【社説・11.14】:デブリ初回収 廃炉の難しさ浮き彫りに
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.14】:デブリ初回収 廃炉の難しさ浮き彫りに
廃炉に向けて重要な一歩であることは間違いない。同時にその困難さが改めて浮き彫りになったともいえる。
本当に計画通りに廃炉ができるのか。工程を見直す必要はないのか。政府と東京電力は説明を尽くしながら、着実に作業を進めなければならない。
東京電力が福島第1原発2号機で溶融核燃料(デブリ)を試験的に取り出したと発表した。2011年3月の事故後初めてとなる。
回収したのは小石状の約5ミリ大で、重さは約0・7グラムだ。12日には原発敷地外に搬出し、茨城県にある日本原子力研究開発機構の大洗原子力工学研究所に輸送した。1年程度かけて詳しく分析する。
炉心溶融が起きた1~3号機にデブリは計880トンあると推計されている。極めて強い放射線を出し、その取り出しは廃炉工程の最難関とされる。
試験的とはいえ初めて回収に成功したことは前進だが、課題も明らかになった。
政府と東電は、事故から30~40年となる41~51年に廃炉を終える計画を描いている。
デブリの取り出し開始は当初21年の計画だったが、既に3年遅れたことになる。原子炉格納容器の内部調査が難航し、機材の開発も遅れたことが大きな要因だ。
今後は研究所に輸送されたデブリを活用して取り出しの工法や保管方法の検討に入るが、技術的な課題は山積している。将来の処分場所も決まってない。
武藤容治経済産業相は「一部の作業に遅れが生じているが、全体の工程に現時点で影響はない」と述べ、計画に変更はないとした。
しかし、51年までの廃炉は「現実的ではない」「極めて難しい」と指摘する研究者もいる。
先行きが見通せない状況を最も不安に思っているのは福島原発事故の被災者だ。政府と東電は廃炉を巡る状況について丁寧に説明し、理解を得る必要がある。
東電の管理能力不足が露呈したことも深刻な問題だ。
デブリ取り出しは8月に開始したが、格納容器に回収装置を押し込むパイプの並び順を間違える初歩的ミスが初日に発覚し、中断を余儀なくされた。再開後はカメラが映らなくなる不具合が発生し、2度目の中断を迫られた。
福島第1原発の廃炉は必ず実現しなければならない国家的事業だ。東電はその使命感と緊張感を忘れてはならない。
11日に発足した第2次石破茂内閣は近くまとめる経済対策で、安全性が確認された原発を最大限活用する方針を明記する予定だ。
東電柏崎刈羽原発についても政府は再稼働を目指している。岸田文雄前政権時代から原発回帰を鮮明にしているが、福島原発事故と廃炉の行方から目を背けるようなことがあってはならない。
元稿:新潟日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月14日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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