《社説②・12.16》：中国の景気下支え策 回復の処方箋になるのか

《社説②・12.16》：中国の景気下支え策　回復の処方箋になるのか

　『漂流する日本の羅針盤を目指して』：《社説②・12.16》：中国の景気下支え策　回復の処方箋になるのか

　中国の景気低迷は世界経済に影響を及ぼす。立て直しのための抜本策を急がねばならない。

　中国共産党と政府は、来年の経済運営について議論する中央経済工作会議を開き、景気下支え策を強化する方針を示した。

中国・成都市南部で建設中のマンション。不動産不況が長引いている＝2024年7月7日、小倉祥徳撮影

　不動産バブルがはじけた中国では、消費の低迷が長引き、若者の失業率も高止まりしている。今年の成長率目標は「5％前後」だが、1～9月の成長率は4・8％で下回っている。

　注目されるのは、金融・財政の両面で内需を拡大するための政策を打ち出したことだ。

　金融政策は14年ぶりに転換し、緩和に動く姿勢を鮮明にした。

　公共事業の拡充など財政支出を増やすことで消費を刺激し、社会保障の整備も進める。

　先月には、不動産不況による財政悪化に苦しむ地方政府を支援するため、総額10兆元（約210兆円）の資金枠を設定すると発表している。

　ただ、これらの政策が効果を発揮するかは予断を許さない。日本のバブル崩壊後の経験が示すように、抜本的な対策を講じない限り火種はくすぶり続ける。

　昨年の会議では、見通しの明るさを強調する「中国経済光明論」を社会に浸透させるとしていたが、今回は盛り込まれなかった。

　楽観論だけでは問題の先送りとなる。習近平指導部は現実を直視し、適切な対応を取るべきだ。

　これまでは電気自動車（EV）や太陽光パネルなどを過剰に生産して輸出に回し、弱含みの内需を補おうとしてきた。今回の対策が景気回復への処方箋となるのか世界が注視している。

　トランプ次期米大統領が来月に就任するのを念頭に置いた面もある。対中関税の引き上げを明言しており、貿易摩擦が激化すれば国内経済にも影響が及ぶためだ。

　貿易や外国からの投資の安定も強調するが、中国のビジネス環境には不安の目が向けられている。相次ぐ無差別殺傷事件や反スパイ法による取り締まり強化は、外資が萎縮する要因になっている。

　社会の統制が行き過ぎれば経済を窒息させる恐れがある。「国家の安全」を最優先する習指導部はそのことを認識し、政策のかじ取りに当たることが求められる。

　元稿：毎日新聞社　朝刊　主要ニュース　社説・解説・コラム　【社説】　 ２０２４年１２月１６日 　０２：０２：００ 　これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。