【ぎろんの森】:国民審査を生かすために
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ぎろんの森】:国民審査を生かすために
衆院選が終わりました。岸田文雄政権は続きますが、有権者は「白紙委任」したわけではありません。私たちの新聞は引き続き、権力を監視する役割を果たし続けます。
衆院選とともに、論説室が注目してきたのが最高裁判所裁判官の国民審査=写真=です。読者の関心も高く、多くのご意見をいただきました。
中でも「憲法の番人を審査するには粗放(大ざっぱで荒っぽい)な制度と痛感した。審査の見える化が必須だ」との指摘には全く同感です。
今回の国民審査では、選択的夫婦別姓の訴訟や衆参選挙を巡る一票の不平等訴訟などで、裁判官がどういう判断を下したかが注目されました。
しかし、対象が十一人と多く、混乱した有権者も多かったのではないでしょうか。
投票の際、メモ程度は持ち込めるようですが、投票所で配布される投票用紙には氏名しか書かれていません。
各戸に配布される経歴などを紹介する新聞紙大の「審査公報」をそのまま持ち込めるかどうかは投票所ごとの「投票管理者」に委ねられています。携帯電話やスマートフォンを使用しないよう求める自治体もあったようです。
論説室でも「誰に×を書いていいか分からなかった」という委員もいました。
最高裁裁判官を罷免できる国民審査制度は、主権在民の日本国憲法で設けられた貴重な制度です。活用しない手はありません。
ただ、これまでも形骸化が指摘され、罷免された裁判官は一人もいません。「×」の割合も近年は10%を下回る状態で、今回も最も多い人で7・9%でした。
最高裁で憲法に則した判決が下されているか、国民が常に目を光らせることで、憲法を生かすことができます。
そのためにも、国民審査は十分な判断材料に基づいて行われなければなりません。
各裁判官の情報をより詳しく伝えるのはもちろん、投票の際に資料を持ち込めるようにするなど工夫が必要です。有権者の判断をより的確に司法に反映するために何をすべきか。読者の皆さんと引き続き考えます。 (と)
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【ぎろんの森】 2021年11月06日 07:59:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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