【社説①】:イラン公館空爆 中東での戦闘拡大を憂慮する
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:イラン公館空爆 中東での戦闘拡大を憂慮する
大国のイランとイスラエルが衝突するような事態になれば、中東全体に戦火が広がりかねない。報復の連鎖に陥らないよう、関係国には自制を強く求めたい。
シリアにあるイラン大使館の領事部がミサイル攻撃を受け、イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」の現地司令官と隊員を含む10人以上が死亡した。
攻撃は、イランと敵対するイスラエルが行ったとの見方が強い。イスラエルは関与を認めていないが、イランの最高指導者ハメネイ師は「邪悪な(イスラエル)政権は罰を受ける」と述べ、イスラエルへの報復を宣言した。
だがこれ以上、中東の緊張をエスカレートさせてはならない。
領事関係について定めたウィーン条約は、在外公館の不可侵を規定している。イスラエルが領事部を意図的に攻撃したのであれば、明らかな国際法違反である。
中東の紛争の発端は、昨年10月のイスラム主義組織ハマスによるイスラエルへの越境攻撃だ。
イスラエルが自衛権を行使するのは当然だが、パレスチナ自治区ガザではハマスを 殲滅 すると称して無差別攻撃を行い、多くの民間人が犠牲になっている。イスラエルの軍事行動は明らかに自衛権の限度を超えている。
イスラエルが、食料など物資のガザへの搬入を制限し、人道危機を深刻化させていることも許されない。住民の支援活動を行っていた米民間団体の車列へのイスラエル軍による誤爆も起こり、団体メンバー7人が死亡した。
一方、イランが中東の対立を複雑化させているのも事実だ。
イランはハマスへの支持を公言している。レバノン南部を拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラには、イスラエルと戦うための武器を提供している。
紅海などで商船を攻撃しているイエメンの反政府勢力「フーシ」も、イランの軍事支援を受けている模様だ。イランが武装組織への支援をやめない限り、危機は高まる一方だろう。
間もなく半年となるガザでの戦闘を巡っては、国連安全保障理事会が先月下旬、即時停戦を求める決議を初めて採択した。
米国は拒否権を行使せず、棄権した。イスラエルを支援してきたバイデン政権に対する国際社会の批判が強まり、イスラエルを 庇 いきれなくなったのではないか。
決議には法的拘束力がある。イスラエルとハマスは国際社会の要請を重く受け止めるべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年04月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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