【政治部記者覆面座談会】:④ステルス倒閣運動の茂木幹事長 「パワハラ体質に役人も記者も戦々恐々」の声
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治部記者覆面座談会】:④ステルス倒閣運動の茂木幹事長 「パワハラ体質に役人も記者も戦々恐々」の声
側近秘書官の差別発言が「オフレコ破り」され、外遊に同行した長男の「公用車で観光」が報じられ、日銀総裁人事はまさかの“誤報”も飛び出した。
ドタバタ劇を繰り広げている岸田文雄・首相の周囲で、いったい何が起きているのか。
そこで本誌・週刊ポストは官邸詰めや自民党担当の政治記者4人による、内側から見た「岸田政権の正体」についての覆面座談会を開催。発言者を特定されないために社名、担当部署は伏せるが、記者AとBはキャップクラスのベテラン、記者CとDは第一線の若手だ。【全4回の第4回。第1回から読む】
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司会(編集部):岸田首相に対して、批判の急先鋒になっているのが菅義偉・元首相だ。『文藝春秋』2月号の「派閥政治」批判に始まり、増税批判などを繰り出して反岸田を鮮明にしている。総理に危機感はないのか。
記者D:菅さんは『文藝春秋』発売後に外遊先のベトナムでも岸田批判を展開したが、あの時、番記者に「お前たち、ちゃんとベトナムについて来いよ」と同行するよう念押ししていたそうです。最初から、ベトナムで岸田攻撃をやって、報道させるつもりだった。
記者B:信じがたい話と思うかもしれないが、実は、岸田さんはずっと菅さんが自分のことを嫌いだと気づいていなかった。
初めて知ったのは、1年ほど前に出版された日本テレビの元菅番記者が書いた『孤独の宰相 菅義偉とは何者だったのか』(柳沢高志/文藝春秋)の中で、菅さんが岸田さんを痛烈に批判しているのを読んだ時。岸田さんは暗い顔で、「オレ、菅さんに何かしたかな?」「なんでこんなに嫌われてるんだろう」と困惑していた。
宏池会(岸田派)の特徴でもあるが、岸田さんは良く言えば性善説で人を見るというか、もっとありていに言えば、「自分のことを嫌いな人がいるわけがない」と本気で思っている。いまでもどうして菅さんが自分を嫌いなのかわかっていないと思う。
最近も、「菅さんがオレのこと嫌いだというのは、マスコミが言っているだけだろう」なんて言っていたから。鈍感力がすごいというか……。
記者C:でも、菅さんの派閥批判は気にしているようで、岸田さんは最近、派閥の会合に参加しなくなりました。
記者A:あの発言は反発も大きかった。麻生太郎・副総裁はオフレコで「菅のことを評価している政治家なんて1人もいない」とまで言っているし、菅さんの盟友だった二階俊博・元幹事長も、「一回総理をやったら黙ってろ」と怒っていた。その菅さんは発言をエスカレートさせている半面、最近、党内では孤立気味。岸田批判は菅さんの焦りの裏返しという面が見える。
記者B:菅さん自身は再登板する気はない。勉強会も立ちあげないと言っている。菅さんが動く時は、誰かを担ぐ形になると思うが、いかんせん名前を挙げた河野太郎氏や萩生田光一氏という次期首相候補が弱すぎる。
◆ステルス倒閣運動
司会:岸田内閣が低支持率でもなんとか続いているのは、「ライバル不在」と「鈍感力」のおかげということか。
記者B:いま、岸田さんが一番警戒しているのは茂木敏充・幹事長だろう。茂木さんは国会の代表質問で「児童手当の所得制限撤廃」をぶち上げたが、これは官邸に事前の根回しをしていない独断だったと聞いている。首相側近も「岸田総理は相当イライラしていた」と言っていた。次の総理を狙って、茂木さんが独自の政策アピールを始めたということだ。
記者A:茂木幹事長は“ステルス倒閣運動”をしていると見る官邸スタッフもいる。旧統一教会問題で茂木さんが所属議員と教団の関係について党内アンケートを行なったが、公表された内容が野党やメディアには格好の追及材料となり、岸田首相は批判の矢面に立たされた。これも政権の足を引っぱるためにわざとやったんじゃないかと。
記者D:茂木さんは次の総理は自分だと鼻息が荒く、来年の自民党総裁選で岸田続投を阻止するつもりですよ。キングメーカーの麻生さんにも接近し、「次は自分」を売り込んでいる。岸田さんは次の内閣改造で茂木さんを幹事長に留任させて封じ込めるか、交代させて野に放つか、いまから相当悩んでいるようです。
記者C:麻生さんも「次は茂木がいるじゃないか」と言っているが、茂木さんの自民党内の不人気ぶりは河野太郎氏と互角くらい。なんといってもあのパワハラ体質は役人や自民党の職員、記者たちからも恐れられている。つい最近も、茂木幹事長が自民党本部4階のエレベーターホールでぶら下がり取材に応じていた時、たまたまエレベーターが開いて幹事長番ではない記者2人が談笑しながら出てきた。すると茂木さんがいきなりキレて、「ぶら下がり中だぞ! どうするんだ!」と怒鳴り、中止になりかけた。それなら幹事長室でやればいいのに。
記者D:女性記者には滅茶苦茶優しいんですけどね(笑)。
記者A:霞が関も茂木総理になればたいへんだと戦々恐々としている。自民党の若手議員がこう言っていた。「次の総裁選が岸田、茂木、河野の争いになったら、われわれは究極の選択を迫られることになる」と。
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国民の声が聞こえない鈍感総理の下で、首相官邸はいまや「国の危機管理」も「政権の危機管理」もできず、かといってポスト岸田もダメ候補ばかり。
政治記者たちの目に映った、これが日本の政治中枢の現実なのだ。
(了。第1回から読む)
※週刊ポスト2023年3月10・17日号
元稿:小学館 主要出版物 週刊ポスト 【NEWSポストセブン】 2023年03月01日 11:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。