《社説①・11.16》:敦賀原発不合格 原電は見切りをつける時
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・11.16》:敦賀原発不合格 原電は見切りをつける時
このままでは無駄な費用が増えていくだけではないか。
原子力規制委員会が敦賀原発2号機(福井県)の再稼働について正式に不合格とした。運営する日本原子力発電は再稼働を諦めず、再審査を申請する方針を示している。
不合格となったのは、長年にわたった規制委の審査によって、原子炉建屋の直下に活断層がある可能性が否定できないとの結論に至ったからだ。新規制基準の要件を満たすことができなかった。
規制委の調査団がこの活断層の存在を指摘したのは2013年。原電は反論する形で15年に申請したが、資料の不備やデータの無断書き換えが発覚するなど、審査は異例の経過をたどった。
仮に再審査に進んでも、再稼働のハードルは極めて高い。原電は追加の地質調査を実施するというが、不合格を覆すようなデータが得られる見通しはない。原電は再稼働に見切りをつけ、廃炉を受け入れるべきだ。
無理筋の再稼働にこだわる背景には、原発専業という原電特有の事情もあるとみられる。
原電は1957年に設立。大手電力会社9社が出資する。原発で発電した電力を大手電力に販売することで収益を得てきた。
だが東日本大震災後の2011年5月以降、1基も動かせない状態が続く。保有する4基中2基は廃炉中で、敦賀2号機と東海第2原発(茨城県)の再稼働を目指している。東海第2は審査に合格したが、避難計画の策定などが難航して再稼働は見通せない。
売電収入がないのに存続できているのは、売電契約を結んだ大手5社が原発の維持費として「基本料金」を支払っているからだ。
24年3月期の基本料金は計944億円。12年3月期以降の総額は1兆4千億円を超える。大手各社の電気料金に上乗せされ、消費者が間接的に負担してきた。
敦賀2号機の廃炉を認めれば基本料金の根拠の一部を失い、経営が一気に厳しくなる。大手各社にしても、債務保証している関係などから簡単にはつぶせないとの考えもあるのではないか。
浮かび上がるのは、会社存続のため役立つ見込みのない原発をただ維持し続けている構図だ。
原電のあり方を根本から見直していく必要がある。廃炉を専門に担う組織へとつくり変えていくのも一案だろう。
先送りすれば消費者の負担が膨らむ。原電と大手各社はそのことを強く意識すべきだ。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月16日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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