《社説①・12.01》:中国で続く無差別襲撃 統制強化では再発防げぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.01》:中国で続く無差別襲撃 統制強化では再発防げぬ
中国の学校や公共施設で無差別襲撃事件が相次いでいる。再発防止への取り組みが求められる。
11月に起きた三つの事件は衝撃を与えた。広東省珠海市のスポーツ施設で暴走車にはねられた35人が死亡した。江蘇省無錫市の専門学校に元学生が押し入り、刃物で切りつけられた8人が犠牲となった。湖南省常徳市の小学校前では児童らに車が突っ込んだ。
一連の犯行は中国で「社会への報復」と指摘されている。経済成長から取り残された人や問題を抱えた人が孤立を深め、行き場を失った怒りが噴出したとの見方だ。
高成長の時代には共産党の一党支配や貧富の格差に対する不満は覆い隠されてきた。景気低迷が長引く中、若者の雇用不安や貧困の問題などが深刻化している。
中国指導部は危機感を募らせている。珠海の事件後、習近平国家主席は「生命の安全と社会の安定を確保するために全力を尽くすべきだ」と関係部門に指示した。
これを受け、広東省では地域の行政組織が、投資に失敗した人や失業者、心の問題を抱えている人など8種類の「失った人」を把握し、地方政府に報告することになったと香港紙が伝えた。
情報統制の強化も目に付く。事件現場の様子を撮影した動画がネット上に投稿されると削除され、主要メディアは当局の断片的な発表内容を伝えるに過ぎない。
しかし、締め付けを厳しくすれば、社会の閉塞(へいそく)感が強まる。孤立する人も増えてしまう。「国家の安全」を最優先する習指導部は、これまでもデジタル技術を駆使した情報統制や監視強化を実施してきたが、事件を防ぐことはできなかった。
背景を検証してこそ、問題の根本的な解決につながるはずだ。正確な情報が共有されなければ社会不安が広がりかねない。
中国は外国から投資や観光客を呼び込むため、短期滞在ビザを免除する対象国を増やしている。日本からの渡航拡大への期待もある。だが、今のような治安状況が続けば交流が萎縮する恐れがある。
経済対策に力を入れるとともに、格差の是正や社会保障制度の整備に正面から取り組む。それこそが「安全と安定」への道であると習指導部は認識すべきだ。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月01日 02:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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