【社説①・12.07】:日中世論調査 偽情報が対日観悪化させたか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.07】:日中世論調査 偽情報が対日観悪化させたか
中国のSNS上には、事実とかけ離れた反日的な投稿があふれている。そうした状況が、中国人の日本に対する印象を劇的に悪化させた背景にあるのではないか。
日中の国民意識を探る第20回日中共同世論調査(実施=言論NPO、中国国際伝播集団)の結果が発表された。
中国側で日本の印象が「良くない」と答えた人は87・7%で、前年から24・8ポイントも増えた。日本政府が尖閣諸島を国有化した翌年の2013年に次ぐ高さである。
日本側で中国の印象が「良くない」と答えた人は89%で、前年から大きな変化はなかった。この1年で、日中両国が決定的に対立するような局面はなかったにもかかわらず、中国側の対日観だけが大きく悪化したことになる。
中国側で日中関係が「重要ではない」と答えた人も前年比40・5ポイント増の59・6%に上り、過去最高となった。日本側では67・1%が「重要」と回答している。
対日感情の悪化ぶりには驚くほかない。要因は様々あるのだろうが、中国の反日教育や近年の対日強硬姿勢に加え、日本に関する誤った情報がインターネットを通じて広く拡散し、影響を増幅させている可能性は否定できない。
日中関係の発展を阻害する問題では、中国側は「東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出」が約36%で最多だった。中国政府は処理水を「核汚染水」と呼び、統制下にあるメディアを動員して危険性を 煽 ってきた。
中国では、日本に関する情報を中国のニュースメディアで入手する人が多く、うち半数以上は携帯機器から得ていた。中国のSNSは当局が監視し、共産党体制に批判的な投稿は削除される。
だが、日本への中傷は、不満のはけ口として黙認される場合が多い。中国にある日本人学校は「スパイ養成拠点だ」などとする偽情報も後を絶たない。中国各地で日本人襲撃事件が起きていることに関連があるとすれば、深刻だ。
日中間の人的交流がコロナ禍後も完全には復活しない中、両国でネット情報への依存度が高まり、極端な言説によって協力が妨げられる事態は好ましくない。
中国は最近、日本産水産物の輸入を段階的に再開することで日本と合意し、日本人への短期訪中ビザ免除措置も再開した。対日関係を安定させたいのだろう。
そうであれば、日本を 貶 める発信は慎み、邦人拘束など日中間の懸案の解決に取り組むべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月07日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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