【社説①・01.23】:日米地位協定 抜本改定は地方の総意
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.23】:日米地位協定 抜本改定は地方の総意
在日米軍に法的な特権を認めた日米地位協定について、京都府など33都道府県が共同通信の調査に対し「改定が必要」との立場を示した。
日本国内の米兵の事件や米軍機墜落も、日本側の捜査権は強く制約される。
これで住民の安心と安全を守れるのかという危機感が地方に広がっている。政府は重く受け止め、抜本改定に向け米国との協議を急ぐべきだ。
米軍基地の約7割が集中する沖縄では問題が特に顕著だ。米兵による性犯罪などが頻発するが、容疑者の起訴前の身柄拘束は今も米側が決定権を握る。
自治体による有機フッ素化合物(PFAS)の調査でも、米軍基地への立ち入りは極めて限定されている。
2023年に米空軍オスプレイが鹿児島県沖に墜落した事故では、機体の残骸が米側に渡され、日本側による原因の究明は閉ざされた。
改定を求める理由では、米軍基地や米軍の訓練に対する住民の不安、米軍関係者に国内法が適用されないことを多くが問題視し、16府県は「(協定の)運用の改善では不十分」との声を上げた。
米軍専用施設がない21府県からも改定の必要性が提起されたのは、弊害の広がりを映していよう。
地位協定は第2次世界大戦後の占領軍として駐留した米軍の特権が事実上、引き継がれている。米軍機に日本の航空法は適用されず、夜間や低空の飛行訓練に法的制約はない。
中国地方では、山口県の米軍岩国基地からと見られる米軍機の低空飛行が頻繁にあり、島根県などは部品の落下や騒音、事故の懸念を指摘する。
米軍と自衛隊の共同訓練が増加し、米軍機が自衛隊基地を利用する例が増えていることも、自治体の不安を広げている。
関西で唯一の米軍基地がある京丹後市では、新型コロナウイルス感染状況が速やかに公表されず、地域に不安を広げた経緯がある。
気になるのは、地位協定の見直しを公言してきた石破茂政権に具体的な動きが見られないことだ。
主権国家として国民の現実の被害や苦しみに目を背けたままでは、安定的な同盟関係と安全保障体制は築けまい。
ドイツやイタリアは米軍基地への当局の立ち入り権を持ち、各国内法も原則適用している。日本が米側に同様の関係性を求めてはならない理由はないはずだ。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月23日 16:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます