路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【安藤優子コラム・01.26】:中居さんトラブル報道にみる「オトコ社会」でペット化もおじさん化もせずに働く難しさ

2025-01-26 12:00:30 | 【新聞社・報道・テレビ・ラジオ・公共放送NHKの功罪・マスコミ・雑誌】

【安藤優子コラム・01.23】:中居さんトラブル報道にみる「オトコ社会」でペット化もおじさん化もせずに働く難しさ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【安藤優子コラム・01.26】:中居さんトラブル報道にみる「オトコ社会」でペット化もおじさん化もせずに働く難しさ 

 長年ニュースを担当してお世話になってきたフジテレビが大変な状況にひんしている。
 タレントの中居正広さんとある女性をめぐる「トラブル」で、局の関与があったのか、「トラブル」を把握してからどのように対応してきたのかが、厳しく問われています。ただ、事実関係については今後の第三者委員会での調査にゆだねるということなので、臆測は厳につつしみたいと思います。

 ◆見渡す限り「おじさん」の世界だった

 が、そうした一連の報道を見ていて思ったのは、圧倒的な「オトコ社会」で、いくらその数が増えたとはいえ、マイノリティーとしての女性が仕事をするということの変わらぬ難しさと、向けられる視線のいびつさです。
 話はかなりさかのぼりますが、かれこれ40年以上前、私が初めてテレビ報道に足を踏み入れたときに目の前に広がっていたのは、見渡す限りの「おじさん」の世界でした。
 まだきわめて幼稚だった私はそれが「オトコ社会」という名の「ボーイズクラブ」であるという認識もなく、ただチェックのスカートにトレーナー姿の自分が明らかに場違いであることだけは、周囲の突き刺さるような視線から痛いほど感じたのを覚えています。
フジテレビ(資料写真)

フジテレビ(資料写真)

 ◆男性司会者にうなずく仕事

 そして拝命したのは男性司会者の横にひかえる「アシスタント」という仕事です。当時はニュースキャスターなんていう呼称はなく、メインの男性はニュース番組の司会者と呼ばれていて、私はその男性司会者の言葉にいちいちうなずいてみせるのが仕事でした。
 ジェンダーのカテゴリー分けで言えば、きっぱりとした主従の関係性です。政治・経済を語るのは「オトコ」の仕事で、天気予報などの、いわゆる軟ネタは女性アナウンサーの仕事と、徹底した性別役割分業が成立していました。
 誰が決めたのか、誰も決めてはいなかったでしょう。でも「オトコ」は天下国家を牛耳る政治や経済を語り、「オンナ」は奥の台所でその場の酒やつまみをかいがいしく用意をする。そんな性別役割分業が画面上でもあたりまえだったのです。

 ◆「ボーイズクラブ」を生き抜く作戦

 大学生だった私にとって、そうした「オトコたちの世界」のルールは未知の領域で、何かとやることなすことベテランのおじさん記者をイラっとさせていた...

  ■有料記事です。残り 925/1850 文字

 元稿:東京新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【話題・連載「安藤優子コラム」】  2025年01月26日  12:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【時代を読む・01.26】:トランプ氏演説の特異性 宇野重規・東京大学教授

2025-01-26 07:54:30 | 【米国・在日米軍・地位協定、犯罪・普天間移設・オスプレー・安保】

【時代を読む・01.26】:トランプ氏演説の特異性 宇野重規・東京大学教授

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【時代を読む・01.26】:トランプ氏演説の特異性 宇野重規・東京大学教授

 「米国の黄金時代が今、始まる」。ドナルド・トランプ大統領の就任演説は高らかにそう告げる。米国は繁栄し、安全は確保され、世界にうらやまれる国となる。自己礼賛と独善に満ちたその内容は、まさにトランプ節の全開である。

 米国大統領の就任演説というと、建国の歴史を振り返り、宗教的理念を掲げ、国民の団結を訴える格調の高い内容を想起するが、トランプ大統領の演説はそれとはまったく異なる。
 
 「ドリル、ベイビー、ドリル(掘って掘って掘りまくれ!)」。気候変動に取り組むパリ協定から再離脱する大統領令に署名した大統領は、化石燃料の掘削拡大をこのように訴える。その英語は平易だが、品位に欠ける。いかにもトランプ氏らしいが、それが彼の強みでもある。
 
 米国の大統領就任演説というと、宗教的内容をどのように含むかに注目が集まる。オバマ元大統領はキリスト教だけでなく、イスラム教やヒンズー教を含む、多様な信仰を持つ人々に訴えた。バイデン前大統領は、キリスト教の聖人アウグスティヌスの言葉を引用した。しかしながら、トランプ大統領は、慣例に従わず、あえて聖書に手を置かずに宣誓したことでも話題を呼んでいる。
 
 演説中でも宗教への言及は数少なかった。わずかに目についたのは、ペンシルベニアでの銃撃事件についてであろうか。自分が凶弾を免れたのは神の加護によるものだというトランプ大統領は「私は神によって、米国を再び偉大にするために救われた」と強調する。ある意味で、トランプ大統領にとって、偉大なのは自分だけであり、神とは自らの偉大さを正当化するための存在に過ぎないのかもしれない。宗教保守勢力を支持基盤とするだけになおさら、彼の宗教観が気になるところである。
 
 たしかにトランプ大統領もまた、多様性の国である米国の団結と一体性を説く。マーチン・ルーサー・キング牧師の名前にも言及する。しかし、彼が黒人とヒスパニックに向けて発言するのは、その人々がトランプ氏に投票したという文脈においてである。彼が団結を訴えるのは、あくまで自らを支持する米国民であり、大統領選で敵対した人々を包摂しようとする姿勢は見られない。そのトランプ大統領は、南部国境に国家非常事態を宣言し、不法移民の多くが「刑務所や精神科病院から来た」という差別的な言動さえ躊躇(ちゅうちょ)しない。
 
 就任演説で気になるのはそれだけではない。トランプ大統領が政府の検閲を停止し、「米国に言論の自由を取り戻す」というのは何を指すのか。それは自らの支持者の自由であって、むしろ批判者を黙らせ、差別的な発言を野放しにするものではないのか。性別を「男性と女性だけにする」資格や権利が彼にあるのか。メキシコ湾を「アメリカ湾」と呼び、あえて領土拡大の覇権主義を含意する「マニフェスト・デスティニー(明白な使命)」に言及したのは、いかなる意図に基づくのか。
 
 私たちは今後、このようなトランプ大統領の政権と向き合っていかなければならない。単に冷笑したり、首をすくめて揶揄(やゆ)したり、あるいは日本との関係だけに関心を絞るのではなく、この特異な大統領の言動の背後にある要因を一つ一つ確認していく必要がある。

 <うの・しげき> 東京大学社会科学研究所教授。1967年、東京都生まれ。専門は政治思想史・政治哲学。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【時代を読む】  2025年01月26日  07:54:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政界地獄耳・01.21】:とにかく浄化を 「政治とカネ」問題に根深い国民の不信

2025-01-26 07:40:10 | 【政治とカネ・政党交付金・「企業・団体献金」・政治資金・議員歳費・賄賂・後援会

【政界地獄耳・01.21】:とにかく浄化を 「政治とカネ」問題に根深い国民の不信

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政界地獄耳・01.21】:とにかく浄化を 「政治とカネ」問題に根深い国民の不信 

 ★20日に解禁されたNNNと読売新聞が17日から19日まで行った世論調査が興味深い。石破内閣の支持率については支持40、支持しない46。支持政党は自民党28、立憲民主党5、国民民主党13、支持政党なし34。少数与党に不安を感じるか、感じる32、感じない61、「政治とカネ」の問題の自民党の対応は十分か。思う9、思わない86。次の衆議院選挙のあとに、自民党中心の政権の継続か、野党中心の政権に交代か。自民党中心の政権の継続41、野党中心の政権に交代40。今夏の参議院選挙に合わせ衆参同日選挙に賛成か反対か。賛成53、反対24。

 ★つまり有権者は石破内閣をそう信じているわけでもなく、野党は今月も国民民主党が支持されている。だが少数与党に不安もなく、政治とカネについては自民党を許している節もない。そして政権は自民党中心でも野党中心でも構わないというのか、どちらでもいいようで、自民党にも野党にもアレルギーはない。またダブル選挙には寛容というより積極的ととれる。強い安倍政治の終焉(しゅうえん)、政治とカネで国民の不信はピークに達するとともに政治の

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 政界地獄耳

 政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【コラム・政界地獄耳】  2025年01月21日  07:35:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.26】:週のはじめに考える 世界壊す<力こそ正義>

2025-01-26 07:03:55 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・ICC・サミット(G20、】

【社説①・01.26】:週のはじめに考える 世界壊す<力こそ正義>

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.26】:週のはじめに考える 世界壊す<力こそ正義>

 米国の名優アル・パチーノさんが盲目の退役軍人スレード中佐を演じた映画『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』では、中佐がレストランのような所で、若い女性と見事にタンゴを踊るシーンが有名ですが、ほかにも一つ、妙に印象に残っている場面があります。

 気骨はあるが頑固な中佐と、アルバイトで中佐の世話役を引き受けた心優しい青年が言い争いになった時、中佐が、半ば軽口のようにこう言うのです。「議論じゃ、勝てっこない。こっちは銃を持っているんだから」
 銃のような「力」が持ち出されると、議論や法のような「言葉」は引っ込むしかない-。今も記憶にあるのは、その冷徹な対比が鮮烈だったからだと思います。

 ◆「銃」を構えて、「売れ」

 つい先日、2度目の米大統領職をスタートさせたトランプ氏。就任前に表明した「暴論」には心底驚きました。グリーンランド買収とパナマ運河の管理権を返還させるという話。デンマークやパナマが反発したのは当然ですが、さらに暗然となったのは、この無体な要求を実現するため、軍事力や経済的圧力を用いる可能性について「やらないとは保証できない」と述べたことです。
 実際、デンマーク首相と電話会談した際も、買収案を拒否されると「輸入品に高関税をかける」とすごんだとか。いわば、銃を構えた相手です。まっとうな議論が通じるはずもなく、首相は「深刻な状況だ」と縮み上がっています。なぜデンマークがこんな目に遭わなければならないのでしょう。
 どれほどグリーンランドに地下資源が豊富で、どれほど地政学的に重要性が増しているとしても、「だから米国のものに」という理屈が成り立つはずがない。まるで拳を振り上げ、年少の子から欲しいおもちゃを奪おうとする幼稚園児のようです。
 古代ギリシャの歴史家トゥーキュディデースがペロポネソス戦争(紀元前431~404年)の模様をつづった『戦史』には、強国アテナイの使節が、征服を狙うメーロス島の統治者に「隷属か、滅ぼされるか」と迫って、こう告げるくだりがあります。<正義か否かは彼我の勢力伯仲のとき定めがつくもの。強者と弱者の間では、強きがいかに大をなし得、弱きがいかに小なる譲歩をもって脱し得るか、その可能性しか問題となり得ないのだ>(岩波文庫版)

 ◆大統領と目を合わせるな

 よく言われる<力こそ正義>という言葉、考え方の淵源(えんげん)はこの辺りにあるようですが、今は、やはりロシアとウクライナを重ねてしまいます。身勝手な理屈で強国が他国に武力侵攻するなど、国際法無視の蛮行そのもの。特に小国から「<力こそ正義>を許すな」の声が上がったのも当然でしょう。無論、戦争は早期の終結が望ましい。でも、ロシアが何の報いも受けぬまま終わって<力こそ正義>が現実になるというのでは、やはり間尺に合いません。
 グリーンランドの件など考えれば、この野蛮なドグマ(教義)を信奉しているとしか思えぬ点で、トランプ氏とプーチン・ロシア大統領には何らの違いもない。就任後、停戦に向け、ロシアに圧力をかけてはいますが、かねてプーチン氏への共感を隠さぬ人。結局はロシアが<いかに大をなし得>るかを優先し<弱き>は従え、とウクライナに無理に譲歩を強いる可能性も小さくありません。
 それにしても、この21世紀に、世界最強の武力と経済力を持ち、民主主義世界をリードする大国の指導者の行動原理が、はるか紀元前のアテナイ人並み、いや、利かん気の幼稚園児みたいだなんて…。誰か、これは悪い夢だと言ってくれないものでしょうか。
 まさか、本当にデンマークやパナマを武力で脅すとは思いませんが、少なくとも大好きな「関税」という「力」を、銃よろしく振り回し、「米国第一」に反するとみれば、どの国であれ標的にすることは間違いないでしょう。当然、日本を含む他国は今後、虎の尾を踏まぬよう、ビクビクし続けることに。まるで、治安の悪い街の裏通りを歩くようなものです。言い掛かりをつけられぬよう、なるべく大柄な金髪の男とは目を合わせないようにして…。

 ◆「弱肉強食」でいいのか

 乱発している大統領令しかり、トランプ氏再登板に憂慮の種は山ほどありますが、やはり一番警戒が必要なことの一つは、<力こそ正義>の瀰漫(びまん)だと思います。武力や銃のような「力」でなく議論や法のような「言葉」で物事を決する。この土台が崩れたら、強国の横暴も貧富の差拡大も許容されてしまう。この世界を、強者が好きに弱者の肉を食らうジャングルに戻すわけにはいきません。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月26日  07:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗・01.26】:時の政権が打ち出す「スローガン」はどうも、表現が硬い上に分…

2025-01-26 07:03:50 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【筆洗・01.26】:時の政権が打ち出す「スローガン」はどうも、表現が硬い上に分…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗・01.26】:時の政権が打ち出す「スローガン」はどうも、表現が硬い上に分…

 時の政権が打ち出す「スローガン」はどうも、表現が硬い上に分かりにくいものが多いようだ。「戦後政治の総決算」(中曽根政権)、「品格ある国家」(宮沢政権)、「美しい国」(安倍政権)…。

 風格や重々しさを狙っているのか、どうも大げさで押し付けがましくもある

 ▼戦後政治で最も軟らかい政権キャッチフレーズかもしれない。石破首相の「楽しい日本」である

 ▼子どもじみたユートピア論を思わせるが、「楽しい」という個人の幸福感に焦点を当てるのは発想として悪くない。こういう政権スローガンは珍しい

 ▼もっとも「楽しい」の中身がよく見えぬ。元ネタは作家の堺屋太一さん。明治期に国は「強い国」を目指し、戦後の復興期や高度成長期は企業主導で「豊かな国」を目指した。3度目に日本が目指すべきは「楽しい国」という

 ▼施政方針演説で首相は「楽しい日本」とは「多様な価値観を持つ一人一人が互いに尊重し、自己実現を図っていける、活力ある国家」と説明した。異論はないのだが、具体像に乏しく「楽しい」と思える高揚感のようなものが足りない

 ▼「楽しい日本」の評判は与野党とも芳しくない。物価高、生活苦、政治とカネ、少子化など将来の不安。現実を前にして「楽しい」という言葉はどこかむなしくも聞こえる。まずはこの「楽しくない日本」をどうするか。その処方箋が見たかった。 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2025年01月26日  06:48:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗・01.25】:鈴木おさむさんの小説『もう明日が待っている』は解散したアイ…

2025-01-26 07:03:35 | 【新聞社・報道・テレビ・ラジオ・公共放送NHKの功罪・マスコミ・雑誌】

【筆洗・01.25】:鈴木おさむさんの小説『もう明日が待っている』は解散したアイ…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗・01.25】:鈴木おさむさんの小説『もう明日が待っている』は解散したアイ…

  鈴木おさむさんの小説『もう明日が待っている』は解散したアイドルグループ「SMAP」が題材。彼らの番組の放送作家時代に見た光景を基に書いたという

 ▼メンバーの「モリクン」が脱退しオートレーサーになると明かす会見に「リーダー」が志願して加わる場面がある。重苦しい会見にしないためで好きな巨人のユニホーム姿

 ▼モリクンが父や兄に相談したと語ると「なんで僕に相談してくれなかったのかな」と反応し、記者を笑わせた。泣いたふりして「今までありがとう」と感謝し、記者に「泣いてないですよ」と突っ込まれた。でも、モリクンとの最後の番組収録でリーダーは人目もはばからず泣いた

 ▼リーダーこと中居正広さんが芸能界引退を発表した。今回のトラブルで傷ついた女性やテレビ業界への影響を考えれば、そう決意するほかなかったのかもしれない。中傷が女性に向かわぬことを切に祈る

 ▼中居さん発表の文に「これで、あらゆる責任を果たしたとは全く思っておりません。今後も、様々な問題、調査に対して真摯(しんし)に向き合い、誠意をもって対応して参ります」とある。逃げぬと誓っているのだろうか

 ▼小説では、仲間を思うリーダーは、自分は1人でもみんなを守るとの趣旨のことを酔って言う。利他の心を知るはずの人の過ち。果たすべきを果たそうとするなら、いささかでも報われるファンはいる。 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2025年01月25日  07:02:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗・01.24】:「白状して楽になれよ」「あんた殺人犯 死ねば」「火のないと…

2025-01-26 07:03:20 | 【事件・未解決事件・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・旧統一教会を巡る事件他】

【筆洗・01.24】:「白状して楽になれよ」「あんた殺人犯 死ねば」「火のないと…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗・01.24】:「白状して楽になれよ」「あんた殺人犯 死ねば」「火のないと…

 「白状して楽になれよ」「あんた殺人犯 死ねば」「火のないところに煙は立たぬ」…

 ▼タレントのスマイリーキクチさんが、少年たちによる殺人事件の犯人だったというデマをもとに1999年から10年間、インターネット上で受けた誹謗(ひぼう)中傷の例である

 ▼最後は警察も中傷した側の立件に動くが、当初は親身でなかったという。誰かに襲われるかもと夜のつきあいを減らし早く帰り、安否確認のため恋人との連絡を頻繁にした時期も。自分の運気が悪いのかとお祓(はら)いまで受けたと著書で明かした

 ▼交流サイト(SNS)で傷つけられた末の死に胸が塞(ふさ)がる。斎藤元彦兵庫県知事の疑惑を議会で追及した竹内英明・前県議が亡くなった。自死らしい。先の知事選で中傷が続き、家族を守ると選挙後に県議を辞めた人である

 ▼斎藤氏を当選させるため知事選に出て、SNSに影響を与えた立花孝志氏が標的にした1人。竹内氏の死後、立花氏はネット上で「竹内氏は逮捕される予定だった」という趣旨の発信をし、県警が否定するや取り消し、謝罪した。謝ったとはいえ、死者をも貶(おとし)めるのか。ネット空間の無慈悲さが恐ろしい

 ▼スマイリーキクチさんは、先日もネットと人権に関する講演で高校生に、大事なのは「自分は正しい」を疑う感性、と訴えたという。安直に信じた「正義」は誰かを傷つけ、取り返しのつかぬことも起きる。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2025年01月24日  07:07:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【筆洗・01.23】:引退した元野球選手が野球殿堂入りの投票資格を持つ記者にこう…

2025-01-26 07:03:05 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【筆洗・01.23】:引退した元野球選手が野球殿堂入りの投票資格を持つ記者にこう…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗・01.23】:引退した元野球選手が野球殿堂入りの投票資格を持つ記者にこう…

 引退した元野球選手が野球殿堂入りの投票資格を持つ記者にこう尋ねた。「なぜ、オレに投票しないんだい?」。記者は答えた。「ごめん、まだ現役だと思っていた」-

 ▼マリナーズなどで活躍したイチローさんの米野球殿堂入りに有名な野球ジョークを思い出した。ヤンキースの名クローザー、マリアノ・リベラ元投手に続き、史上2人目の「満票」による選出が期待されたが、わずかに1票足らなかった

 ▼日本人選手の米殿堂入りはこれが初。数々の偉業を成し遂げた名選手が引退から6年後に残した、もう一つの快挙がまぶしい

 ▼大リーグ通算3089安打、シーズン最多安打記録(262安打)を誇る名選手に投票しなかった「へそ曲がり」の気が知れぬが、今も若々しいイチローさんの姿にまだ現役と勘違いしたと思うことにするか

 ▼「満票」が難しいのは歴代の名選手との比較になるためという。デレク・ジーター、グリフィー・ジュニアといった大選手も満票では選ばれていない。こうした歴史に満票選出をためらう記者も中にはいるらしい。それを思えば「一漏」の得票率99・7%がいかに大きな支持による選出だったかが分かるか

 ▼常に完璧を求め、技術向上に取り組んだ現役時代に重ね、イチローさん、1票足らなかったことに「不完全であるというのはいいこと」。これもイチロー名言集の殿堂入り候補である。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】  2025年01月23日  07:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【こちら特報部・01.26】:万博のために「引き抜き人事」まで…ムリにムリ重ねる大阪府政 府職員で増える退職・休業・残業80時間超

2025-01-26 07:02:50 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

【こちら特報部・01.26】:万博のために「引き抜き人事」まで…ムリにムリ重ねる大阪府政 府職員で増える退職・休業・残業80時間超

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【こちら特報部・01.26】:万博のために「引き抜き人事」まで…ムリにムリ重ねる大阪府政 府職員で増える退職・休業・残業80時間超

 4月13日に大阪・関西万博の開催が迫る中、大阪府庁から悲鳴が上がっている。原因は1月1日付の人事異動。課長補佐級以下で8人が万博関連部署に異動となったが、元の部署に補充がなく、職員組合が猛抗議している。7万4000人超の巨大組織の中ではきわめて小規模な異動だが、なぜ不興を買っているのか。(太田理英子)

◆万博に職員を送り出した職場への補充なし…つまり戦力減

 「万博をやるのは何年も前から分かっていたこと。こんな勝手なことがあるのか」。府関係職員労働組合の小松康則執行委員長は、東京新聞「こちら特報部」の取材に怒りをあらわにした。
 1日付で発令された人事では、大阪市も加わる「万博推進局」と国内外の賓客に対応する「大阪儀典室」に、課長補佐級以下の8人が配属となった。だが、それぞれがいた人事課や子ども家庭局などの部署に補充はなかった。
 組合は14日、「年度末を迎えて多忙となる職場にとって重大な問題。『万博のため』との引き抜きは、あまりにも無責任過ぎる対応」とし、吉村洋文知事宛ての抗議文を提出した。

◆「維新は職員削減が一丁目一番地」既に手一杯になっている現場

 わずか8人の異動。だが小松氏は、府が1990年代後半から人員削減を進めてきたとした上で、「維新府政は職員削減が一丁目一番地。人手を増やす選択肢がない中、職員は新事業や児童虐待の増加といった目の前の業務、対応で精いっぱいだ」と話す。
 近年はさらに、退職者や休業者の増加が顕著で、危機感につながっている。府によると、2024年4〜12月に退職した職員は101人で、「自己都合による退職は近年増加傾向にある」(人事課)という。また「精神疾患などにより7日以上休業した職員」は、2023年度は300人で、2019年度より約1.3倍増えた。
大阪・関西万博会場の視察後、取材に応じる石破首相(左)と吉村洋文大阪府知事=大阪市此花区の夢洲で

大阪・関西万博会場の視察後、取材に応じる石破首相(左)と吉村洋文大阪府知事=大阪市此花区の夢洲で

 同課は退職者の増加について「雇用の流動性が高まっていることも背景にある」との見解だが、組合側は「極限まで人を減らされ人手不足で、職場は疲弊しきっている」と主張。府の調査では、月80時間超の時間外勤務をした職員は、2024年4〜12月で207人で、5年前の同時期から約1.5倍増えている。
 小松氏は「万博に人を出すなと言っているのではなく、定数増や補充による過重労働の軽減を求めている。このままでは行政サービスの質の低下を招く」と訴える。
 府側は組合の抗議と要請について、「万博に向けて全庁を挙げて取り組む方針の下で対応している。通常は欠員が生じた際、前倒し採用や臨時職員の活用によりできる限り応じている」とコメントした。

◆手が足りない問題は大阪だけ? 災害の時に対応できる?

 大阪府の人口10万人当たりの職員数は約850人(2024年4月時点)で、教育や警察・消防などを除いた「一般行政」分野では約90人と、全国的にも低水準だ。
 桃山学院大の吉弘憲介教授(地方財政論)は「どの都道府県も人的資源が潤沢ではないが、大阪府の場合は急に生じる行政需要に人手を割く余力が相対的に少ない」と指摘する。地方行政では旧来、財政再建で人件費が調整弁にされてきたが、災害時などの対応に手が回らなくなれば市民生活に大きく影響する。
 ビッグイベントの開催時、限りある人的資源はどう割り振るべきなのか。吉弘教授は「短期的イベントに人手が割かれるのは致し方ないが、だからこそ通常業務が圧迫されないよう計画的に運用すべきだ」と強調する。人口10万人当たりの職員数(同)が約590人で全国最少の神奈川県でも、2027年に「国際園芸博覧会」が予定される。「大阪の例はひとごとではなく、負担が生じない対策を今から考える必要がある」
 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【話題・こちら特報部・大阪・関西万博】  2025年01月26日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【書評】:大阪・関西万博「失敗」の本質 松本創 編著

2025-01-26 07:02:40 | 【偽政者による愚策・失策、官民ファンド、マイナカード、大阪・関西万博】

【書評】:大阪・関西万博「失敗」の本質 松本創 編著

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【書評】:大阪・関西万博「失敗」の本質 松本創 編著

 ◆誤算を認めないニッポンの縮図

 理念がない、仕切り屋もいない、工事も進まない。なぜこんな事態のまま進んでしまったのか? 政治・建築・メディア・財政・歴史の観点から専門家が迫る。

大阪・関西万博 「失敗」の本質 松本 創(編著) - 筑摩書房

 ■内容紹介

 開幕前からあえて「失敗」と断じることには反発も当然あるだろう。だが、こうしたメガイベントというのは、五輪もそうだが、事前に批判すれば「楽しみにしてる人もいるのに水を差すのか」「成功へ努力する関係者の足を引っ張るのか」と言われ、事後に検証すれば「終わったことをいつまでも」「今さら言っても遅い。なぜ事前に言わないのか」と批判されるのである。どんな形であれ、とりあえず終わってしまえば、なんとなく「やってよかった」という空気ができ、それに乗じて関係者は「大成功だった(私の手柄だ)」と言い募る。「成功」の基準がないから、いくらでも恣意的に語られてしまう。そうなる前に、「失敗」と見る立場から問題を整理し、指摘しておくべきだと考えたのである。
(「はじめに」より)

 第1章 維新「政官一体」体制が覆い隠すリスク―万博と政治  木下功

 「歓喜の夜」から一転、次々と噴き出す課題/夢洲は本当に「負の遺産」なのか/橋下知事の「ベイエリア・カジノ構想」から始まった/「松井試案」を後押しするベンチャー経営者/支え合う維新と安倍政権、絡み合うIRと万博/万博は「府市一体の成果」とアピールする維新/予算増を予測できぬ協会、容認する維新首長/15万人が避難? 現実味を欠く防災対策/橋とトンネルは避難路に使えるか/「夢洲は液状化しない」想定の誤り/爆発事故で問われた万博協会の説明不足/巨大事業を検証する仕組みがない/大阪府HPから消えた万博議事録

 第2章 都市の孤島「夢洲」という悪夢の選択―万博と建築  森山高至

 日本の万博出展史に見る海外パビリオンの重要性/建設遅れは参加国ではなく開催国の責任/「夢洲」という悪条件―埋め立て安定せず、地盤沈下続く/地盤対策上の制約その1―長すぎる杭と撤去の問題/地盤対策上の制約その2―掘削制限で地下室が作れず/浚渫土からもメタンガス。爆発の危険は今後も/アクセス悪く電源もなし、「都市の孤島」の難工事/厳しい残業規制が工事進捗の足かせに/参加国をフォローせず、タイプXを勧めた万博協会/参加国の焦り―設計者や工事業者見つからず/電通の不在とゼネコンの「逃げ腰」/木造リングが覆い隠す深刻すぎる工事遅れ/本質見ず、議論もなし。暴走する「机上の空論」

 第3章 「電通・吉本」依存が招いた混乱と迷走―万博とメディア  西岡研介

 東京五輪談合事件の衝撃と余波/電通が牽引した戦後の博覧会60年史/大阪府・市と政府、維新と自民の不協和音/電通が万博に消極的になった理由/吉本興業の「地方創生」ビジネス、大阪府・市との蜜月/読売グループがカジノを批判する理由/IRにらみで万博を盛り上げる吉本の思惑/「大﨑体制見直し」と「松本スキャンダル」/吉本も万博から「完全撤退」/万博協会の失敗は「人事」と「財務」/「哲学」のない万博に成功はあるか

 第4章 検証「経済効果3兆円」の実態と問題点―万博と経済  吉弘憲介

 万博コスト増への反論で持ち出される「経済効果」/そもそも経済波及効果とは何か―短期と中長期の二面から/短期効果と中長期効果、それぞれの問題点/経済波及効果を計算する三つのステップ/経済波及効果と事業の「正当性」は関係ない/万博の短期経済効果はどのように変化してきたか/消費動向、2024年問題……実態と乖離した3兆円試算/「来場者2820万人」の高すぎるハードル/レガシー効果は「公益性」の有無で決まる/公共事業を長期的視点で評価するために/独自調査で判明「大阪でも低い万博評価」/万博の公益性と相容れない維新の「個人の利益追求」志向

 第5章 大阪の「成功体験」と「失敗の記憶」―万博と都市  松本創

 博覧会の成功、湾岸開発の失敗、カジノの未来/博覧会都市の始まり「第五回内国勧業博覧会」/都市を広げ、人・物の流れ変えた70年万博/維新ブレーン・堺屋太一の提案から始まった/「万博に取りつかれた男」との空疎な質疑/排除と差別、博覧会の「負の歴史」/テクノポート計画の挫折、大阪五輪の惨敗/維新の原点「府庁移転計画」と「湾岸開発」/夢洲開催案は本当に検証されたのか/大阪IR―少数の推進派と大多数の無関心/万博を狂わせたIRの誤算―橋爪教授の見解/「過去の成功体験」が「同じ失敗」を呼ぶ懸念
 
 ■初版年月日 2024年8月6日 
 ■定価 990(10%税込)
 
 ■著作者プロフィール 松本創
( まつもと・はじむ )

松本 創(まつもと・はじむ):1970(昭和45)年、大阪府生れ。神戸新聞記者を経て、2021年3月現在はフリーランスのライター。2016(平成28)年、『誰が「橋下徹」をつくったか―大阪都構想とメディアの迷走』で日本ジャーナリスト会議賞を受賞。2019(令和元)年、『軌道―福知山線脱線事故JR西日本を変えた闘い』で講談社本田靖春ノンフィクション賞、井植文化賞を受賞する。ほかに『日本人のひたむきな生き方』『ふたつの震災―[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(西岡研介氏との共著)などがある。(西岡研介氏との共著)などがある。

 元稿:筑摩書房 主要出版物 ちくま新書 政治【政府・大阪府市・「大阪・関西万博「失敗」の本質」】  2024年10月24日  16:15:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【こちら特報部・01.23】:クルド人ヘイトに使われる20年前の「出稼ぎ報告書」が犯したタブー 「重大な人権侵害」と法務省は批判を浴びた

2025-01-26 07:02:30 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【こちら特報部・01.26】:クルド人ヘイトに使われる20年前の「出稼ぎ報告書」が犯したタブー 「重大な人権侵害」と法務省は批判を浴びた

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【こちら特報部・01.26】:クルド人ヘイトに使われる20年前の「出稼ぎ報告書」が犯したタブー 「重大な人権侵害」と法務省は批判を浴びた

 埼玉県川口市などに暮らすクルド人へのヘイトスピーチが問題となる中、法務省入国管理局(現・出入国在留管理庁)の2004年の報告書が、交流サイト(SNS)などで排斥の新たな材料にされている。報告書は、クルド人の来日目的が出稼ぎであることなどを確認するため、職員がトルコのクルド人の集住地域を現地調査してまとめた。ところが、調査手法に問題があり、当初から内容の信ぴょう性も含め批判されてきた、いわくつきの報告書だった。(池尾伸一、森本智之、飯田克志)

◆「入管が『出稼ぎ』と断定する報告書」

法務省が2004年に作成したトルコ出張調査報告書

法務省が2004年に作成したトルコ出張調査報告書

 「トルコ出張調査報告書(地方視察編)」で、添付資料を含めて約200ページある。昨年11月、産経新聞が「入管が『出稼ぎ』と断定する報告書をまとめていたことが分かった」と報じ、SNSでは「偽装難民」「さっさと強制送還を」などの書き込みが相次いだ。「国会で追及する」と表明する国会議員まで現れた。
 報告書によると、当時は、東京と名古屋の地裁で、トルコ国籍のクルド人を難民と認める判決が続き、訴訟対策のためにまとめられた。世界各国で難民認定されたトルコ国籍者は2022年までの10年で約7万4000人に上り、多くのクルド人も含まれているとみられる。一方、日本では裁判で国が負けて2022年に認定した1人を除き、一貫してクルド人を難民と認めていない。

 ◆迫害から逃げる人の個人情報を迫害側に

ジャンダルマの男性(中央)や入管職員らと撮影された写真(報告書から)

ジャンダルマの男性(中央)や入管職員らと撮影された写真(報告書から)

 2004年6〜7月、職員2人が来日クルド人の主な出身地である南部のガジアンテプ県などの村落を訪ねた。問題はその手法だ。
 2人は「ジャンダルマ」と呼ばれる憲兵や警察官など現地の治安当局の協力の下、一緒に難民申請者の実家などを訪ねた。当局には一部の申請者の名前なども照会。迫害から逃げている人の個人情報を迫害する側に伝えたことになる。
 こうした情報提供は本人や家族への迫害の恐れを高めるとして国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も原則禁じる。全国難民弁護団連絡会議代表の渡辺彰悟弁護士は「これが横行したら、怖くて誰も難民申請できない。入管は難民認定機関としてあるまじきことをした」と批判する。

◆「来日の理由は、私たちが土地や家や田畑から追い出されたことにあります」

 内容にも疑念がある。報告書は、来日理由を問われた複数の人の「お金を稼ぐ」との証言を記載。「出稼ぎ」を印象付けるような書きぶりだが、渡辺氏は「迫害している側を前に『あなたの息子は何のために日本に行ったのか』と問われ、正直に答えられるわけがない」とあきれる。
 実際、報告書で「金を稼ぐ。他に何がある」と述べた、ある村長は後に知人への手紙で「来日の理由は、私たちが土地や家や田畑から追い出されたことにあります」と記していたことがクルド人を支援する弁護団の調査で判明した。
 報告書では村人と治安当局者を並べて記念写真を撮り、「村人はいずれも笑顔で警察署長と握手しており緊張感はみじんも感じられなかった」と迫害がないことを強調するような記述も複数ある。これについても住人の一人が後日、弁護団に当日の状況を証言した。

◆演出や強要の疑いがある「笑顔」

法務省が2004年に作成したトルコ出張調査報告書

法務省が2004年に作成したトルコ出張調査報告書

 「ジャンダルマが笑うように指示した。私は笑わなかった。銃を持っている人と一緒に立って楽しい人はいない。子どもたちを撮るときは日本人が笑顔を見せるように言った」。友好ムードの裏には演出や強要の疑いがあるのだ。
 報告書は直後から批判にさらされた。UNHCR駐日地域事務所(当時)は2005年、「出身国当局とのいかなる情報の共有も控えなければならない」とする意見を公表。日本弁護士連合会も同年、「新たな迫害を生む恐れがあり、重大な人権侵害」と法相あての警告文を出した。

 ◆「このままだと大変なことになる」

 現実に報告書は難民申請者を危険にさらした。名前などを漏えいされたクルド人の男性(53)は直後からトルコの警察に呼び出され、「日本人から難民申請したと聞いた。なぜ申請したのか」と連日深夜に及ぶ取り調べを受けた。
現地調査により、トルコ警察から取り調べを受け、一家で逃げることを余儀なくされたクルド人の男性=埼玉県内で

現地調査により、トルコ警察から取り調べを受け、一家で逃げることを余儀なくされたクルド人の男性=埼玉県内で

 男性は日本で難民申請をした経験があった。トルコの警察から反政府組織との関係を疑われ、殴られたり、電気ショックを与えられたりするなど、激しい暴行を受け、日本に逃れたためだ。申請は認められず、2003年にやむなく帰国していた。
 男性によると、警察内部のクルド人の知人から...、
 
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 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【話題・埼玉県川口市などに暮らすクルド人へのヘイトスピーチが問題となる】  2025年01月26日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.26】:日銀追加利上げ 丹念に影響を精査してほしい

2025-01-26 05:00:55 | 【金融・金融庁・日銀・株式・為替・投資・投機・FRB・「ドル円」・マーケット】

【社説①・01.26】:日銀追加利上げ 丹念に影響を精査してほしい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.26】:日銀追加利上げ 丹念に影響を精査してほしい

 日本銀行が追加の利上げを行ったことにより、日本経済は、長く経験したことがなかった金利水準へと入っていく。 

 日銀は、家計や企業に与える影響を丹念に点検して、今後の金融政策運営を進めていくことが大切だ。

 日銀は政策金利を0・25%引き上げ、0・50%程度とすることを決めた。昨年7月以来の利上げで約17年ぶりの高い水準となる。

 日本経済は、個人消費に弱さが見られるものの、緩やかな回復が続いている。今春闘では高水準の賃上げが実現する可能性も高まっている。トランプ米政権が20日に発足して以降、金融市場に大きな混乱は見られない。

 このため日銀は、追加利上げの環境が整ったと判断したのだろう。過度な円安に一定の歯止めがかかることも期待できる。

 日銀は、昨年3月にマイナス金利政策を解除し、金融政策の正常化を進めてきた。植田和男総裁は記者会見で、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と述べた。

 だが、多くの人にとって未経験の金利水準になるため、まずは、家計や企業に与える影響を精査していくことが重要になろう。

 住宅ローン金利が上昇すれば、現役世代の負担は重くなる。また、物価高が長引き、実質賃金は安定的なプラスに至っておらず、節約志向は強まっている。消費者心理にさらなる悪影響が及ばないか、分析を深めてもらいたい。

 上場企業の業績は好調だが、原材料高や人手不足に悩む中小企業は少なくない。昨年の企業倒産は11年ぶりに1万件を超えた。資金繰りへの目配りも必要だ。

 物価の分析も深めるべきだ。

 消費者物価指数(生鮮食品を除く)の伸び率は、22年度と23年度に前年度比で2%を超えた。日銀によれば、24年度は2・7%、25年度は2・4%、26年度は2・0%上昇する見通しだ。

 日銀は2%の物価安定目標を掲げている。現在の物価高は輸入物価の上昇による影響が大きく、十分な賃金上昇や経済の好循環を伴っていないとして、目標をまだ達成していないという立場だ。

 しかし、価格の転嫁が広がり、値上げをためらわない企業が増えている。日銀の説明は、これほど長く物価高に苦しむ国民の実感とずれているのではないか。

 政策金利が0・5%を超えていたのは30年前だ。日銀は、経済の変化を踏まえて政策の在り方を整理し、説明を尽くしてほしい。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月26日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・01.26】:中国経済減速 本格回復への道筋が見えない

2025-01-26 05:00:50 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、国家の個人等の権利を抑圧統治】

【社説②・01.26】:中国経済減速 本格回復への道筋が見えない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.26】:中国経済減速 本格回復への道筋が見えない

 停滞が続く中国経済の本格的な回復は、なお見通せない。米国のトランプ新大統領が高関税政策を断行すれば、中国が世界経済にとってのリスク要因にもなるだろう。

 中国の2024年の国内総生産(GDP)は、実質で前年比5・0%増となった。前年の5・2%から減速したものの、政府が目標として掲げてきた「5・0%前後」は辛うじて達成した形だ。

 昨年秋に、政府目標の達成が微妙になり、自動車や家電の買い替え促進や金融緩和といった経済対策を相次いで実施したことが、一定の効果をもたらしたようだ。

 だが、内実は楽観できるものではない。関連産業を含め、GDPの4分の1を占める不動産部門の不況が長期化しているためだ。

 マンションなどの不動産開発投資は10・6%減と、3年連続で前年を下回り、新築不動産の販売面積も10%超、減少した。

 中国では家計資産に占める不動産の割合が大きく、市場が低迷すれば消費にも響く。だが、政府は短期的に痛みが生じる不動産問題の抜本的な処理には及び腰だ。

 少子高齢化が急速に進む中、内需の不足でデフレ傾向が強まり、長期に停滞した点で、日本に似てきたとの指摘も増えている。若者を中心として失業率が高止まりし、節約志向も広がっている。

 習近平政権の言論統制の強化などによる 閉塞 へいそく 感も、経済に悪影響を及ぼしているとみられる。

 中国市場の動向は世界経済に大きな影響を及ぼす。日本も警戒感を高めるべきである。

 一方で、中国政府は、こうした苦境を、海外への輸出を増やすことで乗り切ろうとしている。

 中国では国有企業の存在感が大きく、国の影響が強い金融機関も多い。巨額の不公正な補助金などによる支援で、公平な競争が損なわれているとの批判は根強い。

 特に電気自動車(EV)や太陽光パネルといった脱炭素の産業育成に注力し、過剰に生産した製品を輸出に回している。中国の24年の貿易黒字は約150兆円と、過去最高を更新した。これでは各国との 軋轢 あつれき は強まるばかりだ。

 トランプ新大統領は、貿易赤字を問題視し、中国などに高関税を課す考えを示している。実際に関税を発動すれば、経済に深刻な打撃を与えることは避けられない。内憂外患とも言える状況だ。

 持続的な発展を実現するには、投資や輸出ばかりに頼るのではなく、消費や内需が主導する経済へと転換していく必要があろう。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月26日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・01.25】:施政方針演説 「列島改造」の名に値するのか

2025-01-26 05:00:45 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【社説①・01.25】:施政方針演説 「列島改造」の名に値するのか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.25】:施政方針演説 「列島改造」の名に値するのか

 過疎化が進む地方の活力を取り戻す、という石破首相の考え方に異論はないが、その方法が従来の政策の焼き直しばかりでは話にならない。

 通常国会が召集され、首相が衆参両院の本会議で施政方針演説を行った。「令和の日本列島改造」と称し、地方創生を最重要政策として進める考えを強調した。

 首相は「官民が連携して地域の拠点をつくり、ハードだけではないソフトの魅力が新たな人の流れを生み出す」と述べた。

 そのための具体策としては、企業の地方移転の促進や農林水産業の高付加価値化、観光産業の活性化などを挙げた。ただ、これらの施策は目新しいものではない。

 政府は2014年以降、東京圏への一極集中の流れを変えようと地方創生に取り組んでいるが、思うような成果は得られていない。首相は初代地方創生相だった。

 同じテーマに再び挑み、結果を出そうというなら、従来の施策のどこに問題があり、何が不足していたのかを分析した上で、新しい政策を提示すべきではないか。

 首相はまた、目指す国家像として故・堺屋太一氏が唱えた「楽しい日本」を掲げた。多様な価値観を持つ個人を重んじ、自己実現を図っていく社会を指すという。

 個人の価値観は尊重されるべきだが、そうした考え方が行き過ぎた結果、自らの権利ばかりを主張する風潮が社会に広がり、とても「楽しい」とは言えない状況を生んでいる面は否めない。言葉が先行して実態に合っていない。

 首相は、防災対応の司令塔として、まず内閣府に次官級の「防災監」を置き、26年度に「防災庁」を地方に設置すると訴えた。

 現在、大規模な災害発生時には、内閣危機管理監が情報収集や関係省庁の指揮に当たっている。防災監を新設する意味は何なのか。

 災害時の復旧事業を発注する国土交通省や、廃棄物の処理を担っている環境省などと、防災庁との役割分担も不明確だ。混乱が生じないか、心配が先に立つ。

 首相は政治改革に関し、政党交付金や企業・団体献金などの収入源を挙げ、「それらのバランスはどうあるべきか」と述べた。「政党の規律をどのように考え、担保していくか」とも指摘した。

 様々な課題の論点を挙げ、問題提起をするのは首相の特徴と言える。だが、十分な根拠とともに明確な方針を示し、国民を説得するのがリーダーの役割だ。首相就任から間もなく4か月。いつまでも評論家のような姿勢では困る。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月25日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・01.25】:フジテレビ問題 事態を悪化させた認識の甘さ

2025-01-26 05:00:40 | 【新聞社・報道・テレビ・ラジオ・公共放送NHKの功罪・マスコミ・雑誌】

【社説②・01.25】:フジテレビ問題 事態を悪化させた認識の甘さ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.25】:フジテレビ問題 事態を悪化させた認識の甘さ

 日本を代表する人気タレントが引退に追い込まれ、企業は相次ぎCMを差し止めた。放送界には激震が走っている。

 トラブルを起こしたタレントはもちろん、問題を軽視し、事態を悪化させたフジテレビ経営陣の責任は重い。

 タレントの中居正広氏と女性の間にトラブルがあり、それにフジの社員が関与したと週刊誌が報じた。中居氏はトラブルがあったことを認めて謝罪したが、騒動は収まらず、芸能界を引退した。

 中居氏は「全責任は私個人にある」としている。それだけ深刻なトラブルなのだろう。

 フジは社員の関与を否定し、記者会見を開いた。しかし、テレビの映像撮影を認めず、港浩一社長は女性のプライバシー保護などを理由に多くの質問への回答を避けたため、厳しい批判を浴びた。

 港社長は問題発生の直後に事態を把握したと言うが、中居氏の出演番組を終了させるなどの措置を取らなかった。中居氏への配慮があったとすれば許されない。その姿勢が女性の人権を軽視する印象を与えていると認識すべきだ。

 フジは1980年代、バラエティー路線やトレンディードラマを強化して人気を集めた。番組スタッフとタレントの懇親会なども盛んに行われ、その雰囲気は今も残っているとされる。

 一方、社会ではコンプライアンスを重視する意識が強まり、テレビ局やタレントも例外ではなくなった。フジは、そうした時代の変化に鈍感だったのではないか。

 対応でミスを重ねた結果、フジは経営が揺らぎかねない状況に陥っている。フジを傘下に持つ「フジ・メディア・ホールディングス」の株式を保有する米ファンドから厳しく批判された。

 視聴者の反発を恐れたスポンサー企業のCM差し止めは、すでに80社前後に上る。村上総務相も「放送に対する国民の信頼を損ないかねない」と懸念を示した。

 他の放送局にも同じような問題があるのではないかと疑っている視聴者は少なくないだろう。問題はすでにフジ1社にとどまらず、テレビ界全体に波及している。

 フジは、独立性の高い第三者委員会を設置し、事実関係などを調査することを決めた。27日には改めて記者会見を開くという。遅きに失したと言わざるを得ない。

 社員の関与は本当になかったのか、女性軽視の風潮があったのではないかなど、解明すべき点は多い。これ以上、対応を誤ることがあってはならない。

 元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2025年01月25日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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