《社説②・11.16》:米国とイスラエル お墨付きを与え続けるな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・11.16》:米国とイスラエル お墨付きを与え続けるな
表向き厳しい態度を取っているかのように見せつつ、イスラエルの軍事行動に加担し続けている。米国の姿勢は強く非難されなければならない。
米政府がイスラエルへの武器の供与を続けると表明した。先月、ガザ地区の人道状況を改善する措置を1カ月以内に取らなければ軍事支援を停止する可能性があると警告していたが、一定の改善が図られたと判断したという。
そもそもバイデン米政権に軍事支援を止めるつもりはなかったとしか受け取れない。大統領選が迫り、後継の候補への支持が離反するのを防ごうとする意図があらわなやり方だった。
国際NGOのオックスファムをはじめ8団体は、状況はさらに悪化したと報告している。とりわけイスラエル軍の攻撃が集中するガザ北部は、食料や物資の搬入が先月初めからほぼ途絶え、飢餓が深刻化している恐れがある。
イスラエルのメディアは、ガザ北部で「将軍の計画」が実行されつつあると報じた。退役した元将校らが立てた計画だ。住民に中・南部への退避を命じ、従わない者は戦闘員と見なして殲滅(せんめつ)する。食料支援を断ち、飢えさせることも計画の一部だという。
北部以外でも攻撃はやまず、避難民が集まる学校や、イスラエル軍が「人道地区」に指定した区域への爆撃も相次ぐ。とめどない殺りくと破壊を止めるため、各国、国際社会は最大限の努力を続けなくてはならない。
最大の武器供与国である米国が責任に向き合う姿勢は一向に見えない。イスラエルを支持し続ける現政権に増して気がかりなのが、トランプ氏の政権復帰だ。
次期大統領に就任が決まり、イスラエルの極右閣僚らの言動が激しさを増している。ガザとともに占領下に置くヨルダン川西岸地区の入植地を、領土として併合する動きも表面化した。
トランプ前政権は、露骨なイスラエル寄りの姿勢を取り、入植地の拡大を支持した。次期政権の人事でも、イスラエルに肩入れする人物を要職に指名している。
大統領選で「私ならガザの戦争を止められる」と訴えたが、根拠や具体策を示してはいない。イスラエルの強硬姿勢をむしろ後押しする懸念がある。
日本政府は手をこまぬいていてはならない。米国に追従する姿勢を改め、停戦に向けて、国際社会と連携して何ができるかを真剣に探るべきだ。世論の力を強め、政府に行動を促したい。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月15日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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