《社説②・12.17》:韓国大統領弾劾 駆け引きより立て直しを
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.17》:韓国大統領弾劾 駆け引きより立て直しを
韓国の国会が、尹錫悦大統領に対する弾劾訴追を可決した。
罷免すべきかどうかを憲法裁判所が180日以内に判断する。
異論を力で封じるために国会へ軍を突入させた。民主主義国家の指導者として許されない暴挙だ。過去の軍事独裁政権を想起させ、市民に強い衝撃と失望を与えた。
尹氏は弾劾採決に先立って出した談話で戒厳令を正当化し、辞任も拒んだ。野党が国政をまひさせたとし、「国民に危機状況を知らせるため」と抗弁している。
根拠を示さないまま選挙の結果に疑いの目を向け、選挙管理委員会に軍を派遣したのは不正を調べるためだ―とも主張した。
一方的な理屈は裏付けを欠き、市民感覚とも懸け離れているだろう。政権を担う力も失われ、職務停止に追い込まれた。
内乱容疑での捜査も進むが、事情聴取のための出頭を拒んでいる。事態はより混沌(こんとん)としてきた。
大統領権限は韓悳洙首相が代行する。トップ不在の事態が当面続き、外交力はそがれる。トランプ氏の米大統領復帰に伴う国際環境の変化に十分対処できるのか。
国防相や警察庁長官が逮捕され、治安や安全保障面の不安も高まる。韓氏が捜査対象となる可能性もある。国政の停滞は避けられず、内需が低迷する経済の立て直しにも影響を与えかねない。
尹氏の罷免を想定し、次期大統領選を見据えた与野党の主導権争いが激化している。
革新系最大野党「共に民主党」の李在明代表は、国会と政府による「国政安定協議体」の設置を提案した。大統領選に向けて、事態の収拾を主導する姿をアピールする思惑があるのだろう。保守系与党「国民の力」は拒否する考えを示した。
与党は、政権を奪われないための時間稼ぎで一度は弾劾訴追を廃案に追い込んだ。だが世論の猛反発に押し負け、少なくとも12人が造反して可決された。党内の分断を招いた責任を問われ、韓東勲代表は辞任を表明。政治の混迷は深まるばかりだ。
戒厳令を正当化する理由にはならないが、保革の対立が極まった現状は正視すべきだ。政権との対話を拒み、強引な国会運営を続けた野党にも省みるべき点はある。
国内の混乱によって国際的な信用も失いつつある。政治空白の長期化で、朝鮮半島情勢は不安定さを増す。党利党略の駆け引きに終始せず、与野党が国政を早期に立て直すことを望みたい。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月17日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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