《社説②》:日露サケ・マス交渉妥結 漁業守る取り組み継続を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:日露サケ・マス交渉妥結 漁業守る取り組み継続を
サケ・マス漁に関する日露の交渉が妥結した。ウクライナ情勢が緊迫化する中、交渉の行方が心配されたが、日本の漁獲枠は昨年と同規模になることが固まった。
日露の漁業交渉は、民間の協定に基づくものも含めて主に四つある。妥結したのは、日本の200カイリ水域で国内の漁船が水揚げするサケ・マスに関するものだ。例年、春に交渉している。
サケ・マスの場合、自国の海で漁をしても漁業者側は産卵場所のある川の所在国に協力費などを支払う必要がある。国連海洋法条約が所在国の権利を認める「母川(ぼせん)国主義」をとっているためだ。
今回の交渉で、日本側が所在国であるロシア側に支払う協力費の下限は2億円となった。漁獲量の低迷を反映し、昨年から6000万円引き下げられた。水産庁はサケ・マスの資源管理などに充てられると説明している。
日露間では今後、歯舞群島・貝殻島周辺の昆布漁を巡る交渉が行われる。北方領土周辺で秋に予定されるホッケ漁などの手続きも必要となる。年末には双方の水域で相手国にサンマやサバなどの漁獲量を割り当てる交渉も控える。
日本が「固有の領土」と主張する北方領土の周辺水域で漁業活動が円滑に行えるよう政府はロシア側と交渉を続ける必要がある。
交渉以外にも、気がかりなことがある。ロシア当局が日本の漁船に乗り込んで操業違反の有無を調べる「臨検」が近年、増えているという。
昨年5~6月には日本の漁船が一時拿捕(だほ)・連行され、政府がロシア側に乗組員の即時釈放を要求する事案も起きた。今後も漁船の安全に十分目配りすべきだ。
ウクライナ侵攻を受けて、日本は欧米とともにロシアに強力な経済制裁を科している。非人道的な戦争を一刻も早く終結させるために、今後も圧力をかけ続けることが不可欠となる。
一方で、日本の漁業者や国民に与える悪影響を抑える努力も必要だ。ロシア側と交渉を続け、漁業などの分野で関係を維持していく際には、国際社会の理解を得ることも重要になる。
政府には、交渉の経緯や結果などを丁寧に説明することが求められる。
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