴公開される)口頭弁論手続きで基本的に進行することを考えています」
大阪地裁の山地修裁判長が告げた。異例の宣言に法廷がどよめいた。
公文書改ざん事件で命を絶った財務省近畿財務局の赤木俊夫さん。その妻、赤木雅子さんが事件に関する情報開示を求めて起こした裁判が18日、大阪地裁で始まった。そこで山地裁判長が「裁判所の現時点での審理の考え方についてお伝えしたい」と前置きして述べたのが冒頭の言葉だ。
会見する弁護団(撮影)相澤冬樹
裁判は公開の法廷で行われるのが原則だが、民事裁判の場合、原告被告双方と裁判所の三者だけで意見を交わす非公開の協議が設けられることが多い。雅子さんが国などを訴えた損害賠償訴訟でも非公開の協議がしばしば開かれた。12月15日に裁判を強制的に終わらせられた「認諾」という手続きが取られたのも非公開の場だった。
マンガ誌を手にする赤木雅子さん(撮影)相澤冬樹
◆不意打ち「認諾」は非公開だった
ところが新たに起こされたこの裁判で、裁判長がわざわざ「公開の要請が非常に強い」と発言した。社会的な関心が高いから、誰でも傍聴できる公開の法廷で審理を進めるという宣言だ。国も“不意打ち”の認諾で裁判を終わらせるなら、堂々と公開の法廷ですればよい。非公開の席でこっそりするのは、自分たちの行いが卑怯だと恥じているからだろう。
弁論が終わった後、代理人の一人、生越照幸弁護士に尋ねると「山地さんですからね。さすがです」との言葉。山地裁判長は裁判官の出世コースとされる最高裁の調査官を務めるなど、将来を嘱望される逸材だという。もっともそろそろ異動の時期で、3月に代わる可能性もある。
当事者の赤木雅子さんはこの日、法廷に出なかった。弁護士から裁判の様子を聞いて、求める資料が出てくるのではないかと頼もしく感じたという。
それにもうひとつ楽しみがあった。近くのコンビニで買った小学館のマンガ誌「ビッグコミックスピリッツ」の最後に近い見開きのページ。「がんばりょんかぁ、マサコちゃん」という作品の連載が次週から始まるという告知だ。「これは実在の夫婦の物語。そして、愛する人の喪失に向き合うすべての人へ贈る物語」とある。
「いよいよ始まりますね。わくわくするけど怖いような気もします」
連載開始は1月24日だ。
【お詫びと訂正】
赤木雅子さんの情報開示訴訟の裁判長について「(代理人)弁護士にとっては司法修習生の頃、大阪地裁でお世話になった“教官”だ」と書きましたが、これは筆者の誤解で教官ではありませんでした。関係する方々と読者の皆様にお詫びするとともに、この一文を削除致します。申し訳ございません。

1962年宮崎県生まれ。東京大学法学部卒業。1987年NHKに記者職で入局。東京社会部、大阪府警キャップ・ニュースデスクなどを歴任。著書『安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』(文藝春秋)がベストセラーとなった。
元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ライフ 【暮らしニュース・森友遺族・夫の死を巡る法廷闘争記】 2022年01月20日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。